子育てのヒント

すてきな三にんぐみ

2019年10月16日

黒いマントに黒い帽子、帽子の下から除く鋭い目。表紙を見ただけでは「どんな怖いお話が始まるのか」と子どもたちは身構えます。でもタイトルを読むとちょっと怪訝そうな顔をする子もいます。「『すてきな・・・』と絵が合ってないよう!」と言いたげに。お話が始まると、「ほら、やっぱり怖そう!」とふたたび身構える子どもたち。そして最後は満足満足という顔を見せてくれます。

すてきな三にんぐみ
すてきな三にんぐみ
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トミー=アンゲラー
偕成社
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これは、夜な夜な山をおりて獲物をねらう三人組のどろぼうのお話です。どろぼうたちは獲物を見つけるとまずこしょうを吹き付け、まさかりで馬車を真っ二つ、おしまいにラッパ銃を構えておどし、お金や宝物を奪い取ります。そうやって奪った金銀財宝が隠れ家のほらあなにどっさり。

ところがある日、襲った馬車にはお金も宝物もなく、いじわるなおばさんのところへやられるはずの小さな女の子ティファニーちゃんだけ。ティファニーちゃんは怖がるどころか、「何だかおもしろそう」と喜びます。

隠れ家に着いたティファニーちゃんは、どろぼうたちがかき集めた金銀財宝を見て、「どうするつもりなの?」と尋ねます。さあ、どろぼうたちは困りました。それまでかき集めるのに一生懸命で使い道など考えていなかったからです。

そこからお話は思わぬ展開を見せます。どろぼうたちは、ティファニーちゃんのようにさびしく、かなしく、くらい気持ちで暮らしている捨て子や孤児をどっさり集め、お城を買い取り、みんなで楽しく暮らすようになるのです。「盗んだお金で幸せになるなんていうお話を、子どもに読んでいいの?」などと固いことは言わないで楽しんでください。お話なのですから。

私は今いくつかの大学で子どもの本についての授業を受け持っていますが、学生たちに「子どものときに読んで、あるいは読んでもらって、好きだった絵本は?」と尋ねると、「ぐりとぐら」や「しろくまちゃんのほっとけーき」とともに必ず何人かがこの絵本をあげます。ところが面白いことに正確なタイトルを言える学生はほとんど無く、たいていの学生は「くろい3にんぐみ」と答えるのです。「絵」に強烈なインパクトがあるからでしょうね。

文/子どもと絵本ネットワーク ルピナス 代表 松本なお子さん

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