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高山ゆき子さん しずおか多胎ネット代表

多胎育児の現状を周囲に伝えたい!パワフルに活動する双子ママ

高山ゆきこさん

双子や三つ子の子育てというと、漠然と「にぎやかそうだし、かわいさも二倍三倍だろうな」というイメージを持たれがちです。
しかし実際には、多胎育児中は当事者が外出しづらいことが原因のひとつとなり、悩みやトラブルが周囲に伝わりにくい現状があります。身体的にも精神的にも負担の多い母親や子どもたちへのサポートは急務ともいえます。そんな中、多胎育児支援のための団体「しずおか多胎ネット」を立ち上げたのが高山ゆき子さんです。自身も双子の子育てに奮闘しながら、エネルギッシュに活動するお母さんです。高山さんの活動のきっかけやそこに秘める思いを伺いました。

「こんなはずじゃなかった」多胎育児の難しさ

ふたごファミリー

多胎育児には経験者にしかわからない苦労があります。早産や流産のリスクが高く、出産するときの体力も倍必要な上に、出産後は2人以上の育児が待っています。外出したくても2人用ベビーカーは大きく、オムツやミルクなどの荷物も倍必要です。家にこもりがちになるため、産後うつにも陥りやすいといいます。
高山さん自身もそんな経験をしてきた一人です。

「生後2か月のとき、双子そろって風邪を引いたんです。かかりつけのお医者さんに連れて行ったら、『今日がヤマ場』だと言われました。先生は“熱のピークが”という意味で言ったのですが、私たち夫婦は生死の境にいるのかと思い、2人で夜中も一睡もせずに子どもを看ていました。初めての育児が双子の育児。周囲からの手助けもありがたく感じる反面、多胎育児の経験がないと考え方の違いを感じてしまうこともありました。今思うと笑い話ですが、あのころは本当に真剣だったし、そのくらい余裕がなかったのだと思います」。

多胎児サークル

精神的にもいっぱいいっぱいだった生後10か月の頃、高山さんは月に1回ほどの多胎育児の交流会に参加し始めました。毎回10組ほどの親子がワイワイとおしゃべりをする形でしたが、共通の話題や悩みを気兼ねなく話せる場はとても居心地がよく、子育ての不安を軽減してくれました。高山さんをはじめとする参加者の中で「集まる回数を増やしたい」という声が高まり、交流会を主催していた浜松市内の子育て支援団体「ころころねっと浜松」と参加者数名とで協力し合い「ころころピーナッツ」という多胎育児サークルを立ち上げました。活動日は月2回。2年後には多胎プレママも参加する「プレころピーナッツ」の日も設け、現在月3回活動をしています。

高山さんが多胎ママたちと話していて強く感じたのは、相談場所が不足しているということです。「多胎は妊娠期から単胎と違うことが多いのですが、役所や病院で子育ての手引きを配布するくらいで、具体的な相談ができる場がなく、情報が届きにくいんです」。そこで、ころころねっと浜松の協力のもと、「多胎児家庭支援プロジェクト」をスタートしました。会報誌の作成や、病院内にて多胎出産するママからの相談を受けるなどして、何が必要なのか、何が助けになるのか、常に当事者の立場から考え続けていました。

「より多くの人に多胎育児を理解してほしい」しずおか多胎ネットの立ち上げ

多胎児フォーラム

一昨年、石川県立看護大学の多胎研究チームからサークル宛てに活動内容についてのアンケートが送られてきました。高山さんが何気なく回答した内容について、後日研究チームから電話がありました。月に3回も活動しているサークルは全国でもまれなのに、対外的な活動をまったくしていなかったことにとても驚いていたそうです。そこで2016年、サークル発足10周年の記念もかねて、初めてのイベント「多胎児ファミリー応援フェスタ」を開催しました。
応援フェスタを通して、人とのつながりの大切さを実感した高山さん。一緒に活動していた多胎児家庭支援プロジェクトメンバーの意識も高まったことから、任意団体「しずおか多胎ネット」を発足しました。日本多胎支援協会との連携の中、全国で10番目の設立となりました。メンバーと県内の活動団体の把握を進め、2017年6月には同協会主催の第8回全国フォーラムが浜松で行われました。「しずおか多胎ネット」の代表として、北海道と佐賀県にて自身の妊娠期などの事例報告も行い、「全国各地で活躍する人たちと関わりながらさまざまな多胎支援の形を知り、自分たちの活動に活かしていきたい。そして静岡県内で多胎支援の活動が広がることで、子育て全体の支援につながってほしい。」と語ります。

