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子どもと話そう!中学校の進学先

学校イメージ

子どもの中学受験を考えたことはありますか。多くの子どもは居住学区の中学校に進学しますが、中には学区外の市立中学校に通ったり受験をしたりする子どももいます。浜松市立小学校の6年生の児童数と市立以外の中学校の定員数を比較すると、地域にもよりますが、1割前後が浜松市立中学校以外に進学していると考えられます。
決して多くはない中学受験ですが、なぜ学区の中学校以外に進学したのか、そして中学校進学先の選択肢としてどのようなものがあるのかをレポートしました。

浜松市内の中学校進学先の選択肢

浜松市内で通学する場合、中学校の進学先にはどのようなものがあるのでしょう。

1. 居住学区の市立中学校(指定校)

住民登録の住所に基づき指定された中学校(指定校)で、全員、指定校の入学が原則となります。指定校に入学する場合は引越しを除き特別な手続きはなく、入学通知書に書かれてある中学校が進学先となります。

2. 学区外の市立中学校

隣接校

指定校よりも通学距離が短いなどの理由で、指定校の通学地域と隣接する学区の中学校に進学を希望する場合です。

小中一貫校

学区外から小中一貫の中部中学校、庄内中学校、引佐北部中学校へ進学を希望する場合です。

隣接校、小中一貫校ともに9月に浜松市のホームページに詳細が掲載され、期限までに手続きをします。人数の上限があるため、希望どおりにならないこともあります。

3. 市立以外の中学校

入学試験のある中学校で、浜松市内には国立1校、県立1校、私立7校があります。うち、県立と私立の計8校は中高一貫校です。特徴や費用、募集内容などは学校により様々です。

親子が選んだ進学先

大きく3つの選択肢がある中学校の進学先ですが、指定校以外に進学した人はなぜそのような選択をしたのでしょうか。2家族に話を聞きました。

子どもの個性を活かしたい 田中さん一家

田中さん

長男は幼い頃から自分の考えややりたいことを大事にするタイプで、みんなと一緒でなくてはならないことや自分のしたいようにできないことに対し、ストレスを感じていました。小学生の頃には周囲と違う行動をとったり異なる意見を言ったりした時に、友達と衝突してしまうこともありました。
中学入学を機に人間関係をリセットし、新たな環境で頑張りたいという思いが長男にあり、自宅から通いやすく知り合いもいた私立中学を受験・進学することにしました。

入学した中学には個性豊かで個々の性格や考えを尊重できる子が多いです。入学後、先生に長男の性格について相談しましたが、「うちの学校は個性の強い子が多いから大丈夫ですよ」と言われました。その言葉の通り、生徒たちの中で浮くこともなく毎日楽しく通っています。

一方、次男は誰とでも仲良くなれるタイプです。進学先を決めるときには、小学校の友達と一緒に地元の中学に進学するかどうか迷いましたが、マイペースな兄が楽しそうに学校に通っている様子を見て、「兄と同じ学校に行きたい」と自ら言い出し、受験・進学しました。

現在は2人とも自分にあった環境で、のびのびと学校生活をおくっています。

好きな野球に打ち込みたい 白鷺さん一家

白鷺さん

小5から野球をしている息子は、当初は指定校に進学し野球部に入部するつもりでした。しかし部活の見学に行くと初心者が多く、プレーのレベルが思っていたものと違いました。また部活の地域移行や人数によっては他校との合同チームになるかもしれないことも聞き、思い切り野球ができないのではと不安がありました。硬式野球のクラブチームも見学しましたが、人数が多く練習中の待ち時間が長いこと、大勢の中で自らコーチに話しかけてアドバイスをもらうのは息子の性格上難しそうなこと、また練習場所が遠方で夜間のため、下の子を連れての送迎は家族全員の負担になることが想像できました。

そのような中、硬式野球部のある私立中学の体験練習に参加しました。人数は少ないものの、多くの時間が実践に充てられ、コーチに気軽に質問することもできて、息子はとても満足していました。自ら「この学校で野球がしたい」と希望し、小6の11月から慌てて学校見学や受験準備をしました。

