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子どもたちに伝えたい、ふるさと浜名湖のウナギ「海老仙」

ウナギ体験

浜名湖の水産物と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか。真っ先に思い浮かぶのは、やはり浜名湖を代表する特産品の「ウナギ」ではないでしょうか。
浜松市内には多くのうなぎ店があり、また浜松市のマスコットキャラクター「出世大名家康くん」にはウナギのちょんまげがあるように、ウナギは私たちの暮らしの中で身近な存在です。

そんな浜名湖のウナギの魅力を伝え、資源回復に取り組むとともに、地域の子どもたちへ浜名湖のウナギや水産業について知ってもらう活動を行っているのが、雄踏町で養鰻業を営む株式会社海老仙です。社長の加茂仙一郎さんにお話しを伺いました。

浜名湖が育むウナギ文化と現状

ウナギ

浜松は、日本で初めてウナギの養殖(養鰻)が始まった発祥の地で、明治30年頃から100年以上の歴史があります。

海水と淡水が混じり合う汽水湖である浜名湖は、シラスウナギ(ウナギの稚魚)の飼育に適した環境として知られており、ミネラル豊富な天竜川の伏流水(ふくりゅうすい)と温暖な気候を活かし、近年ではハウス内で高栄養の餌を与えながら、約1年かけて二ホンウナギを育てています。

しかし、ウナギを取り巻く環境は年々厳しさを増しています。養鰻に欠かせないシラスウナギが近年激減し、二ホンウナギは2014年に国際自然保護連合により絶滅危惧種に指定されました。
かつて浜名湖周辺には、最盛期に400軒近い養鰻場がありましたが、現在では27軒にまで減少してしまいました。私たち浜松市民にとって身近な存在だったウナギは、今や高価な食べ物となり気軽に食べる機会も少なくなりました。

子どもたちへ浜名湖のウナギ文化を伝える活動

こうした状況にあっても、加茂社長は「ウナギは地域の大切な資源で絶やしてはいけない」と考えています。そして、浜名湖のウナギの食文化を未来につないでいくために、次世代を担う子どもたちにその魅力を知ってもらい、未来へ受け継いでいってほしいと願っているそうです。そうした思いから、出前授業や水槽見学、親ウナギの放流体験など、子どもたちに向けたさまざまな取り組みを行っています。

小学校、中学校への出前授業

出前授業

同じ町内にある雄踏小学校や雄踏中学校とは以前から関わりがあり、町探検や社会科見学などで子どもたちが会社を訪れています。また、地元の子どもたちに浜名湖のウナギを食べてもらいたいとの思いから、毎年学校給食へウナギを提供する取り組みも続けています。

そうしたご縁から、小学校や中学校から依頼を受け、約15年前より毎年出前授業を行っています。子どもたちに地域を支える産業について知ってもらうことが、この活動の目的の一つです。
授業では、ウナギだけでなく浜名湖にはどのような魚や水産物があるのかを、加茂社長が子どもたちに質問しながら進めていきます。加茂社長は地域の産業や自然について知り、自分たちの住む町への興味や愛着を持つきっかけになればと考えています。

ウナギを間近に感じられる水槽見学

近隣の幼稚園の子どもたちを対象に、会社で水槽見学も行っています。こちらは、水族館とはまた違った近い距離で、ウナギや魚たちを観察しふれあうことができます。
ウナギを見たことはあっても、実際に触れることはなかなかありません。ウナギの顔や体のつくり、ぬるぬるとした独特の感触を体験しながら、普段食べている魚がどのような生き物なのかを知る機会にもなっています。子どもたちは歓声を上げながら、ウナギや魚たちとのふれあいを楽しんでいるそうです。

親子で学ぶ「親ウナギの放流」体験

親ウナギ放流

「ウナギはどこで産卵すると思いますか?」

と加茂社長は参加者にまず問いかけます。
浜名湖で行われる親ウナギの放流体験は、親子で一緒に考えながら学ぶことから始まるのです。体験では、養鰻場の見学や浜名湖の魚について学んだ後、実際に親ウナギを放流します。

この放流は産卵のため海へ向かう親ウナギのうち、漁師の網にかかったものを買い上げて再び自然へ放流することで、少しでも資源の回復につなげようという取り組みです。
親ウナギの放流事業は、地元の漁師や水産業に携わる人たちの協力によって始まりました。活動を続ける中で、その意義が広く認められ、現在では市や県とも連携しながら継続的に行われています。

親子で浜辺から親ウナギを放流する体験を通して、子どもたちに浜名湖のウナギや水産業について知ってもらうとともに、親子で浜名湖の自然について考えるきっかけになればとの思いも込められています。

ウナギ文化を次の世代へ

加茂仙一郎社長

「昔は、ウナギを出荷するときなどに、白焼きをご近所におすそ分けするような風習がありました。ウナギは今よりずっと気軽に食べられる食べ物だったんです」

そう話す加茂社長は、生粋の雄踏生まれ、雄踏育ちです。

価格の高騰もあり、ウナギが気軽に食卓に並ぶ機会は少なくなっています。

「昔のように、もっと身近な食べ物として親しんでもらいたい。浜名湖のウナギは地域の大切な資源であり、文化そのものです。ウナギを未来へ残していきたいんです」

そんな思いから始めたのが、子どもたちへの学びの機会づくりでした。
現在では子や孫を持つ立場となり、この地域の魅力を次の世代にも伝えていきたいという思いもより強く感じるようになったといいます。

もともと、ウナギの資源保護や地域への啓発活動は、加茂社長が個人で始めたもので会社とは切り離して行っていたそうです。しかし活動を続ける中で、社員から「もっと世間に知ってもらったらどうですか」と声を掛けられたことをきっかけに、自社のことだけでなく浜松の水産業について多くの人に知ってもらいたいと考え、SNSでの発信や取材対応を行うようになりました。
そうした発信を続ける中で、同じ業界の人たちとのつながりや活動の輪は少しずつ広がり、より多くの子どもたちへ浜名湖のウナギや水産業の魅力を伝える機会も増えていったそうです。

「会社に見学に来た子どもたちの対応も、社員が一緒になって協力してくれています。こうした活動を通して、地域に貢献できていることを社員にも誇りに思ってもらえたら嬉しいですね」

地域の産業や文化を守りながら、未来へ受け継いでいく。その思いが、今日もさまざまな取り組みを支えています。

「食べやすい価格で、再び地元の人に親しまれるウナギを未来に残したい。地域の人々が元気になり、地域全体の活力につながるような取り組みを続けていきたいです」

加茂社長の言葉からは、地元への深い愛情と、浜名湖のウナギ文化を未来へつなぎたいという強い思いが伝わってきました。

会社概要

1922年創業の水産卸会社。自社でウナギの養殖(養鰻)を行うほか、鮮魚・海産物の加工、卸売、小売りを総合的に手がけている。

株式会社海老仙
所在地:浜松市中央区雄踏町宇布見8962-5 
URL:https://www.ebisen.info/

社屋

取材を終えて

今回の取材を通して感じたのは、「加茂社長が子どもたちに伝えたいのは、ウナギのことだけではない」ということです。
浜名湖の豊かな自然や水産業、そこで育まれてきた食文化、そして地域とのつながり。これらを次世代へつないでいきたいという思いが、出前授業や水槽見学、親ウナギ放流体験といった活動につながっていました。

子どもたちが自分の住む町のことを知り、興味を持ち、ふるさとに愛着を抱く。その小さな一歩が、未来の浜名湖を支える大きな力になっていくのかもしれません。

取材・執筆/新美 良子

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