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昔話に学ぶ子育ての知恵(10)~「かっぱの尻子玉」から学ぶ子育てへのメッセージ~

昔話に学ぶ子育ての知恵

これまでの回では、日本や世界各地の昔話を紹介してきました。今回は、静岡県浜松市を流れる都田川(みやこだがわ)に伝わる昔話「かっぱの尻子玉」を取り上げてみたいと思います。

「かっぱの尻子玉」って、どんなお話?

むかし、都田川はとても曲がりくねっていて流れのはやい瀬や深い淵が、ところどころにありました。
瀬戸淵にはかっぱの大将が、また滝沢の枕瀬橋のあたりには中かっぱが、川山の大明神橋の下には小僧かっぱが、住んでいました。このかっぱたちは、毎年祇園祭の日に、人間の尻子玉(人のお尻にあるという玉、むかしからかっぱに抜かれるといわれている)をぬいて、水の底の竜宮城にいる乙姫さまにお供えすることにしていました。

かっぱ

ある年のこと、瀬戸淵の大将かっぱから、「人間の尻子玉を、百取ってまいれ」という命令が出されました。
そこで中かっぱは、すぐに百取って持って行きました。けれども、小僧かっぱは、九十九までは取れたのですが、あとひとつがどうしても取れません。そこで小僧かっぱは、しとしとと雨の降る夜、小ぼうずに化けると、九十九の尻子玉を入れた袋を持って、大明神橋の上で待ちぶせしていました。

そこへ、ひとりの男の人が通りかかりました。小ぼうずは、「おじさん、おじさん、ちょいとおたのみ申す。すまないけどこれを瀬戸淵の大将かっぱに、とどけてくれまいか」といって、持っていた袋をさし出しました。
男の人は、「お安いご用だ、とどけてやろう」といって、その袋を受け取りました。けれども、しばらくすると気になって袋をあけてみました。すると、中には九十九の尻子玉と一枚の手紙が入っていました。手紙には、「しりこ、しりこ、九十九尻子、使いの者とで百尻子」と書いてありました。
そこで、男の人はその手紙を、「しりこ、しりこ、九十九尻子、使いの者に千両小判」と、書きなおし、瀬戸淵の大将かっぱのところへ持って行きました。

大将かっぱは、中の手紙を読むと、「おじさん、ごくろう、ごくろう」といいながら、男の人に千両小判をくれました。そして、男の人は、村一番の大金持になったということです。

「かっぱ」が伝えようとしたこと

日本各地に残る「かっぱ」のお話には、ただの怖い妖怪としてではなく、地域の自然や生活に根ざした“教え”が込められていると感じます。
この「かっぱの尻子玉」も、そのひとつ。川の流れが速く、淵が深い場所での水の事故を防ぐために、「一人で川に近づいてはいけないよ」「水辺で遊ぶときは大人と一緒にね」と、子どもに伝えるための知恵が物語として語り継がれてきたのでしょう。
昔の人たちは、ただ「危ない」と言うのではなく、少し怖くて、でもちょっと笑えるような「かっぱ」の話を通して、子どもに危険を伝え、命を守る術を伝えていたのかもしれません。

笑いと知恵がつまった結末

この昔話は、ただ怖いだけではありません。かっぱに尻子玉を取られることを知った男の人が、うまく頭を使ってピンチを切り抜け、千両小判を手にするという、とんちの効いた終わり方に、思わずクスッとしてしまいます。こんな風に、昔話にはユーモアや知恵がたくさん詰まっていて、子どもたちの心にも自然と届いていくのですね。

語り継がれるお話の中にある“想い”

都田川周辺には、他にも「かっぱのあやまり証文」や「竜宮城へ行ったきこり」など、たくさんのお話が残されています。けれども、昔話を子どもの頃に聞いて、今でも語れる人は少なくなってきました。
私は、書き残されたお話を覚えて、園や学校で子どもたちに語っています。子どもたちは静かに耳を傾けたり、目を輝かせて笑ったり、思い思いの表情でお話を楽しんでくれます。そんな姿に、私自身も幸せな気持ちになります。
語る前は「今日はどんな表情で聞いてくれるかな」と、私もドキドキわくわく。きっと昔々のおじいさんやおばあさんも、孫の顔を見ながら語ることを心から楽しみにしていたのでしょう。そうやって、昔話は語り継がれてきたのだと思います。

今だからこそ、大人の“生の声”で語りたい

読み聞かせ

現代はとても便利な時代です。スマートフォンやパソコンを使えば、いつでもどこでも情報が手に入ります。でも、そんな時代だからこそ、子どもたちにとって一番安心できるのは、そばにいる大人の“生の声”ではないでしょうか。大人が語る昔話を通して、子どもたちは「大切にされている」「愛されている」と感じることができるのだと思います。
たくさんの昔話が、今では昔話集におさめられ出版されています。夜寝る前のひとときに、親子で静かにともにお話を楽しむ時間のある暮らしを、ぜひ取り入れてみませんか?
そして、地域に伝わる大切なお話を、絶やすことなくこれからの子どもたちにもつなげていきたいものです。

「かっぱの尻子玉」が掲載されている本

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