入学後は、行きは自転車で30分、帰りはグラウンドから1時間かけて通っています。通学の負担が気がかりでしたが、疲れているときは先生が「今日は部活休んだら?」と声をかけてくれ、生徒一人ひとりをよく見てくれています。また、親としては野球だけでなく勉強も頑張ってほしいですが、手作りの教材を使って授業をする熱心な先生が多く、息子は「どの教科も面白い」と言っています。興味を持って授業を受けられているようです。

息子が「やりたい!」と思ったことに寄り添うことができ、充実した学校・部活動生活をおくれている姿を見てよかったと思っています。

市立中学校との違いは?私立中学校教師の声

生徒を受け入れる学校側は、中学校の進学先選びをどのように捉えているのでしょうか。浜松市内の私立中学校7校の先生方に特徴など、聞いたことをまとめました。

学習面:じっくりと6年間を通した学び

  • 中高一貫教育は、変化の大きいこの時期の「心の成長」を高校受験で分断しないことが最大のメリット。
  • 少人数なので、教員としてひとりひとりに濃密に関わることができる。じっくり時間をかけて成長を見守ることができる。
  • 公立に比べて教員の異動がないために、多くの教員が在学中に子どもひとりひとりの成長を、6年間を通して見守ることになる。
  • 受験がないことによる学習意欲の停滞。

友人関係:新たな出会いや高校生との交流

  • 様々な地域から生徒が入学するため、今までの人間関係がリセットされ、新しい仲間と出会い、新しい自分を発見することになる。
  • 学校行事は中学生と高校生が合同で行うため、異学年との交流により協調性や主体性が育まれる。
  • 市立中学よりも少人数のことが多いため、人間関係のバランスが崩れると、修復するのが難しい。

経済的負担:国公立にはない費用負担の発生

  • 中学までは義務教育だが、私立の場合、学費が発生してしまう。

子どもの思いを尊重して進学先を考える

最後に、各学校に中高一貫校に向いている子どもの特徴を聞きました。高校受験のない6年間で得意なことや部活動、習いごとなどにとことん挑戦してみたい、将来の夢の実現に向けてじっくりと準備をしたい子どもに向いているという意見がありました。また、いろいろな目標を持ち様々な地域から生徒が集まってくるため、多様な価値観に触れたい子どもにも向いているそうです。
「地元公立中から『逃げる』のではなく子ども自身の思いとして『行く』と言える子」という意見もありました。子ども自身にこのような思いややりたいことがある場合には、市立中学校以外も進学先の選択肢の一つになるかもしれません。

また進学先の検討をする際は、「オープンスクールや見学会には必ず参加し、在校生の様子や校風、6年間を過ごせる環境かどうかを、子どもの目で見て判断してほしい」とどの学校の先生も述べています。そのうえで、入学したい理由をより具体的に考え、親の見栄や体裁ではなく、最後は必ず子ども自身が決めることが大切と、アドバイスをいただきました。

取材を終えて

今回話を聞いた2家族の共通点は、「子ども自らが進学したい」と希望していたことです。
それは、学区内の市立中学校に進学する場合も同じと言えるでしょう。小学校の友達と同じ中学に行きたい、自宅から通いやすい、やりたい部活がある、行きたい高校や就きたい職業があるなど、どんな理由であっても子ども自身が納得し、この学校に行きたいと思う進学先であるならば、それはその子にとってベストな選択なのだと思います。

実際に学校に通うのは、親ではなく子どもです。子ども自身がどんな中学校生活をおくりたいのかを尊重することが、最も大切だと感じた取材となりました。

回答協力校(順不同)

静岡県西遠女子学園
聖隷クリストファー中・高等学校
浜松開誠館中学校・高等学校
浜松学院中学校・高等学校
浜松学芸中学校・高等学校
浜松修学舎中学校・高等学校
浜松日体中学校・高等学校

取材・執筆/藤田 麻希子

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