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“おもちゃ病院”でものづくりの魅力を伝える「東海冷熱工業株式会社」

東海冷熱工業

浜松の住宅街にある業務用エアコン取り扱いの企業に、毎月第2日曜日になると、おもちゃを抱えた親子がひっきりなしに訪れます。浜松市東区「東海冷熱工業株式会社」の入り口には、“おもちゃ病院”の看板があります。おもちゃ病院は、「日本おもちゃ病院協会」が取りまとめる、壊れたおもちゃの修理をするボランティアグループです。全国に660を超える拠点を持つ中、浜松に唯一あるおもちゃ病院「浜松とんかち」が、この会社の一画にあるのです。おもちゃ屋さんでもない東海冷熱工業株式会社がなぜこの活動を支援しているのか。その理由とおもちゃ病院の様子を取材しました。

浜松におもちゃ病院を!

辻村社長

辻村社長は浜松生まれ、浜松育ち。創業して36年になりますが、技術者は技術だけがあってもダメ、お客様を思いやる真心が大事だという信念があり、社員教育に力をいれています。自社で社員研修、技術者の実施研修等できるよう、研修社屋を建設しました。ガスエアコンの実機が何台も置いてある全国でも珍しい研修施設で、実技研修の他、接客用のビジネスマナー学んだり、メーカーから最新技術を学ぶ出前講座を開いたりして、同業他社、異業種の方との交流の場として利用しています。広いスペースに研修用エアコンが何台も置いてあるこの場所が、月1回おもちゃ病院に変わります。

おもちゃ病院

おもちゃ病院を始めるきっかけは、取引先のメーカーで30年来の付き合いのあるエンジニアの佐藤さんの影響でした。辻村社長は、定年退職した佐藤さんが名古屋のおもちゃ病院に通って活動をしていることを知ります。壊れてしまったおもちゃを手で直して再生させることは、会社として意識している環境問題への取り組みに通じている、さらにその現場を子どもたちが目の前で見て肌で感じられるのは、“ものづくり浜松”の地域柄、会社の思いにぴったりの活動だと感じました。また、それを無償でやっていることにとても感銘を受け、浜松にもおもちゃ病院を作り、会社として全面的にバックアップすることを決めます。この研修施設が、社員にとどまらず地域の人にも多く利用され、コミュニティの場となることは社長が思い描いていた理想の形でもありました。

地元企業が果たす役割を考えて

地域に喜ばれる場所にしたい!という社長の思いに社員も共感し、現在は会社全体でおもちゃ病院をサポートしています。社内にはおもちゃ病院専用電話回線を設け、おもちゃ病院に関する問い合わせ等があれば、スタッフとして働く佐藤さんがそちらを優先して作業できるよう整えられています。また、おもちゃ病院開催日には、社員は車を奥に停め、利用者のために手前に広くスペースを空けるような心遣いもしているそうです。
おもちゃ病院のスタッフは、辻村社長や佐藤さんとの繋がりがあった、ヤマハ・ホトニクスといったメーカーの元技術者や木工製作を得意とする方が集まっています。数十年企業で技術を培ったエンジニアの手腕が、子どもたちの大切なおもちゃを直すために役立てられているのです。

おもちゃ病院

おもちゃ病院は全国にありますが、地域の協働センターや公共施設を利用している場合が多く、会場準備に手間がかかります。コロナ禍においては、公共施設が長期間閉館してしまい、思うように開催できなかった地域もあったそうです。ここは会社の一画を利用しているため、コロナ禍の影響を受けず予定通りオープンできたそうです。民間企業のバックアップがあるからこそ、安定して開催でき、利用する親子にとっても安心して通える環境が整っているのです。

