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伝統のバトンを次の世代へ “子どもたちの浜松まつり”

浜松まつりの夜を豪華に彩る、御殿屋台の引き回し。そして、それをさらに盛り立てるのが、子どもたちの“お囃子”や“ラッパ隊”です。華やかな舞台に立って注目を浴び、日常では味わえない体験ができる一方、長い月日をかけて、まつりの伝統を受け継ぐという使命も果たすことになります。
地域の大人たちから楽器の演奏や礼儀などの指導を受け、子どもたちが大きく成長していく姿を、一歩引いたところから見守る日々は、親にとっても貴重な経験となるようです。
浜松っ子なら誰もが憧れる、お囃子と子どもラッパ隊の練習に密着取材し、浜松まつりを“子どもたち”に焦点を当てて見つめ直してみました。

浜松まつりの“お囃子”と“子どもラッパ隊”って、どんなことをするの?

<お囃子>可愛らしくお化粧した子どもたちが優雅な音色を奏でる

お囃子

御殿屋台の上で演奏をし、おまつりに華を添える子どもたちのお囃子。お囃子とは、笛、和太鼓(楽器の種類は町によって様々です)、鐘、三味線からなる祭囃 子です。曲数は各町によって異なりますが、主流は2~3曲とのこと。同じ曲でも、曲の速さや太鼓の打ち方、掛け声など、各町によって代々受け継がれている ものが違います。

<子どもラッパ隊>迫力は大人顔負け!凧場や街を練り歩き、盛り上げる

ラッパ隊

浜松まつりの名物、凧揚げや練りに欠かすことの出来ないラッパ隊。信号ラッパを持って列を作り、お祭りの勢いをさらに盛り上げます。子どもラッパ隊で演奏 する曲は、大人のラッパ隊と同じもの。1曲のみの町もあれば、4~5曲を使われる場面によって変えていく町もあります。子どもラッパ隊は、小学生で構成さ れ、その多くは子ども会を中心に組織されています。

練習に密着取材! 誰から、どんなふうに教わるの?

旧町(戦前より参加している町内)として歴史ある町のひとつ、池町。この町では、子どもたちがお囃子とラッパ隊を掛け持ちしていることが特色です。その練習のようすを見せてもらいました。

小学生になったら、お囃子と子どもラッパ隊にデビュー

提灯

池町のお囃子は、鐘、大皮、つつみ、小太鼓、大太鼓からなり、笛と三味線は大人が担当します。曲は、四丁目(しちょうめ)と六法(ろっぽう)の2曲からなります。お囃子が初めての子どもは、鐘の演奏から覚えます。学年が上がるにつれて楽器が変わり、6年生になる頃には全ての楽器を演奏することができるようになります。大太鼓は歴代、高学年の男の子が担当します。これらの楽器は、すべて町の所有物です。

練習風景2

また、ラッパ隊が何よりも最初に覚えなければいけないのが「音を出すこと」。“信号ラッパ”は、4つの音からなっています。一定の息で音が出せるよう練習した後、鳴らしやすい低い音から徐々に出していきます。4つの音、すべての音が出せるようになるには2~3年かかるようです。

今年の練習は、4月初旬の会所開きの後に始まりました。練習は基本的に平日毎日(19:00~20:30)ですが、様々なお稽古事で忙しい今どきの子どもたちなので、練習は参加出来る時に一生懸命やる!というように臨機応変に対応しています。

お囃子の練習を通して“礼儀”と“けじめ”を学ぶ

牧先生

お囃子の指導にあたるのは、池町に育ち、子どもたちにお囃子を教えて30年余りの牧さん。時間になり、牧さんが前に立つと、空気がピシッと引き締まります。牧さんが落ち着いた声で「靴は下駄箱にしまってありますね。」「休み時間は楽器で遊びません。」などと約束ごとを言った後、姿勢を正してごあいさつ。本番前の緊張感が漂う中、練習が始まりました。
「昨日よりあまりうまくなっていないね。」「お互いの音を聞くことが何より大事なんだよ。」「きれいに見える姿勢や打ち方が大切だね。」と、丁寧ですが、けじめある厳しい指導が入ります。子どもたちの眼差しも真剣そのものです。時には牧さん自ら各楽器を手に、個別に指導することも。同じ場所を何度も何度も繰り返し練習しました。

練習風景1

間に一度、小休憩をとります。休憩の間はお友だちとおしゃべりをして、子どもたちの表情も和らぎます。練習は集中して行い、休憩はリラックスするというけじめも、自然と身についているようです。小休憩が終わると、あともうひと頑張り。1日の練習のおさらいをして、最後に一通り通すと、「きれいに全体がまとまるようになりましたね。」と牧さんからようやく褒めてもらえました。お囃子の練習が終わると、楽器を丁寧に片付けます。楽器を大切に扱うのは、楽器が古くから伝わる町の財産だから。先生からの約束事をきちんと守るのもそのためです。こうして、親ではなく地域の大人たちから、町のルールを学んでいます。

