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外出困難な子育て家庭への訪問美容「BIOQLE(ビオクル)」

訪問美容「BIOQLE(ビオクル)」

出産後しばらくは、赤ちゃんの授乳や寝かしつけを繰り返す日々が続きます。気づけば髪を振り乱したまま一日が終わってしまっていた、ということもあるかもしれませんね。片時も目を離せない子どもと過ごしながら家事をこなす毎日は、どうしても自分のことが後回しになってしまいがちです。それに加えて、子どもに障がいがあったり、多胎児だったりしたら、美容室に髪をカットしに行く時間を作るのも難しいことでしょう。こうした負担をなんとかしたいと、同じ子育てを経験しているスタッフが中心となり、訪問美容に取り組み始めた企業があります。ヘアサロンを運営する「株式会社デューアソシエ」が、外出困難な子育て家庭が利用できる訪問美容マッチングサービス「BIOQLE」をスタートさせたのです。

家族単位のサービスを考えたヘアサロンが原点

訪問美容「BIOQLE(ビオクル)」

同社が運営するヘアサロン「デューポイント」は、誰もが気軽に立ち寄れる「ファミリーヘアサロン」として、東海地区を中心とした全国各地で展開しています。予約を取らないシステムに加え、全店がショッピングセンター内にあって、多忙な子育て世代や慣れない場所に緊張しがちな子どもに配慮した独自のスタイルが大きな特徴です。
日比谷美奈子社長は、父である先代の手伝いをした際に、「髪を切りきれいになった自分を見て人が笑顔になる」瞬間を目の当たりにします。過去にカウンセリングを学んだ経験からも、「心が疲れている人を美容の力で元気したい」と、それぞれの暮らしの基盤となる家族単位のサービスを大切した運営を始めました。家族からの様々な声を聞く中、ヘアサロンに簡単に行けない人たちにも意識を向け始めます。病気や障がいを持っている方やその介護をする家族、そして体力的に外出が難しい産前産後のママたちです。
理容師法・美容師法が2016年に緩和され、今まで利用できなかった子育て家庭も外出が困難な場合は、訪問美容を利用することが可能になりました。2013年から、ママ美容師の復職サポートプロジェクトとして運営している「ママスタ®」と今回の「訪問美容」をマッチングさせ、働き手も利用者も「笑顔になってほしい」と考えます。公私ともに日比谷社長と付き合いがあり、前職でママ支援に奮闘した経歴を持つ北林美沙子さんが、このプロジェクトに共感しサポートスタッフとして携わることになりました。

北林さん

美容業界で新しいことを始めるいちばんの大変さは、「複雑な法律の壁」だと北林さんは話します。訪問美容メインで働きたいママ美容師も、法律上、従業員としてヘアサロンへの所属が必要なため、訪問美容を行うにも近郊に実店舗がある地域でなければなりません。北林さん含むBIOQLEチームは、この事業を浜松で普及させようと、住まいのある愛知県から何度も浜松を訪れ、地域の団体や施設・企業にヒアリングを始めました。

ママ美容師が子育て家庭を訪問

美容院に行けない多胎児ママのリクエストに対応

湯浅さん

「髪をカットしてきれいな自分」になることで、どれだけ気持ちがリフレッシュできるか体感してもらおうと、今夏は浜松でカットモニターを募集しました。外出に負担があるだろう多胎児家庭が参加する会に声をかけるとすぐに希望が集まり、双子の子育てをするママ、3家庭の訪問が決まりました。今回の訪問カットを担当するのは、二人の子どもが成長し現在BIOQLEの事務局スタッフ兼美容師として忙しく働く、湯浅佳子さんです。
訪問先は、乳幼児期の双子に加えてきょうだいがいる家庭もあり、日々の育児の大変さは想像がつきます。どのママも双子と一緒に美容院に行くのは気が引けてしまうそうで、この訪問を楽しみにしていたようです。自宅なので、子どもたちはお昼寝をしたり、DVDを見たり、普段通りの時間を過ごし、親子共にリラックスした中でそれぞれ3人のママのカットは終了しました。ママトークで盛り上がっているうちに、髪もスッキリ!湯浅さんがテキパキと準備から片付けまで行い、かかった時間は1時間弱ほどでした。移動や待ち時間がない訪問美容は、ママにも子どもにも負担が少なく、「気軽に子育ての話ができたのがうれしかった」などの感想も出ていました。

ママのコメント1

ずっとのばしっぱなしだった前髪を、美容師さんのアドバイスで思い切って短くしました!しばらく美容院に行けていなかったので、気分があがりました。子どもたちにも「お母さんかわいいじゃん」と言ってもらえて嬉しかったです。

ママのコメント2

子どもの様子を近くで見ながらカットしてもらうことができ、安心感がありました。思いどおりの髪型にしてもらえ嬉しかったです!

