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文化と教育が子どもの感性を育む「音楽のまち浜松」

文化と教育が子どもの感性を育む「音楽のまち浜松」

浜松市は2014年、アジアで初めてユネスコ(国際連合教育科学文化機関)創造都市ネットワークの音楽分野での加盟が認定されました。世界的楽器メーカーが集中する浜松市は「音楽のまち」をうたい、さまざまな形で音楽を取り入れたまちづくりを実現しています。日本で唯一の公立楽器博物館である「浜松市楽器博物館」が今年で設立22周年を迎えるほか、3年に一度世界的な若手ピアニストの育成を図るための「浜松国際ピアノコンクール」がこれまで9回開催されるなど、他都市にはない音楽環境を育んできた歴史があります。こうした中で次世代を担う子どもたちへの音楽教育も、レベルの高い内容で独自の取り組みがなされています。

すべての子どもに本物の音楽を。挑戦する気持ちを育てる音楽教育

学校を離れた特別な環境で音楽を聴き、自分自身も参加する「こども音楽鑑賞教室」そして「浜松市音楽科研究発表会」は、子どもたちに音楽を通じて多くの刺激を与える場になっています。これらの取り組みについて取材しました。

<1>「こども音楽鑑賞教室」――オーケストラの迫力ある音を体験

本格的な音楽をより身近な存在にと、毎年2月に実施されているのが「こども音楽鑑賞教室」です。プロのオーケストラ演奏による名曲の鑑賞や、合唱・リコーダーでの共演をアクトシティの大ホールで体験します。
市内の5年生が全員参加し、行政・学校・オーケストラ・地元企業の関係者が一体となって実施する取り組みは全国でも唯一と言われています。

アクトシティ 大ホール

第16回を迎える今年も2日間(午前の部・午後の部、計4回)にわたり開催され、市内の小学5年生7,200名あまりの子どもたちが浜松フィルハーモニー管弦楽団の演奏を鑑賞しました。
この教室は、子どもでもオーケストラの演奏に興味が持てるようさまざま工夫がされています。曲や出演者、鑑賞のマナーなどについてわかりやすく書かれたパンフレットが配布され、趣向を変えた3部に分けて構成されています。第1部は聴きとりやすい曲の演奏と共にスクリーンを使い楽器の紹介がありました。演奏者が楽器の種類や音色の違いをわかりやすく説明していきます。

第2部 オーケストラとの共演

第2部は、オーケストラとの共演です。立ち上がった子どもたちは、オーケストラの伴奏で「浜松市歌」を合唱しました。政令指定都市となった10年前に新しく作られた市歌が、大きなホールいっぱいに響きわたります。続くプログラムは「威風堂々」です。それぞれ持参したリコーダーを取り出し、指揮者の合図を待ちます。ステージの中央に視線が集まり、合図と共に1800人がリコーダーを演奏します。学校で日々練習してきた曲がオーケストラの重厚な音色に重なり、まさに威風堂々の力強い一曲となりました。

共演後の3部ではオーケストラの醍醐味ともいえる迫力ある曲を鑑賞し、アンコールでは会場全体の手拍子で曲を盛り上げ、鑑賞教室は終了しました。1時間を超える長さでしたが、子どもたちは最後まで熱心に舞台を見つめていました。

<2>「浜松市音楽科研究発表会」――学校の仲間と練習を重ね、合唱に挑戦

砂丘小学校

また別な取り組みとして、市の音楽教諭が企画する「浜松市音楽科研究発表会」があります。市内6つの会場に分かれ、各学校の学年団や音楽部などが日ごろの音楽学習や活動の成果を披露したり、他校の発表を鑑賞したりします。東区、西区、南区、中区では毎年9月に開催され、昨年も58校がアクトシティでの発表に挑戦しました。クラスや学年を越え練習を重ねて本番に臨む、子どもたちが主役の行事です。合唱に取り組む様子を、南区にある「砂丘小学校」の寺田敦子先生にお聞きしました。

 音楽家研究発表会

2016年度、砂丘小学校では4、5年生が「音楽科研究発表会」に参加しました。音楽の授業で普段の様子を見ている寺田先生が選んだ曲は「見えない翼」です。練習は6月からスタートしました。夏休みを挟むものの、3か月前からひとつの曲に向けて準備が進められます。音楽の授業以外どのように練習するのかを聞いてみると、子どもたちが自主的に空いた時間を使い練習に励んでいたそうです。5年生がリードしながら、高音・低音のパートに分かれて練習することもあり、上手になりたいという気持ちが表れています。

本番当日。広い会場を前に緊張が高まった子どもたちからは、だんだん笑顔が消えていきます。先生はとにかくリラックスするよう語りかけたそうです。その甲斐があってか、アクトシティの大ホールに立ち、スポットライトを浴びた子どもたちは、大きな口を開けいつも以上に明るい表情で「見えない翼」を歌いあげました。