子どもたちへものを大切にする心を

おもちゃ病院

修理のスペシャリストが子どもたちを笑顔に

おもちゃ病院では、ラジコン自動車、プラレール、ゲーム盤、電動のぬいぐるみ、木製の手押し車、おまけのおもちゃまでどんなものでも扱っています。修復度は95%。これまで3,000件以上の注文を受けてきました。月1回の開催日に、70件を超える修理依頼を受けることもあり毎回大忙し。取材日当日もオープンの10時前から長蛇の列ができ、お昼を超えるまで途切れなくお客さんの出入りがありました。

おもちゃ病院

おもちゃ病院のスタッフたちは持ち込まれたおもちゃの状態を丁寧に問診します。次に動作の具合をみてみると、なぜ動かないのか、大まかなおもちゃの現状を把握でき、お客さんに解説します。乾電池部分の錆取りといった簡単な修理はその場でやってしまいます。ドライバーでおもちゃを解体していく様子を不安そうに見つめる子どもたち。様々な工具で作業していていく様子をじっと見つめます。それが動くようになった瞬間、表情がぱっと明るくなり、パパもママも思わず拍手。子どもたちにとっては、魔法使いのように見えているのかもしれません。「直ってよかったね」と会話しながら帰る親子の様子はとても微笑ましい光景でした。その場でできない複雑な修理は「すぐに直らないから入院するね」と子どもたちに声かけをして、次月の開催日まで預かり修理を試みるそうです。

企業と地域と技術者みんながつながる場所に

おもちゃ病院

おもちゃを持ち込んだご家族からは、「いとこからお古でもらったお気に入りのおもちゃなんですが、生産中止になってしまい部品がなくて困っていたんです」や「親族からお祝いでもらった電動ぬいぐるみが動かなくなってしまって。でもずっとかわいがっているので、せっかくなら動かしてあげたいなと思い持ってきてみました」といった声が聞かれました。どの親子にとっても唯一無二の大切なおもちゃです。多くのおもちゃが流通している現在、修理するよりも買った方が安い物もありますが、直る喜びを知り、長く使うことで子どもたちの物を大切にする心が養われていきます。

社長とスタッフ

「浜松に住んでいるからこそ、次世代を担う子どもたちにものづくりの現場を見る機会を作り、それを肌で感じ楽しさを知って欲しい。その場所を提供することこそが我々の務めです」と辻村社長は話します。地元への愛着、ものづくりへの熱い思いがこの活動に凝縮されていました。

会社概要

 東海冷熱工業

1985年(昭和60年6月)創立。「技術と真心で応える」を経営理念として、業務用空調機、エアコン、冷凍冷蔵庫、電気工事、太陽光発電等を自社設計、施工、メンテナンスを主力としている。2008年(平成20年6月)には、環境省が策定した「エコアクション21」を取得、2009年(平成21年10月)電気工事業(静岡県知事認可)取得し太陽光発電工事への進出。地球環境、地域社会に貢献する企業を目指している。

東海冷熱工業株式会社
所在地:浜松市東区篠ヶ瀬町1369
TEL:053-465-5355
URL:http://t-reinetsu.jp/

おもちゃ病院「浜松とんかち」

【診療所】東海冷熱工業株式会社 3F研修室
【診療(修理)日】毎月第2日曜日
【診療時間】午前10時~午後3時
【TEL】053-443-8181(専用)
※おもちゃの持ち込みは1回につき2つまで
【URL】http://www2.tokai.or.jp/fish-cat-dog/omochahome.html

取材を終えて

かつて浜松から多くの偉人たちが自動車、オートバイ、ピアノ、テレビなど発明してきたように、「ものづくりには夢やロマンがあるんです」と辻村社長はおっしゃいます。こうした歴史を受け継いできた社長には次世代にも“ものづくりの魅力と伝統を伝えていきたい!”という強い思いがあり、これがおもちゃ病院を支えている原動力なのかなと感じました。エンジニアのキャリアを活かす場所があり、それを喜んでくれる人がいて、その活動を支える企業がある。この三者が互いに感謝し合いながら、みんな笑顔になっていることにとても意義があり、素晴らしい環境がつくられていると思いました。

取材・執筆/三浦貴子

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