ラッパ隊は威勢よく!直前の練習は本番さながらの緊張感

屋台小屋前集合

次に、ラッパ隊の練習に同行取材しました。池町では、お囃子の練習が終わると、ラッパを持って屋台小屋前に集合します。ラッパ隊の指導にあたるのは青年会の方々です。こちらもお囃子同様、指導者が前に立つと同時に子どもたちもピシッと整列します。

取材した日はおまつりが近い時期だったので、当日に子どもたちが道に迷うことのないよう、大人たちの警備の元、可能な限りラッパを鳴らしながら町を練り歩きました。途中で一度休憩を挟み、再び屋台小屋前へ。屋台小屋前に戻ると、最後もきっちり整列します。終わりのあいさつをして1日の練習が終了しました。

お楽しみのお菓子

お囃子、ラッパ隊のどちらも、できる・できないに関わらず練習に参加し、技術だけでなく、おまつりの雰囲気も肌で感じながら練習を重ねていきます。そして数年たち、6年生になる頃には町のリーダーとしてお囃子とラッパ隊を引っ張っていくことになります。

ところで、厳しい練習でも帰る時には楽しそうなのはなぜでしょうか?子どもたちに聞いてみると、「夜にお友だちと会えるから!」とのこと。何か日常と違う特別な感じがしてわくわくするのでしょうか。そして、練習の後には、お楽しみのお菓子がもらえます。きちんとお礼を言った後、とってもいい笑顔を見せてくれました。

夢の3日間 浜松まつりに参加して

こうして迎えた晴れ舞台、浜松まつり。参加した親子に感想を聞きました。

緊張したけど、みんなで盛り上がれてよかった!

斉藤蒼磨くん

僕は、お囃子とラッパ隊を掛け持ちしています。小1の頃から始めたお囃子も今年で終わりです。練習では牧先生から”お囃子の中心は大きな音の大太鼓だよ。”と言われていたので、屋台の上ではとても緊張しました。そして、みんなで盛り上がることができるラッパ隊が僕はとても好きです。中学生になる来年からは、青年練りに入ることができるので今からとても楽しみにしています。(斉藤蒼磨くん・元城小6年)

おまつりは小さな社会。自然にコミュニケーションが学べる場

お囃子やラッパ隊に参加すると、普段交流のない町の大人や、学年・学校が違う子との交流を持つことが出来、コミュニケーション力がつくのではないかと思います。親の私も、長女の時から子どもと一緒に池町の屋台を引っ張って通算11年。それも今年で終了です。楽になるなと思う反面、終わってしまう寂しさもあります。屋台に乗ってお囃子をしている子どもを見るのは、とても楽しく、よい思い出となりました。子どもたちには、長い間教えて下さった方々に感謝の気持ちを持って成長していってほしいと思います。(斉藤くんのお母さん)

受け継いだ伝統を次の世代にも

最後に、池町五色会会長にお話を聞きました。

会長太田さん

「池町のお囃子・子どもラッパ隊は全部で約20名。その内、約7割の子たちが他町からの参加です。池町では、古き良き浜松まつりをより多くの子どもたちに伝えようと、町内の子だけの参加にこだわりません。それは、私たちも幼い頃より小・中学校の先生や町の大人から『旧町の者として、お前たちが浜松まつりを守り、次の世代へつなげて行くんだよ』と教えられて育ってきたからです。先輩方から教えて頂いた伝統を守り、今の子どもたちへと伝えていく。それが浜松まつりを守る者の使命だと思っています」(池町五色会会長 太田さん)

取材を終えて

学校に入ったら、子どもラッパ隊に。小学校を卒業したら、大人のラッパ隊に。どの世代にも年長者への尊敬と憧れがあり、その気持ちが次の世代へ伝えていこうという原動力になっているように思えます。
今回取材させて頂いた池町では、お囃子・ラッパ隊の練習風景の中でも旧町ならではの品格や歴史を感じる場面がたくさんありました。現在、浜松まつりの参加町は174町に。各町によってお囃子や子どもラッパ隊のスタイル、それらを支える形は様々ですが、浜松市内の多くの町でおまつりを通して子どもたちを見守る大人の姿があります。
幼い頃から浜松まつりで学ぶルールは、社会のルールと同じです。子どもたちのその後の人生にも必ず役に立つことでしょう。これから先、どんなに時代が変わっても、浜松まつりの伝統のバトンを変わらず受け継いでいってほしいと願わずにはいられません。

取材・文責/NPO法人はままつ子育てネットワークぴっぴ 時田祐子

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