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変わりゆく不登校のサポート

全国的に不登校の小・中学生が増えています。特にここ2〜3年は新型コロナ感染症の影響で、感染が怖くて学校に行けない、休校を機に行きにくくなってしまったという理由も重なり、増加傾向にあります。浜松市の令和3年度の不登校の小中学生は1,903人、前年度より約29%増と全国平均より少し多めです。昔とは社会の価値観も変わり、子どもを取り巻く環境が変化してきた現在、不登校はどの子にも起こり得ることだと言われています。

浜松市の不登校児童生徒数推移

「登校」という結果にこだわらない

子どもの「学校に行きたくない」という言葉は、親を一気に不安にさせます。休ませた方がいいかなと思っても、こんな事で休ませていいのだろうか?と考えてしまいます。また、自分の育て方がおかしかったのではないか?と親が自分を追い詰めてしまうこともあるでしょう。学校に行かせなくてはいけないという焦る思いは、時に子どもの状況や親子関係を悪化させ、大人への不信感なども増幅させてしまう場合があります。

2016年に施行された「教育機会確保法」では、不登校児童生徒の休養の必要性を認めています。これにより登校を強制されることはなくなり、親も先生も無理しないで「休んでもいいよ」と言えるようになりました。浜松市教育委員会に問い合わせてみると、現在は学校側も「登校」という結果だけにとらわれず、子どもの状況をみて登校が可能かどうか判断をするようにしているそうです。特に腹痛や発熱などの不調がある場合は、学校へ行くのが不安なサインであり、無理に登校せず、まずは近所の病院へかかることをおすすめしているそうです。医療機関を受診することによりからだの状態をチェックします。内科的な要因がなければ、心理的なものとなります。心理的な要因の場合は、ゆったりとした時間の流れの中で、子どもが安心して生活できる環境づくりが大切になるそうです。

学校以外の学びの場

しかし、学校を休み続けることは多くのリスクを抱えることになります。例えば、学校や地域とのつながりが希薄になり、親子ともに孤独になりかねません。また、進学や将来の不安が大きくのしかかってきます。

それを解消するヒントを探るべく、学校以外の学びの場で自分の居場所を見つけ、将来の夢へ向けて前進している2人を取材してきました。

フリースクール

フリースクール空

「不登校の時期、今思うと自分も幼かったなぁと思う」
こう振り返るのは、通信制の県立高校に在籍しながらフリースクールに通う19歳の山田竜士くん。小学生の頃から気持ちが不安定で、学校を休みがちでしたが、中学3年になった時、完全に学校に行けなくなってしまいました。居場所を求めフリースクールを見学し、雰囲気が気に入って浜松市南区楊子町にある「フリースクール空」に通うことにしました。

「ここは基本的に自由です。上下関係もないし、規則もありません。でも自由にすればするほど、みんなしっかりするんですよね」
代表の西村美佳孝(みかこ)さんは、子どもと対等な目線で、やりたい気持ちを尊重し、そこにとことん付き合いながら、仲間作り、社会的自立を目指しています。竜士くんにとっても西村さんは先生とも親とも違う、いつもグチを聞いてくれ、背中を押してくれる存在です。

竜士くんの転機は、通学のために乗り始めたバイクでした。せっかくなら憧れのハーレーダビッドソンに乗ってみたいと、続けて大型免許も取得。これにより行動範囲が広がり、いやなことがあった時はバイクを走らせて気分転換もできるようになりました。昨年は、バイクで日本一周するという偉業も達成!これまで見たことのない景色と旅先での出会いがさらに自分の世界を広げてくれました。その裏には、いつも後押ししてくれる西村さんと空の仲間の応援が。この趣味が高じ、将来はエンジニアになりたいという夢ができました。この春高校卒業後は、東京にある車の整備士専門学校へ進学することが決まっています。
「空に来てなかったらバイクにも乗っていなかった。この趣味を通じて自分の世界が広がり、たくさんの仲間に出会えて本当に良かった」 と話してくれました。将来へ希望に満ちたその表情がとても印象的でした。