当事者からの発信を軸に、行動力で人とつながる

多胎児フォーラム

高山さんの行動力を物語るのが「アポなし作戦」。その名のとおり、話をしたい、聞いてもらいたい人のところに事前連絡なしで訪問するのです。「責任者の方に他の人からつないでもらっていると時間がもったいないし、結局取り次いでもらえないこともあるけれど、アポなし作戦なら確実に会えるし、印象付けもできるんです」と笑顔で話します。この、人との壁を作らない行動力とコミュニケーション力が高山さんの強みです。

「自ら声をあげなければ何も起こらない」。今までの活動を通して高山さんが感じていることです。当事者の声を届けるために、高山さんは少しずつ市との連携に動き出しています。「行政は、市民からの意見がなければ現状で大丈夫なんだ、と考えがちです。『支援が足りない』と内輪で文句を言っていても何も変わらない。当事者の声を直接届けることで行政側も熱心に耳を傾けてくれ、定期的に情報交換の場が持てるようになりました。よりよくするための政策を一緒に考えてくれます」。

高山ゆきこさん

高山さんの子どもたちは現在、小学校6年生です。「初めて泊りで出かけたときには寂しさから涙を見せることもありましたが、今では笑顔で送り出してくれ、お土産のほうを楽しみにしているようなふしも(笑)。お母さんが出かけたら好きなことをしよう!なんて、こっそりふたりで計画をたてているんですよ」と、笑いながら話す高山さんは、ここ最近特に子どもたちの成長ぶりを実感しているようでした。自身の育児を振り返り「多胎でしか得られない経験があり、やはり頑張ってきてよかったと思います。けれど、支援が足りないのも事実。まずは多胎の現状を伝えて知ってもらうことが大切です」と語ります。

多胎児チラシ

「妊娠期に家族全員が参加できる家族教室も必要です。多胎妊娠の情報を家族が正しく理解することで、ママの出産・育児への不安軽減ができたらと思います。そして、私たちや行政だけでなく地域、医療、教育など、すべてがお互いにできることでつながりながら浜松の子育て支援に広げていきたい。10年後、浜松で子育てをしている人たちが“住みやすくて大好き”と感じるよう、子どもを授かった時からケアがあり、安心して子どもを産み、育てる街になってほしいのです」と、様々な人に当事者の声を届けながら、次の世代のために活動しています。「焦らずに自分のペースで、人とのつながりを大切に」と、自分にも相手にも歩み寄る余裕が活動を続ける秘訣のようです。一歩ずつ着実に多胎育児支援の輪を広げる高山さんの活動が実を結べば、みんなにとって暮らしやすい浜松に、そして全国の手本となるような育児支援の進んだ街になるでしょう。

高山ゆき子さん プロフィール

浜松市に生まれ育つ。幼稚園教諭などの仕事を経て結婚、出産。自身も双子の子育てをしながら、2005年に多胎育児サークル「ころころピーナッツ」を結成。2017年にさらなる多胎育児支援を目的とした「しずおか多胎ネット」を発足。しずおか多胎ふれあいマップを発行、聖隷浜松病院でおしゃべりサロンを開催。個々の家庭への出張相談も行っている。
全国各地で行われる多胎育児支援の活動などにも参加し、多忙な日々を送っている。
2017年9月30日に浜名湖競艇場で2回目の「多胎児ファミリー応援フェスタ」を開催。

取材・執筆/和久田 南香

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