子育てのヒント

がんばれ!シングルファーザー ~ひとり親家庭の生活費~

2015年11月13日

ひとり親家庭が手当のお金に頼ってばかりでなかなか自立しないのではないかというご意見があるのは存じ上げています。今回はあえてこの問題を取り上げてみたいと思います。

ひとり親家庭向けの託児付き講習会をおこなうと、まだ子どもの年齢が低く、母子家庭のお母さんが無職の場合があります。まだ子どもが小さいので一緒に居てあげる時間が必要と考えてのことだと思います。私は「働いている方より、自由時間があるので、その時間を使って是非ともスキルアップに使ってください」とご案内しています。最近はどんな仕事でもパソコンのスキルが必要です。当団体でも毎月一回浜松市勤労会館Uホールで無料パソコン教室をおこなっています。是非とも参加して頂いて少しでも再就職に有利になってほしいものですが、多数の方が来ていただいているとは言えない状態です。まだまだこちらの広報が足りないか、あまりパソコンの必要性を理解していないかと感じています。

母と子

しかし一方では、自立を考えない方ばかりでは無く、関わった母子家庭のお母さんは、来年4月から復職が決まっております。それまで手話の教室に通ったりしてスキルアップを実践しています。その方が悩んでいることは4月までに子どもが保育園に入所できるかどうかで、入所のあかつきにはフルタイムで働くことで、児童扶養手当の対象では無くなります。特別かもしれませんが、このひとり親家庭のお母さんは自立に向けて計画的に復職する良い事例だと思います。

ひとり親家庭の手当で代表的なのは児童扶養手当です。これは永遠にもらえる手当では無く、収入の過多で減ったりします。そして子どもが18才を過ぎれば無くなる手当です。
子育てにおいて、18才以降にも大学進学等、お金が必要になることは皆さんもご存じだと思います。それまではパート勤務で15万ほどの収入で残り4万を手当でもらっている、その生活でなんとか続けていったとしても、児童扶養手当が切れた途端、収入が減り、その埋め合わせに正社員の仕事を探してもなかなか見つからないのは当然です。先日、母子寡婦福祉会の関東ブロック総会に参加した時も、会長さんの言葉の中で母子家庭の皆様に是非、正社員を目指すよう、訴えかけていました。また「しんぐるまざーずふぉーらむ」の理事長の赤石さんの講座に参加してきましたが、その中で「稼げるだけ稼いでください」とおしゃっていました。ひとり親にとって稼ぎすぎというものはなく、稼げるときに稼ぐべきだと考えます。児童扶養手当をもらいながら、無理しない範囲で働きたい、自由な時間がほしいと思うのは当然かもしれません。しかし、実情は条件があう仕事が選べる求職状況ではありません。子どもの成長ともに必要な生活費は変わります。それに合わせて転職していくほど、経済の状態は良くありません。残念ながら、企業は家庭の事情は自己都合、会社の直近の利益を最優先にして、それに呼応する人材を最優先にします。今、ワーク・ライフ・バランスを採用しているのは一部の大企業だけなので、女性の社会進出、ひとり親にやさしい、子育てにやさしい労働環境の改善は今後の課題になります。

その中で、ひとり親は、ふたり親の2倍の判断力、知恵、努力が必要になると思います。能力を2倍にするのは、努力次第でなんとかなる部分です。なんとかしても、2倍にならないのが「時間」です。ひとり親は仕事の後に、家事や育児が待っています。いかに効率良く家事をこなしていても、子どもは突然、無理難題を言ってきます。

父と娘

特に親が忙しく、余裕が全然無い時に限って、このようなことが起きます。先日、自営業をなさっている父子家庭のお父さんが、月末、取引先を廻っている途中に交通事故を起こしてしまいました。娘さんに急に生理用品を買ってきてくれと頼まれて、イライラして、一旦停止を怠った為です。決して他人事ではありません。またそんな些細なことでイライラしたわけではありません。仕事で集中しているときに、突然、家庭の事情が入ってきて困るのは、仕事人として、責任感が強い人こそキツイ状況です。そして、仕事と子ども両方の希望をなんとかしたいと考えているお父さんにとって最も陥りやすい精神状態です。このような状況がひとり親の「時間的貧困」問題を表す、典型的な事例だと思います。

ひとり親家庭は、お金の問題が消えても、時間に追われ、たとえ時間の余裕ができても、お金の心配が出てくる。そんな状態に困惑しています。今本当に必要なのは「心の余裕」であると思っています。

NPO法人サステナブネットでは「ひとり親家庭の自立」をテーマにこれからの事業を考えています。父子家庭当事者である、木工工場の経営者の方との協働事業です。工場から排出される木材の端材を使って、家具を作っていきます。題して「ふぞろい家族のふぞろい家具」です。家族がふぞろいであっても、家具が手作りであって、大量生産でなくても、その価値を決めるものではありません。ひとり親家庭が作る、社会的メッセージを載せたフェアトレード商品です。関わって頂けるひとり親の方たちの自立を目指して、一緒に汗をかいていく「過程」と「関係」がこの事業の本来の目的です。ひとり親だと辛い事も沢山あると思います。お互いに「関係」を持ちながら助け合いができるネットワークを作っていきませんか。本当の自立は「離婚で失った自信」「心の余裕」取り戻すことかもしれません。

文/NPO法人サステナブルネット理事長 渡邊修一さん

ひとり親家庭