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上嶋常夫さん ライブハウス浜松窓枠 会長

 子どもは“宝”。笑いとアイデアで、地域をもっと元気に

上嶋常夫さん

浜松の中心街、ゆりの木通りの一角。夕方、ライブハウス入場を待つ若者が通りにあふれる光景が、よく見られます。このライブハウスの名は「LiveHouse浜松窓枠」です。ここは全国的に名が知れており著名なミュージシャンによるライブもしばしば行われます。

元々、建材業で窓枠を扱っていたことからこの名を付けたという初代オーナー、上嶋常夫さん。ライブハウスの他、映画の総合プロデューサーなど、新聞やテレビで話題になりメディア露出が多いのですが、よくよく見ると子どもに関連する事業が多いのです。きっとそこには何か想いやこだわりがあるはずに違いないと上嶋さんにお会いしてお話を聞きました。

不登校の子どもたちの「居場所」をつくる

窓枠

上嶋さんは、建材業を営む傍ら、43歳でピアノ教室に通い習得後、音楽活動で障害者施設をまわっていたと言います。50代から始めた「窓枠」では音楽活動を通して不登校の子どもの面倒を見ています。ライブハウスにやってくる若者たちの中には、不登校の子どもや心が弱ってリストカットした子どももおり、それを見かねてこの子たちの居場所をつくろうと思い、フリースクール「窓枠学院」をつくりました。

フリースクールは公的な学校と同様の扱いとはなりませんが、在籍校の校長先生が認めればフリースクールに通っていても出席扱いにはなります。
「形だけの出席のために来てもなんの解決にもならない。子どもたちが社会に出た時に順応できるような対処が必要」とコミュニケーションがうまく取れるようになるための接し方に気遣ってきました。「ここに通ってきた中学生は、卒業後は自然に高校に通えるようになっていったよ」と言います。いまは、通っている子どもはいないけれど扉はいつも開いています。

ライブハウスというとたばこの煙やお酒が付きもので「おとなの社交場」というイメージがあります。しかし、それを払拭するような場がこの窓枠にはあります。窓枠のホームページは黒一色のなんの飾り気もないもの。そこには「中高生の職場体験受付ます。お気軽にご連絡下さい。」とあります。健全な場所であることを強調した言葉ではないでしょうか。

子どもたちに絵本やゲームで伝える「お箸の持ち方」 

豆わたし

現在、上嶋さんが手がけている事業の中に、箸の美しい使い方を伝授する「日本お箸道」があります。テレビで見かける出演者たちの箸の使い方の不味さに危惧した上嶋さんは小さなうちからきちんと教える文化を作ろうと思いつきました。
「日本人が箸の使い方が悪いのは見栄えも悪い。自分とこの子もそうだけど、親類の子にも小さいうちから躾けてきたんだ」と上嶋さん。また、「箸の持ち方は、親子関係の現れを反映する」と言います。「食事を摂りながら親子で会話をして教える。こうして親から子へと伝承がうまくなされている家庭では魚も箸で上手に 食べることもできるのだよ」とも。

豆わたし

そこで、子どもたちにわかりやすく継承していくためにはどうしたらいいかと考えたのが「豆わたし」という絵本でした。これは、昔話に仕立てたものです。北遠地方に二つの村(天音村と天流村)があり、川の水をめぐっていがみあっていたのをひそかに想い合う若いふたりの男女が、「豆わたし」で争いを止めようとしたという内容です。「豆わたし」とは、不思議なお坊さまに教えてもらった、箸で豆をつまんでお椀に運ぶ競争です。
上嶋さんが創作して原案を作り、浜松市出身の著名な画家、岡田潤さんに依頼して作絵してもらいました。絵本の他に、木製のゲーム盤も作成しました。これは楽しみながら「豆わたし」が 実践できるように考えてあります。また、このゲームを通して箸の上達度に応じて段位が認定され、認定証がもらえるしくみになっています。
現在、学校より家庭教育講座等の声がかかるようになり、お箸の持ち方指導をしているそうです。

笑いにくるんで大切なことを伝える、独特の力

このように次々と「子どものため」に力をつくそうとしている上嶋さんとはどんな人なのでしょうか。上嶋さん自身の人柄に関するエピソードがあります。
上嶋さんは、絵本「豆わたし」が縁で、小学6年生に“夢のかなえ方”というテーマで話をしたときのことです。

上嶋さん 「みんな、夢はかなうと思ったらいかんのだぞぉ」
子どもたち 「 えーーー!夢ってかなうもんじゃないのぉ?!」
上嶋さん 「かなったら現実じゃん。かなわないから夢っていうんだろう。夢は夢。(小さな声で)校長先生に言ったらあかんぞ。」

上嶋常夫さん

このように話の出だしで、子どもたちの心を引きつけぐいぐいと独自の世界に引き込んでいってしまいます。子どもたちは皆、上嶋さんの話に夢中になって、予定の時間より20分も長引いてしまったほどです。(夢は空ごとだけれど「夢がかなえば、次の夢をかなえるための目標をつくるんだよ」というオチは話したそうです)。

また、ある小学校で2学年ごとに話すことになった家庭教育講座でも、
「日本国から『日本お箸道』と名乗っても良いと許可証をもらった上嶋です。」
と神妙に自己紹介をして話し出すものですから、子どもたちは「ただのおじさんだと思ったら、ただもんじゃない人なんだ」と真剣に話に耳を傾けたそうです。
真顔で冗談を盛り込み、子どもたちの心を引きつけ、伝えるべきことはしっかり伝える。芯の通った人と言えるでしょう。

これまでに手掛けてきたたくさんの事業の中で、子どもに関連する事業が多い理由をたずねると、「別に子どもばかりではないんだけど。事業を通してつながりを作っていけば、絶ち消えていく地域コミュニティ再生につながると思うから」と上嶋さん。
そして付け足すように、「なぜかな。深く意識したことはないけれどー子どもは宝だと思うからかな」とにこやかな笑顔を向けました。
そこには孫をいとおしむ祖父のようなやさしい表情がありました。

上嶋常夫さん プロフィール

建材業から、50代で「ライブハウス浜松窓枠」を設立。2012年、浜松市天竜区水窪町を舞台に映画『果てぬ村のミナ』の制作に関わり総合プロデューサーに。一般社団法人 自転車初乗り指導協会自転車初乗り指導協会会長。立体駐車場自転車レース「パーククライム」を考案するなど多数の事業を手掛けている。

子育て耳より情報 「パパの出番!補助輪なし自転車の練習法」 にもご協力いただきました。

(2016年3月7日にインタビュー 談:上嶋常夫さん 取材・文:ぴっぴ 原田博子)

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