ママのコメント3

双子なので2人分の準備や時間の調整は大変で…。美容院に足を運ぶよりも気軽にカットしてもらえるので、外出が大変な時期はとても助かるなと感じました。

湯浅さんは、「特に新型コロナの影響が大きい今は、人とコミュニケーションが取れる場が奪われ孤独を感じている人がいることを感じます。限られた時間ですが、髪を整えるだけでなく“心も整える”を目指し、楽しい時間を提供していきたい」と話していました。

障がい児にも介助のしやすくだけでなく“かわいらしさ”を

「重度心身障がい児」への訪問美容

浜松でのモニター訪問は多胎児家庭となりましたが、BIOQLEはスタート時から、「重度心身障がい児」への訪問を積極的に行っています。車いす移動の場合、バリアフリーの環境や店舗の広さが必要なため、受け入れが難しかったり慣れない場所に連れて行くのが大変だったりという現状があり、美容室でのカットはハードルが高いものになっているそうです。ですが、「ヘアサロンでカットするように丁寧に整えてもらいたい思いは、親子共にあるはずです。その子のために親子が望むスタイルにカットし、笑顔にしたい」とBIOQLEチームは考えています。コロナ禍の中、訪問が難しい時期が続きましたが、消毒やマスクなどの対策をして「これから、より必要とされるところへとコンタクトを取っていく予定」と北林さんも話します。

美容師として復帰し働き続けたいママを応援

美容師として復帰するママ

デューアソシエが訪問美容と共に精力的に取り組んでいるのが、ママ美容師の復職サポートプロジェクト「ママスタ®」です。昔ながらの風潮が残る美容業界は、産休・育休制度が整っていないことが多く、一般企業のように育休中のサポートや相談をする場が少ないそうです。そのため、出産や育児での長期のブランクによる技術の低下や流行の把握に不安があり、復帰したくてもなかなか踏み出せないのが現状です。その不安を解消するために、休職中でも「スキルが維持できる場」「情報交換ができる場」として、オンライン講座やSNS発信など情報提供を行っています。美容師の湯浅さんも、「国家資格を持っているにもかかわらず眠っているママ美容師が活躍するために、技術や就職の相談・訪問美容とのマッチングでライフステージに合う働き方を応援したい」と、サポートに力が入ります。復職後も、「短時間勤務がしたい。子どもの行事にはできるだけ参加したい」など、子どもと接する時間に苦慮する美容師のために、これを解決できるような方法を探っています。

スタッフひとりひとりが、企業の目指す「美容の力で利用者も働き手も笑顔にしたい」という思いに共感し、当事者の視点を大切にしながらこのプロジェクトを進めていることがわかりました。「今まで一般的ではなかった個人の訪問美容を知ってもらうことは本当に難しい」そうですが、外出困難な子育て家庭に元気を届けるBIOQLEの取り組みに今後も注目したいと思います。

会社概要

株式会社デューアソシエ

株式会社デューアソシエ
名古屋市中区松原一丁目13-9 D&Aビルディング
東海地区を中心に「美容の力で日本中を元気に」をコンセプトにした「ファミリーヘアサロン デューポイント」を展開。ママ美容師復職支援として登録制で短時間勤務が可能な「ママスタ®」を手掛け、店舗での長時間就労が難しい美容師の働く場をつくる。訪問美容で外出困難な家庭とのマッチングのため、「BIOQLE」を浜松でスタートした。
訪問美容 BIOQLE浜松(https://bioqle.com/
ファミリーヘアサロン デューポイント(https://www.dewpoint.jp/

取材を終えて

今回の取材で印象的だったのは、浜松まで何度も足を運び、出産間もないママや障がい児家庭のニーズを知るために奔走するBIOQLEチームの熱意です。外出が難しく家にこもりきりになっているだろうママや子どもたちに元気になってほしいと、家庭ごとにどんな課題があるのかを聞き取りながら真摯に取り組んでいました。「髪型を考える余裕もなくて」とカットに悩むママには、「最近は切りっぱなしのラフな感じが流行っているから…こんなのが似合いそう!」とスマートフォンでサッとヘアスタイルのページを見せて相談にのる姿に、「華やかなヘアサロンでのカットもいいけれど、親近感が持てるママ美容師に自宅で対応してもらえたら、育児で疲れたママはうれしいだろうな」と感じました。同じ地域で復職に悩むママ美容師がいたら、訪問美容を利用することは「美容師とお客さん」という関係だけでなく、「子育てのサポート」をし合う関係ということになるかもしれません。訪問美容は単に美容サービスを届けるだけではないことが、この取材で見たBIOQLEスタッフの姿とママたちの笑顔から伝わってきました。

取材・執筆/makiko

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