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子どもからシニアまで、地域の居場所づくり「大瀬モータース」

思いやり図書館の様子"

子ども食堂や学習支援など、学校や自宅以外で子どもたちが気軽に過ごせる"地域の居場所づくり″への関心が高まっています。自動車販売や整備を行う会社でこの活動に取り組んでいるのが「大瀬モータース」です。子どもとは直接的な関連が薄いように感じられますが、どのような活動を行っているのでしょうか?活動に取り組む袴田智紀社長と妻の弥生さんにお話しを伺いました。

シニア層の地域交流の場を目指しスタート

袴田社長ご夫妻

大瀬町で祖父の代から自動車の販売・整備を手がける「大瀬モータース」を営み、現在は3代目社長を務める智紀さん。2021年6月から「思いやりプロジェクト」と題し、運転免許証を返納した高齢者や地域の親子などの交流活動を行っています。

「きっかけはお客さまの高齢化。長年お付き合いのあるお客さまのご家族などから免許返納後に外出する機会が減って引きこもりがちになり、認知症になる方も多いと聞きました。私たちも子育てが一段落した時期だったので、これからは地域に恩返しをしたいという思いで活動を始めました」と弥生さん。 

運転免許証返納のきっかけづくりとして開催しているのが、年に3回のイベントです。3世代が楽しめるようなテイクアウトグルメの販売やワークショップなどが行われ、さらに免許返納後の顧客の自動車について相談できるブースも設けています。
「シニア層の免許返納はご家族からの説得だと難しい場合も多いのですが、我々のような第三者の説明だと聞いてくださる場合も多いので、ぜひ気軽に相談してください」と智紀さん。
イベントには毎回約300人の集客があり、プロジェクト開始以降13人の免許返納をサポートしてきました。免許返納後に買い取った車を同社では「幸卒(こうそつ)車」と呼び、幸卒車によって得た利益をプロジェクトの運営資金として活用しているとのことでした。

私設図書館と駄菓子屋を無料開放

日常的な活動の中心は免許返納後でも地域の人たちが気軽に立ち寄り交流ができる場所としてショールームに設けられた、「思いやり図書館」と「駄菓子屋キハチロー」です。月・金・土の14時から17時、週3回無料開放しています。
「免許証を返納した高齢者の方が散歩途中に立ち寄ってくださったり、おしゃべりを楽しんだりする方も多いですね。お孫さんを連れて来られる方も多く、今では地域の子どもたちの利用も増えています。店舗の前が小学校の通学路になっているので、下校途中に『ただいま!』とか『あとで行くよ』と声をかけてくれる子どもが多いですね」

思いやり図書館

思いやり図書館の本は高齢者が気軽に読め、孫と一緒に楽しめるように絵本や児童書が中心です。本は利用者の寄贈によって集まり、現在の蔵書は約1300冊にのぼります。図書館スペースは靴を脱いでくつろげるようになっていて、自由に本を読んだり、ボードゲームなどで遊んだりと思い思いの時間を過ごす子が多いそうです。
「本は貸し出しも行っています。特に冊数や返却日に決まりは無く、子どもたちが読める冊数と返す日を自己申告してもらい貸し出しています」

駄菓子屋キハチロー

智紀さんの祖父の名前が由来の「駄菓子屋キハチロー」では、子どもが気軽に購入できる1個10円前後のお菓子やくじを販売しています。「親世代はスマホ決済も多い時代ですが、ここでは子どもたちにあえて現金を使って買い物を体験し、生きた算数を学ぶ場になれたらと思っています」

