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佐藤公宏さん 浜松市役所勤務・双生児のパパ

パパは育休取得中

佐藤公宏さん

「育児をしない男を、父とは呼ばない」
かつてこんなキャッチコピーで厚労省が父親の育児参加を促した1999年当時、男性の育休取得率はわずか 0.4%でした。それから十年以上経った2012年には、1.89%と増えました。それでも男性100人に対して2人ほどしか取っていないという育児休業。男性の育児参加が増えたとはいえ、まだ旧態依然として男性は仕事、女性は家庭という意識が残っている職場もあります。
そのような中、「子どもができるずっと以前から育児休業をとりたかった」という男性がいました。育児休業を取ったのは、佐藤公宏さん。浜松市役所中区振興課に勤める公務員です。
昨年10月に誕生した男の子と女の子の2卵性双生児のパパで、出生から半年近く経った2014年4月~6月までの3か月間、育児休業を取得しました。目下、育児休業真最中の佐藤さんへのインタビューです。

“四六時中一緒”がストレスになる?

佐藤公宏さん

佐藤さんが育児休業を取った理由はこうでした。
「毎年、秋に人事面談があります。
その折に、子どもができたら育児休業をとりたいと言い続けてきたんです。
それが、双子ができて決意が固まったというか。
出産後、妻は実家に里帰りしていたので、自分は見に行くだけだったのです。妻や祖父母にいつも抱かれているので、たまに行っておそるおそる抱くと、私の抱き方に違和感を感じるのか泣かれてしまって。
正直、このまま妻にべったりになるのではまずいなと思いました。 自宅に帰ってきたら、一生のうち3か月間じっくり育児に専念する時期があっても悪くないかなと思ったんです。
要は父親である自分にもなついてほしいのです。」

いっぽう、奥さんは、夫の育児休業取得にはあまり乗り気ではなかったといいます。
元々、奥さんは自分で何でもやれて“自分流を通したい人” 。あなたの負担を軽くするために育休を取ったのだと夫には言われたくないのだそうです。
また、平日の昼間、夫婦そろっていつも居れば、近所で「あの嫁は いったい何をやっているんだ」と言われかねないと気にしていたこともあったといいます。
けれど、何よりも「四六時中、夫婦ふたりで一緒にいること のストレスの方が強いのかもしれない」と笑って言う佐藤さん。つい、あれやこれやと奥さんのやることが目について、細々言ってしまうのだそうで、今日も 「外に行くのならついでのこと、あるならしてきていいから、ゆっくりね」と言われてきた、と佐藤さんは苦笑いします。

育児には心のゆとりが必要

佐藤公宏さん

佐藤さんの育った家庭は、お父さんがいわゆる亭主関白だったそうです。お父さんが家事育児を全くしないことが子ども心に嫌で、家事育児全てをこなす母親を見習って育ち、料理好きになったのだと言います。料理はどこかへ習いに行ったわけではなく、自己流で名前のある簡単なメニューしかできません。余った食材で奥さんがアレンジして料理を作ってくれるので、夫婦で無駄なく調理分担がなされているのだそうです。

この話を聞くと、育児も家事も現在の佐藤家では無理なく楽しんでいるように思えてきます。しかし、最初の頃の育児はそうではなかったと言います。夫婦ともにカリカリしていて、いつまでこれが続くのかと悲壮感が漂っていた時期もありました。
特に、育児休業を取る以前は次の日の仕事が控えているので、佐藤さんだけが別室で寝ていました。けれど、佐藤さんがくしゃみをするだけでどちらかの子が目を覚ますし、夜泣きをするのでこちらも眠れず“嫌だな、疲れるな”と思っていました。
ところが、育児休業を取ってしまうと、時間に関係なく付き合えるので、心に余裕もでき、ゆとりがあります。
ですから今、同じ状態になっても夫婦で笑えるようになったのだと微笑みます。

「権利だ」と主張はできない

佐藤公宏さん

浜松市役所で、男性が育児休業を取るのは佐藤さんで2人目になるのだそうです。
職場での理解はどのようなものだったのでしょうか。
「男性が多い職場環境だから理解がないのかと言えば全く逆で、周囲は同世代・子育て世代が多く、直属の上司も同じ2卵性双生児のパパなので、双子の大変さもわかってくれています。
課長は『自分の時代にはなかったけれど、これからの時代は男もやらないとね』と好意的に育児休業の許可の印鑑を押してくれました」とのこと。
あっさり育児休業がとれてしまうからと言って、佐藤さんは職場の人たちに甘えてばかりではいませんでした。
自分がいなくても迷惑がかからないようにと、育児休業を取るにあたって3か月前から事務処理のマニュアルを作成し、同僚や代わりの人たちに仕事を引き継いだそうです。

育児休業を今後取得する人にアドバイスをするとすれば、
「自分は恵まれているかもしれない。職場では先例がないと取りにくいのかもしれないけれど、権利だからと堂々ととるのではなくて実際は心苦しいので、ふだんから頼める関係を作っておくことは大切です。」
と言います。

イクメンという言葉に、支えられて

佐藤公宏さん

「イクメンという言葉に助けられています。」
佐藤さんは、にこやかにこう語りました。
育児休業を取ることを親たちに報告したところ、「イクメンだねえ」と言われただけでしたし、職場の女性たちからも褒められたと言います。また、奥さんが気にしていた、近所の方たちからも「イクメンだもんね」と声をかけられるくらいだそうです。
社会で “イクメン”という言葉が認知されるようになったおかげで、男性が堂々と育児・家事参加ができるようになりました。

しかし、子育てに専念して楽しむ父親と言えば聞こえはいいですが、母親同様、生まれたての子どもは自分の子どもと言えど思い通りになってくれず、初心者の親たちにとって「なぜ?なぜ?」が多い子育て。
最初は奥さんがお風呂に入っている10分から15分の間、ギャン泣きするわが子たちにドキドキ。ところがそれもタイミングがわかり、慣れてくると泣いていても平気になってきたといいます。
おそらく世のパパたちが、子どもがなつかないと言うのは、そのあたりのタイミングをつかみ損ねて、「あ、子ども、ムリムリムリ!」と途中で投げ出してしまうのでなつかないわけで最初が肝心なのだと語る佐藤さん。

イクメンを体験したおかげで、子育てに専念するようになって時間を大事にするようになり、並行して行動することが多くなったと言います。
例えば、一日の子どものスケジュールに合わせて動くので、メニューを決めたらさっさと買い物に行き、きょうのお風呂はこの時間と決めたら、お風呂に入れている間に調理をする…といった風に、効率よく動いています。
こうした育児が、仕事復帰後、改めてそれまで以上に効率よく仕事をやろうという気持ちにつながったそうです。

佐藤さんが育休を取って得たものは、日々変わっていく子どもたちの成長を見て育てられていること、並行してものごとを効率よく進めるスキル、そして子育てするパパ(イクメン)への周囲の人々の理解や温かさを身をもって体験できたことでした。これは今後の佐藤さんの仕事と子育てにとってかけがえのない財産になることでしょう。後に続くパパたちも育休取得にチャレンジしてみてはいかがでしょう。

 

(2014年5月12日にインタビュー 談:佐藤公宏さん 取材・文 ぴっぴ 原田博子)

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