【取材協力】フリースクール空

新しい不登校のサポート

キャプチャ
認定NPO法人カタリバ提供

「学校がこわいの」浜松市に住む小学5年生のこっちゃんは、聴覚が過敏で、学校の机をひきずる音や、大勢の子ども達のざわざわした音が苦手。先生や友達は大好きなのに、小学2年生から学校に通えなくなってしまいました。「学校には行かなくてもいいけど、学ぶことは大事だよ」とお母さんは伝えながら、長い時間をかけてこっちゃんが行きたいという居場所を探し続けました。

学び場の1つに選んだのは、オンラインの不登校支援プログラム「room-K」。今年度は経済産業省「未来の教室」の実証事業にも採択されている、支援プログラムです。みんなの集合場所は、ゲームのように1人ずつアバターで入室する仮想空間「メタバース」。ここでは、学校で行う総合の時間に似たプログラムもあります。例えばみんなで「ピザを作ろう」と森に行き、必要な材料を探して、キノコが必要だとわかれば、それについて詳しく調べたりして、疑似体験しながら学習していくのです。理科や家庭科の学習を横断的に学べ、みんなで協力して課題を解決していきます。これまであれこれ体験しても、長続きしないことが多かったこっちゃんですが、学び始めて約半年。居場所を見つけつつあります。

さらに、友達に誘われて行った乗馬クラブの体験をきっかけに、馬に魅了され、将来は調教師になりたいという夢をもちました。そのために「勉強したい」と思うようになり、遠のいていた学校にも週1日行けるようになりました。その他、適応指導教室へ週3日、room-Kに週1日と平日はオンラインと対面をうまく使いながら将来の夢のため、大学進学を視野に入れて勉強しているそうです。土日は調教師を目指し、乗馬クラブで馬の世話や障害競技に向けたレッスンを受けているそう。夢が決まったことで、今やるべきことが親子とも明確になり、落ち着いて学習できるようになりました。居場所は学校でもそれ以外でも、夢を持つことの大切さをこっちゃんが教えてくれているようでした。

不登校の子どもが利用できる施設・居場所・相談先

浜松市には学校の外に不登校生徒のための適応指導教室があり、学区に関係なくどこでも通級が可能です。
その他、民間のフリースクール、デモクラティックスクールやオルタナティブスクールといったコンセプトが明言されている施設やオンラインの学習支援、インターネット上の仮想空間を利用したメタバース登校なども出てきて、その特色もさまざまです。校長の判断で出席扱いになる場合もあり、学び方も多様化してきています。

施設・居場所
種別 概要
校外適応指導教室 浜松市内に9か所ある。(令和4年度)
フリースクール 好きなことを学ぶ、豊かな自然環境の中で過ごす、学校の勉強のサポートがあるなど、施設により様々な特徴がある。
居場所 子どもが安心して過ごすことのできる場所。親の居場所を提供するところもある。
オンライン オンライン会議ツールやメタバースなどを利用し、好きなことを学んだり講師や仲間と交流したりする。

相談先

取材を終えて

「学校も医療関係も友達も積極的に頼ってみると、素敵なアドバイスをくれるし、自分の選択肢も増えます。みんな子どもを健やかに成長させてくれるパートナーですね」とこっちゃんのお母さんが話していました。親が自分一人で抱え込まず、いろんな人にかかわってもらって、子どもを応援してくれる人たちをたくさん作ってあげることは、その後の子どもの人生も豊かにしていくことなのかもしれない、これは不登校に限らずいえることだと思います。
「どの子も自分にあった環境でこそ輝ける、安定した環境でこそ成長できる」2人の取材を通じて、改めてこのことを強く実感しました。

取材・執筆/三浦 貴子

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