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食事支援を超え地域の居場所へ ~浜松の子ども食堂~

食事支援を超え地域の居場所へ ~浜松の子ども食堂~

最近、ニュースなどで徐々に知られるようになった子ども食堂。全国的に増加する中、浜松市ではどのような活動が行われているのでしょうか。
そこで過ごす人たちにとってどんな場所となっているのか、現在浜松市内で運営されている子ども食堂やそのサポート体制について取材しました。

全国的な広がりを見せる子ども食堂

子ども食堂は、無料や安価で食事や温かな団らんを提供する食堂として一般的に知られています。始まりは2012年頃からと言われ、活動の広まりとともにその数は年々増えています。2016年は全国で319件でしたが、2020年には5,086件と4年間で約16倍になりました。
※2020年12月現在。「むすびえおよび全国の地域ネットワーク こども食堂全国箇所数調査」より

浜松市内でも、4年ほど前から市民の自主的な取り組みによる子ども食堂の活動が見られるようになり、全国の動きと同様にその数は増加傾向にあります。

世代を超えて人がつながる場として

浜松市内には、子どもたちに食事を提供するだけでなく、あらゆる世代の人がつながる場所として、地域に根付き始めている子ども食堂があります。そこで、地域密着の特色を持つ2つの子ども食堂を取材しました。

子どもの居場所えんあって 放課後子ども食堂

住宅街になじむ温かな”みんなのおうち”

子どもの居場所えんあって

浜松市中区にある「子どもの居場所えんあって 放課後子ども食堂」。毎月第一月曜日16:00~18:30に子ども食堂を開いています(要申込)。NPO法人えんあっては、地域に住む高齢者、障がい者、乳幼児、児童、子育て中の女性など、誰もが生き生きと暮らせる地域づくりを目指し、子ども食堂のほか、学習支援、地域に開かれた認知症カフェなどを運営しています。

理事長の福岡佳子さんは、1人で食事をとる子どもが増える中、「ここでみんなと食べる方が楽しいと子どもたちに感じてもらいたい」、「月に一度、ここでは家庭的な雰囲気を味わってもらいたい」という思いから、今から4年ほど前に子ども食堂をスタートさせました。

おいしい食事を囲めば話も弾む

おいしい食事を囲めば話も弾む

えんあって放課後子ども食堂には、毎月12~13名の子どもたちが集まります。運営を手伝うのは、ボランティアスタッフ5名と学習ボランティアです。16時頃子どもたちが集まり始めると、まずは学習ボランティアと一緒に学校の宿題を始めます。宿題が終わると食事となり、みんな揃って「いただきます」。将来教員を目指す高校3年生で学習ボランティアの鈴木さんは、「辛い時に来ると、自分が励ましているつもりでも、逆にみんなの笑顔に励まされる。一緒に自分も成長していきたい」と子ども食堂に関わる楽しさを話してくれました。

お誕生会

食材の提供は、主にボランティア団体や民間企業、社会福祉協議会などからです。提供された食材を元に、毎回工夫を凝らし、献立を立てます。子ども食堂に来る子どもたちには、事前にアンケートを実施し、アレルギーの有無など、できる限り個人に対応するよう心がけているそうです。時にはデザートの提供もあり、お誕生会をすることも。みんなのおうちのような穏やかな空気が流れる、子どもたちの居場所となっています。

様々な世代や文化とつながる「冬休み子どもの交流会」

冬休み子どもの交流会

冬休みのある日、えんあってでは幼児から中学生の15名が参加し、「冬休み子どもの交流会」としたイベントが行われました。
イベント参加者の中には、一昨年インドから家族で来日し、浜松市内にある大学の大学院に在学中の留学生親子もおり、子どもたちがお餅を一緒に食べながら異なる文化に触れる光景もありました。様々な活動を通して、多様な世代や文化を持つ人それぞれが、生き生きと過ごす姿が見られました。