子どもたちの振り返りの記録

帰りのバスではさっそく合唱への批評がみんなに伝えられます。「天使のような声に引き込まれました」「積極的に表現できているすばらしい合唱でした」という審査員からの感想からも、練習の成果を思う存分発揮できたことがうかがえます。子どもたちの振り返りの記録には、歌う前の緊張と本番で成功したよろこびについてたくさんの感想が書かれていました。「歌い始めたら全然こわくなくなった」「今までで一番上手に歌えた」「気持ちよく声が出せた」など、仲間ときれいなハーモニーを奏でることができ、大きな達成感を感じたようです。中には「歌い終わった後、先生からのオッケーサインにホッとした」という微笑ましい内容も。他校の選曲や歌い方についての感想も多く、個性や特徴を捉える豊かな感性が育まれていました。

子どものための音楽団体「ジュニアオーケストラ」と「ジュニアクワイア」

公教育からさらに一歩進め、本格的に音楽を学ぶ場として、市が主宰・育成している「ジュニアオーケストラ浜松」「ジュニアクワイア浜松」があります。一流の指導者のもと、小学3年生~高校3年生までが、毎週土曜日に集まり音楽の技術と感性を磨いていきます。学校を越えたつながりの中、練習を重ね舞台に立つ子どもたちは、どんなきっかけで入団し、どんなことを感じているのでしょう。団員として参加している子どもたちにインタビューしました。

「ジュニアオーケストラ浜松」――少年少女が演奏するオーケストラ
●お姉ちゃんの影響でジュニアオーケストラに

佐々木真結さん

3年生からジュニアオーケストラに参加している真結さん。お姉ちゃんが学校の金管バンドに所属していたこともあり、楽器の演奏に興味を持ったそうです。オーディションで手にしたホルンが自分に合っていると感じて、ホルンを希望しました。
パート練習で先輩たちに楽器の演奏を学ぶ機会が多いオーケストラ。真結さんも高校3年まで続けて、後輩にいろいろと教えられるようになりたいと張り切って練習に励んでいます。

――入団してよかったことは?
県外での演奏会で、他の地域のオーケストラと交流できたのがとても楽しかった。
――好きな曲は?
ブラームスの「悲劇的序曲」

(白脇小6年 佐々木真結さん)

ジュニアクワイア浜松――少年少女による合唱団
●定期演奏会を鑑賞して自分もジュニアクワイアに

鈴木あゆのさん

元々歌が大好きだったあゆのさんは、友だちが出演するジュニアクワイアの定期演奏会を鑑賞したのが入団のきっかけでした。3年生から始め、メゾソプラノを担当しています。大きなステージで歌うのは緊張するのかな?と思いきや「ワクワクする」という肝の据わった回答。練習を重ねた仲間とのハーモニーが会場に響くのは格別のようです。高校3年までクワイアで歌を学び、その先もミュージカルなどで歌と関わっていきたいと夢は膨らみます。

――入団してよかったことは?
学校の授業や合唱でも、高い音や低い音が上手に出せるようになった。
――好きな曲は?
サウンドオブミュージック「ドレミのうた」やメリーポピンズの「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」など。

(蜆塚中1年 鈴木あゆのさん)

クリスマスコンサート

ふたりからは、今学んでいる音楽に長く関わっていきたいという共通した想いが伝わってきました。毎年行われる定期演奏会やスプリングコンサートのほか、フラワーパークなど施設のイベントで出演することもあります。いろいろな舞台に立つことができ、たくさんの人に出会い、音楽を楽しみながら成長していきます。「音楽のまち浜松」の環境は、子どもたちの興味を引き出し、新しい世界を見せてくれるのです。

協力/ジュニアオーケストラ浜松/ジュニアクワイア浜松

<取材を終えて>

世界的に活躍するジャズピアニスト上原ひろみさんの輩出、市民主体の「やらまいかミュージックフェスティバル」開催など、音楽から生み出されるエネルギーは浜松全体を活気づけています。
浜松の特性を活かした教育の中、聴く機会や舞台に立つ機会に恵まれた子どもたちは、価値のある時間を過ごしていました。みんなで音楽に取り組むことで自分の役割を見つけ出し、重なったハーモニーからは一緒に作り上げたという達成感を感じたようです。仲間と音楽を学ぶことは、技術や知識の向上はもちろん、団結力を高め人と人がつながる大切な機会となっていました。
「音楽のまち浜松」の取り組みは、子どもたちとって人生の支えとなるようなかけがえのない時間を作りだしているのではないでしょうか。この先も音楽を通じてたくさんのことを学び、この浜松をより活気溢れる街にしてくれることを期待します。 

文/makiko

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