子どもたちの体験やコミュニケーションを育む場に

キハチローの様子

図書館や駄菓子屋の運営は主に弥生さんが担当しています。訪れた子どもたちに必ず声かけをし、今では子どもたちから"先生″と親しまれている弥生さん。
「コロナが少し落ち着いたころから、利用してくれる子どもたちが増え、今では開店から閉店までゆっくり過ごしてくれる子も多いです。違う小学校の子ども同士が仲良くなったり、初対面でも年下の子の面倒を見てくれたりと自然とコミュニケーションが生まれています。今の子どもたちは家族や先生以外の大人と接する機会が少ないと思いますが、ここでは学校や家庭のことを楽しそうに話してくれたり、時にはお土産を持ってきてくれたりする子も(笑)本業もあるので大変なことも多いのですが、このプロジェクトを始めたことで今まで以上に地域とのつながりをもつことができたように感じます」と明るい笑顔で話します。

キハチロー利用のきまり

プロジェクトは店舗内だけではなく、要望があれば智紀さんが図書館や駄菓子屋の出張も行っているそうです。
「思いやり図書館の本を積んだ移動図書館と読み聞かせ、駄菓子屋も棚ごと移動できるのでお買い物体験もお楽しみいただけます。放課後デイサービスや福祉施設、こども園など営利目的ではない場所であれば出張します」と智紀さん。

地域を見守る活動も地道に続け認知度アップ

現在は認知度も高まり、利用者も増えていますが、始めた当初は自動車販売店とあって「気軽に入りにくい」「自動車を売りつけられそう」という声も多かったそうです。そのためプロジェクトの活動だけではなく「浜松市見守りボランティア」として通学路の見守りを行ったり、「こども110番のお店」「浜松市認知症高齢者等に優しいお店・事業所」「運転免許自主返納サポート店」に登録したりと、周囲に認知してもらう取り組みも地道に行ってきたそうです。

2023年6月で3年目となる「思いやりプロジェクト」。最近は浜松市内の小・中学校でのSDGsの関連講座も行うなど、活動の幅も広がっています。今後は1人で食事をする"孤食"になりがちな地域のシニア層や長期休暇を過ごす子どものために、テイクアウトのお店と協力して「思いやり食堂」も企画しているそうです。

本業との両立に苦労もあるそうですが「子どもたちと接していると元気をもらえますし、何よりも私たち自身も楽しんで取り組んでいます」と笑顔で話す袴田さんご夫妻。
「図書館に絵本や備品を寄贈してくださったり、駄菓子屋の棚を作っていただいたり、イベント時の駐車場を貸してくださったりと地域の皆さまに愛され支えられて運営しているプロジェクトです。駄菓子屋のお菓子を大人買いして活動をサポートしてくださる"あしながおじさん"のような方も(笑)地域みんなで安心して暮らせる町づくりに貢献していけたらと思っています」

会社概要

1966年(昭和41年)創業。スズキをはじめ、全メーカーの新車・中古車の販売・買い取り、さらに車検、点検、一般修理、鈑金塗装などのアフターサービスを実施。
「思いやりプロジェクト」において、地域の問題解決を目指した仕組みや取り組みを表彰する「2021グッドデザインしずおか」でユニバーサルデザイン賞、2022年、社会貢献活動を積極的に行う企業をたたえる浜松市の「CSR活動表彰」で優秀賞を受賞。

大瀬モータース
本店・整備工場:浜松市東区大瀬町2653-1
電話:053-435-1525
ショールーム:浜松市東区大瀬町2257
電話:053-434-0824
URL :  https://www.oose-motors.co.jp/
※思いやりプロジェクトの告知や情報は主にInstagramに掲載

外観

取材を終えて

子どもを取り巻く事件も多く、なるべく知らない人や場所には近づかないように諭す機会も多い日々。昔は子どもたちが集う公園や駄菓子屋さんなどがありましたが、最近は放課後の子どもたちの姿を見ることが少ないように思います。大瀬モータースのプロジェクトのように、学校と自宅以外に信頼できる居場所があり、コミュニケーションや社会経験を自然に育めることは、子どもたちの自立への一歩を踏み出す貴重な場になるように感じました。これから小学校入学を迎える子どもがいる母親として、このような活動が地域全体に広がってほしいと思いました。

取材・執筆/北 美緒

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