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ワークライフバランスの新しいかたち Vol.2 双子の姪っ子を、家族みんなで育児シェアリング

鈴木まり子

フリーランスのファシリテーター※として、また大学講師として全国各地を飛び回る鈴木まり子さん。忙しく毎日を送るまり子さんの生活が一変したのは、今から3年前のことです。
「横浜で教員を続けているイギリス人の義姉が、双子の赤ちゃんを身ごもりました。夫である兄は浜松の会社で働いていて、いわゆる別居婚。45歳の高齢妊娠だったこともあり、臨月から私が義姉の家に泊まって様子を見ることにしました」。お義姉さんは1人で大丈夫、とは言っていたものの、何が起こるのか分からないのが妊娠&出産。まり子さんの心遣いに、お義姉さんも安心してお願いしたそうです。
浜松に兄、夫、母が住み、横浜にまり子さんと義姉が同居するという暮らしがスタート。その後お義姉さんは横浜で無事出産し、2人の女の子が生まれました。

※ファシリテーター…話し合いの場で参加者の意見を引き出したりまとめる場を作ったりする進行役のこと。まり子さんは全国各地の子育て支援に関する会議や、東日本大震災の被災者間の話し合いの場などで活躍しています。

家族はもとより、知人も巻き込んで新生児育児

双子の赤ちゃん

いろいろな人の手を借りようと思うきっかけとなったのは、お産直後のお義姉さんが体調不良となり、浜松市内の病院に入院したとき。「兄は付き添いで不在がち、赤ちゃん2人だけがわが家に残されました。私は子どもがいないので新生児のお世話はしたことがないし……。それはもうてんてこ舞いでしたね」と当時を振り返ります。
まり子さん、夫の三雄さん、70代のお母さんがローテーションで子どもたちの面倒を見ていましたが、それでもどうしても手が足りないことも。「そこで私の友人、知人の看護師さんなど、育児経験があって信頼できる人に助けを求めることに。するとたくさんの人がローテーションに仲間入りしてくれました。時にはお互い面識のない人同士がわが家に集まり、“どうも初めまして…”みたいになっちゃうことも(笑)」。それでも赤ちゃんを囲むとなごんだ空気になり、和気あいあいとお世話をしてくれたそうです。

お義姉さんが回復し横浜に戻ると、お兄さんが育休を取得。2カ月間、家族4人での暮らしが始まりました。社内では男性の育休は前例がないとのことでしたが 「娘たちとたっぷり触れ合って過ごしたおかげで、父になった実感を持て、同時に育児の大変さを実感できました」と、お兄さんは育休取得の素晴らしさを振り返ります。 さて、お義姉さんの職場復帰とともに、まり子さんも一緒に横浜へ行きお手伝いをすることに。二人三脚で双子の育児がスタートしました。子どもたちの授乳はお義姉さんと2人で。どちらかが寝かしつけをしているときにどちらかが食器洗いをしたりするなど自然に役割分担して対応し、少しずつ生活のペースを作っていきました。お義姉さんが言います。「2人の赤ちゃんのお世話は本当に大変でした。家族の助けがなかったら仕事はとても続けられなかったと思う。本当に感 謝しています」。

関係

フルタイムで働くお義姉さんを支えるため、基本的にはまり子さんとお母さんが1週間交代で横浜に泊まり込み、保育園の送迎や家事をこなします。でもまり子さんも仕事やボランティアで横浜に居られないこともしばしば。そんなときは横浜に住む友人や知人がお義姉さんをサポートしてくれます。集まってくれたサポーターはまり子さんの知り合いが中心でしたが、中にはたまたま知り合ったご近所さんも! 「実は母、協力してくれそうな方とめぐり合う確率がとても高いんですよ。普段から“あの人、とても感じのいい人。お手伝いしてもらえるとうれしいな~”などと言い、気がつくと本当にお友達になっているの(笑)」。どの方も快く引き受けてくれました。夜、お風呂に入れに来てくれたり、どちらかの子が病院に行く際にもう一方の子を見ていてもらったりなど、困ったときに本当に助かったそうです。

