子育てのヒント

助産師たちのつぶやき ~妊娠中の旅行について~

2019年1月5日

助産師たちのつぶやき明けましておめでとうございます。平成最後の新年の幕開けを、皆さんはどのようにお過ごしでしょうか。私は久しぶりに元旦からお仕事でした。お産は24時間365日待ったなしなので、もちろんお正月でも産科病棟はいつも通り元気な赤ちゃん達の声で賑わっています。さて、久しぶりにこのページを担当させていただくにあたり、何を書こうかとずいぶん悩みました。3人の子どもたちの話、3回のお産の話、育児をしていて気が付いた事、仕事復帰と保育園の話…。その中でも、ここ数年気になっていたことを書かせて頂こうと思います。

近年、雑誌でも取り上げられることが多くなり、流行りのようになってきている『マタ旅』。妊娠中の旅行についてです。助産師外来で妊婦健診を担当していると、良く聞かれることがあります。それは「安定期に入ったら旅行にいっても大丈夫ですよね?」「安定期に入ったから、今のうちに旅行に行ってこようと思いますがいいですか?」というものです。旅行雑誌やネットには当たり前のように『妊婦さん歓迎の宿』『マタ旅経験談』なんて楽しそうな情報が載っています。赤ちゃんが生まれたら、しばらく旅行に行けないから今のうちにいっておきたい、赤ちゃんが生まれたら上の子にしばらく不自由な思いをさせるから、今のうちに遊びに連れて行ってあげたいというお母さんたちの気持ちは痛いほどわかります。

でも、ちょっと待ってください。TVや雑誌では知らされない、厳しい現実があることを皆さんはどれくらい知っていますか?首都圏の某有名テーマパークで働いていた友人の看護師は、毎日のように妊婦さんが体調を崩し、救護室にやってくると言っていました。その近くの病院では、旅行に来た妊婦さんが切迫早産で入院したり早産してしまったりすることも少なくないそうです。実際当院でも、浜松に観光に来た県外在住の妊婦さんが出血したりお腹が張ったりして救急外来を受診し、そのまま入院になるなんてこともあります。

そもそも安定期を「流産や早産の危険がなくなる時期」と勘違いされている方が多いように思います。本来、安定期とは「胎盤が完成し、赤ちゃんの胎内環境が安定する時期」を言います。決して、その時期に流産や早産をしないというわけではありません。順調な妊娠経過を辿っていた方であっても、突然出血や破水をして早産に至る可能性もゼロではないのです。もしそうなった時、赤ちゃんの一生を左右するだけでなく、お母さんやご家族、赤ちゃんのご兄弟の一生を左右するようなことにもなりかねません。そして何より、お母さん自身が深く悲しみ、後悔することになると思います。

妊婦さんは旅行禁止!などといっているわけではありません。正しい知識がなかったばっかりに、「安定期だし私は元気だから大丈夫♪」と旅行に行き、あとで後悔するお母さんたちを見たくないのです。旅行をするなら、しっかり情報収集した上でゆとりをもった計画を立ててください。そして、何よりお腹の中に赤ちゃんがいるという自覚と覚悟を持っていってくださいね。もちろん、母子手帳は肌身離さず持っていてください。

ちなみに産科医師も助産師も、妊婦さんから「旅行にいっても大丈夫ですよね?」の問いには絶対「大丈夫!」なんて言いません。健診をしている今は大丈夫でも、先のことは誰にも分からないのです。今回は、少し厳しい内容になりました。私の、お母さんと赤ちゃんの幸せを願う気持ちが少しでも伝わればうれしいです。                          

文/浜松医療センター 助産師 葛綿 優子

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