子ども食堂 きらら

地域で育み、ともに育ちあう

子ども食堂きらら

浜松市南区にある地域の高齢者介護施設「きらら」。「子ども食堂きらら」は、ここで毎月第1土曜日9:00~14:00に子ども食堂を開いています(要申込)。運営するのは、孤立しがちな現代の子育て環境改善のための活動に20年前より取り組むNPO法人子育て支援の会。子ども食堂を始めたのは3年前です。「夕暮れ時にお母さんの帰りを待ちながら公園でひとりで遊ぶ子を見て、地域が子どもたちを見守り支えていけたらと思ったのがきっかけでした」と理事長の二橋桂子さん。子育て支援に関する様々な活動をする中、その必要性を感じたと言います。各世代のボランティアの中でも子ども食堂を支えるのは、団体の事業の一つ、中学生地域活動リーダー育成講座に参加する中学生ボランティアです。地域の居場所が、ともに育ちあう場となっています。

食事準備から遊びまで 一つひとつがコミュニケーション

食事の準備

子ども食堂きららは、毎回10~15名の子どもたちが集まり、10名ほどのボランティアスタッフと食事の準備をするところから始まります。提供される食材は、主に地域の農家からの差し入れや地元の方からの寄贈によるものです。

あらかじめメニューは決めておらず、開催日に提供された旬の食材を使い、みんなで食事を作ります。食後は一緒に片付け。片付けが終わったら、友だちや中学生ボランティアとのレクリエーションです。

みんなで食事

「ごはんを食べた後、向かいの神社で体の大きな中学生のお兄さんたちと鬼ごっこをするのが楽しい!」と、小学4年生の男の子。同年代の友だちと遊ぶのとはひと味違うダイナミックな遊びを楽しんでいるようでした。食事の準備から片付け、遊びまで一つひとつをコミュニケーションの場と捉えることで、和やかな雰囲気が自然と生まれています。

年末のお楽しみ~地域のボランティアさんと一緒に餅つき大会

餅つき大会

年末には、地元で収穫されたもち米をつく地域のボランティアの方たちとの餅つき大会が開催されました。この日参加したのは子ども18名と中学生から大人までのボランティアおよそ30名。お餅は子どもたちがつきたてを食べたほか、日頃お世話になっている地域の消防署や郵便局などに感謝の気持ちを書いた手紙とともに届けました。二橋理事長は「地域で子どもたちを見守っていくことで子どもたちは生きる力を蓄え、子どもたちと地域がともに育ち合うことで一人ひとりがそれぞれにあった役割を持ち、自信を持って地域社会を支える人となっていけるのでは、と思っています」と話していました。

浜松市社会福祉協議会が運営をサポート

浜松市では、子ども食堂をはじめとした「子どもの居場所づくり事業」に取り組む団体等を支援するコーディネーターを浜松市社会福祉協議会に配置しています。実際に子ども食堂の運営サポートにあたる地域支援課 浅山さんに、子ども食堂の事情について伺いました。

地域支援課浅山さん

浜松市社会福祉協議会では、運営者に対する支援(助成金の相談等)のほか、新規立ち上げ支援や企業・個人からの寄付受付相談窓口などあらゆる側面から子ども食堂を運営する団体をサポートしています。子ども食堂が、食事の提供だけでなく継続的に集いふれあう地域の居場所となり、さらに必要な人に必要な情報を届けることができる場となるよう、運営者、利用者、子ども食堂の趣旨に賛同してくださる企業・個人との橋渡しの役割も担っています。
コロナ禍において、協力したいという市民の方からの相談も日々増えています。食材等の寄贈はもちろん、ご自身の持っているものをどう転換し、社会貢献につなげるかなど、ボランティアの相談も受け付けています。
どの人も背伸びすることなく、無理せず共生していくことで子ども食堂が持続可能なものになっていくのではと考えています。

浜松市内の子ども食堂一覧
子ども食堂への寄付やボランティア参加、立ち上げに関する相談

取材を終えて

「人とつながり、温かなごはんを食べること」。このことで人は安心し、また明日も頑張ろうと思えるのだと、今回の取材を通してしみじみ感じました。信頼関係が成り立ち、自分らしくいられる場所が地域にあることは何ものにも代え難いものです。
新型コロナの影響で、日に日に状況が変わる毎日。私自身、どうしたらよいのだろうと戸惑うことも多いですが、迷いながらも行動し、進んでいく大人の姿から子どもは学んでいくのだと思っています。このような時だからこそ、ゆっくり落ち着いて自分を見つめ直し、今の私にできることはなにかを模索していきたいと思います。

取材・執筆/時田 祐子

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