頼ることで生まれる、新たなつながり

双子の赤ちゃん

ところで、いろんな人に頼ったりお願いしたりして、申し訳ないなぁと感じることはありませんか?と尋ねてみたところ、まり子さんはこんな風に答えてくれま した。「それは心から、ものすごくお世話になっているなーと思っていますよ。でも同時に、私が頼り、感謝するということは、その人の存在価値を認めるとい うことでもあります。なんて言うか、その人にとってもプラスになっていると思うのです。だから相手に対して、後ろめたいとか悪いなとかは感じません」。
「それからもうひとつ。これはとても大事なことですが、一度築いた人間関係はずっと続けていくことを心がけています。今はこちらが全面的にお世話になって いるけれど、長い目で見たら、いつか逆の立場が来るかもしれない。そのとき私は全力で手を貸そう、と決めています。持ちつ持たれつ。昔っぽいのかもしれませんけどね」。
現代の私たちはしがらみを嫌うあまり、人とつながることを避けてきました。その結果、地域のコミュニケーションはとても希薄になってしまっています。でも まり子さんのような気持ちで“人に頼る”ということは、相手にとってもプラスになるはず。新たな人間関係を作るひとつのきっかけとして、私たちはもっと周 りの人に頼ったり頼られたりしてもいいのかもしれません。

家族内で褒め合うこと

双子の赤ちゃん

フリーランスで働くまり子さん。「会社員の兄姉と違い、私の仕事は多少時間の融通が利きます。そのため兄や姉が休めないとき、“じゃあ私が仕事のスケ ジュールをやりくりして子どもたちの面倒を見るよ…”と自分から請け負ってしまうこともしばしば。その後、どうして私が犠牲にならなきゃいけないの?と落ち込むこともよくありました」。お義姉さんと育児の方針が違ったりするときも我慢するなど、正直しんどい思いもたくさんしたそうです。
そんなときはどのように対処を? 「励ましてくれる友人、諭してくれる友人、そしてちゃんと聞いてくれる夫。いろんな人にSOSを求めました」。特に家族 には“わたし頑張ってるよね~、偉いでしょ!”とよく伝え、ほめてもらうそうです。「誰かに認めてもらうって、人にとってすごく重要なこと。夫や兄は“ま た始まった~”って思ってるかもしれないけどね(笑)」。


まり子さんの夫・三雄さんはこの家族について、「これまでも、父の介護や私の独立開業など、いろいろな課題にみんなで向き合ってきました。それによって助けあい、絆がより深まったと感じています」。
そしてお兄さんも、「娘たちの誕生は、私たち家族により一層強いつながりをもたらしてくれました。その意味でも、娘たちはこの家族のたからものです」と教えてくれました。 金曜日の夜から日曜日までの2日半、お兄さんは横浜でしっかり育児を担当するそう。「昔は多趣味な私でしたが、子どもが生まれてからの趣味はもっぱら育児 (笑)。平日会えない分、休日はしっかり娘たちと触れ合います」とお兄さん。家族水入らずの週末は、お義姉さんにとってもホッとできる時間だとか。

仕事も、育児サポートも自分らしく

まり子さんのお母さん

姪っ子ちゃんたちはもうすぐ3歳になります。子どもたち自身でできることも増え、この夏からまり子さんが泊まり込むことはなくなりました。でもこれからも、お義姉さんが忙しいときや大変なときはもちろん協力していきたい、とまり子さん。

最後に、まり子さんのお母さんがこんなことを語ってくれました。「すべての人間関係の根底は愛。家族であろうと友人であろうと、愛を持って接することが何より大切ですよね」。鈴木ファミリーの考え方の根底には、お母さんから受け継がれた温かな愛情が流れています。
誰もが自分の人生の主役。しかし同時に、誰かの人生の脇役でもあります。「お互いの仕事や生き方そのものを尊重し合うことで、主役になったり誰かの名脇役になったり。そんな人生を送っていけたら幸せですよね」。そう語るまり子さんの、やわらかな表情が印象的でした。

 


取材・文責/NPO法人はままつ子育てネットワークぴっぴ / 鈴木亜希

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