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子どもたちに日本の伝統食を伝える「ヤマコウ・加藤醤油」

子どもたちに日本の伝統食を伝える「ヤマコウ・加藤醤油」

昔ながらの手間暇かけた製法で、日本人の食卓に欠かせない醤油や味噌を製造している加藤醤油(浜松市中区)。従業員は5名、ほぼ家族経営という規模ながら、自社工房の見学や小学校での出張講座などを実施し、食の大切さを子どもたちに伝えています。地域の人から親しまれる店舗、そして伝統食を伝える活動は、どのようにして今の形となり、継続されているのでしょうか。その思いや深いこだわりについて取材しました。

醤油や味噌は、どうやってできるの?子どもたちの好奇心に応える

閑静な住宅街にある加藤醤油は、瓦屋根の落ち着いた建物に店舗と工房が併設されています。2010年に区画整理の移転に伴って建て直された社屋は、まだ新しいながらも懐かしい雰囲気が漂う造りです。製造中の醤油や味噌が置かれた工房は気軽に立ち入ってはいけないと思われがちですが、学校や団体などから希望があれば、可能な日程の中で工房見学を実施しています。普段見られない原材料や、製造工程を知ることができるチャンス。「手作りの醤油や味噌ってどうやってできあがるの?」と、興味がわきます。小学生親子3組と一緒に、醤油づくりの見学に訪れました。

醤油の材料って何?まずは素材を知る

醤油の材料って何?まずは素材を知る

見学は、まずは醤油の原材料についての説明からスタート。子どもたちにもわかりやすいよう、実物や写真を使ってのお話です。これまで「醤油の材料」についてなど考えたこともなかった子どもたちは、手に取って興味深げに眺めています。大豆・小麦・塩と身近なものばかりですが、どんなところから仕入れているかの説明には、素材へのこだわりがあふれています。例えば、袋井市の農家にある大豆畑の紹介や、醤油のしぼりカスを肥料として使っている農園の話は、生産者とのつながりを大切にしていることが感じられました。また過去には、社長自ら大豆を栽培することにも挑戦したことがあるそうです。

カビの力で甘くなる?! 舌で知る発酵の秘密

カビの力で甘くなる?! 舌で知る発酵の秘密

次に工房に移動し、実際の醤油づくりの過程を見学します。大きな木の桶の中を見せてもらうと、発酵中の醤油がたっぷり入っていました。大豆の粒が混ざったドロッとした形状は、まだまだ醤油には結びつかないのですが、これから時間をかけて発酵していくことでうまみが増し、搾られて醤油になる手作りの工程を知ることができました。

さらに、この日はちょうど味噌用の米麹を作っているところだったので、普段は締め切っている「麹むろ」(麹を育てるために使われる保温室)の中を見せてもらえました。「カビ」の力で発酵して甘くなるという話に、不思議そうな子どもたち。「食べてみていいよ」という社長の気さくな声掛けに、おそるおそるひとつまみ口に運ぶと「あれ?なんかごはんと味が違う!」「甘くてお米じゃないみたい!」と、その変化に驚いています。

カビの力で甘くなる?! 舌で知る発酵の秘密

身近な素材が変化し、おいしい調味料になっていくことを知った子どもたち。これからも「ふだん使われている調味料には何が入っているのかな?」と興味を持つきっかけになることでしょう。オープンな雰囲気の工房で、社長とコミュニケーションしながら醤油づくりのことを知った一日。親である私たちにとっても毎日の食を見直す一歩になりました。

地域を盛り上げたくて、新しい取り組みにもチャレンジ

地域を盛り上げたくて、新しい取り組みにもチャレンジ

加藤醤油では、自社での取り組みだけでなく、様々な企業や団体と連携した活動も行っています。そのひとつが、「しょうゆもの知り博士」という肩書きでの出張講座。これは日本醤油協会が運営するもので、小学生向けに「しょうゆマジック」という授業をします。浜松市内の他の醤油製造元と一緒に、醤油について、そして食生活や和食文化について伝える内容です。

また、商品開発の取り組みもユニークです。

頭陀せうゆ

昨年のNHK大河ドラマ「女城主 直虎」の放映時には、秀吉や家康とゆかりのある寺「頭陀寺」にて、「頭陀せうゆ」を限定販売しました。これは、虎岩さんとつながりがある瓶の製造業者との連携で生まれた、女性をイメージさせるハート型の瓶に入った限定品です。食へのアンテナが高い人に加え、歴史好き・雑貨好きの中でも話題になりました。
その他にも、市内の色々なお店が開催するミニ講座「まちゼミ」への参加など、地域を盛り上げるために力を惜しみません。

「子どもたちの喜ぶ姿に、こちらもパワーをもらえます」

四代目蔵主 虎岩博之さん

さて、こうした数々の活動は、どのような思いに支えられて続いているのでしょうか?
四代目蔵主 虎岩博之(とらいわひろゆき)さんに、お話を伺いました。

子育てを機に改めて学んだ「食の安全」

虎岩さんは3人の男の子の父親でもあります。子育てを経験する中で、子どもたちが本当に安心して食べられるものとは?と改めて考えるようになり、本格的に食のことを考え始め、添加物のことや環境のことなどについて学ぶようになりました。そして、「農家さんたちの顔が見える原材料を使って、我々も醤油の作り手の顔が見える製品を作りたい」という思いを持つようになりました。
また、味噌や醤油といった発酵調味料はとても繊細なもので、天候や温度などで微調整が必要になりますが、その手間こそが食の安心・安全を守ることにつながるという確信を持ちました。手間はかかっても、日本ならではの製法の良さと、それを守る作り手の存在を知ってもらい、製品に親しみを感じてもらいたい…その思いが強まりました。

地域の皆さんの要望に応えて始まった講座

地域の皆さんの要望に応えて始まった講座

工房見学や講座を実施するようになったきっかけは、まず地域の人々の要望があったからでした。「以前から付き合いのあるお客さんから『製造過程を見学したい』『味噌作りをしてみたい』などの希望があったんです。また、近隣の小学校の先生からも『子どもたちに味噌づくりをさせたい』というお話もありました」
そうした要望に応えて少しずつ実施し始めていた虎岩さん。その後、2010年の社屋の移転を機に見学や講座が実施できるスペースを設け、本格的に受け入れを始めました。
「子どもたちと一緒に味噌を仕込み、半年後に出来上がった味噌を届けるということを、年間の行事に組み込んでくれている小学校もあります。子どもたちには、実際に見て触ってたくさんのことを感じとってほしいという思いから、こうした体験の機会を作っています」

子どもたちとのつながりが嬉しくて

「とにかく、子どもたちはパワーがすごい。たくさんの子どもたちと過ごした後は、ぐったりとなることもあります(笑)。ですが、見学や体験だけでなく半年置いた味噌を届けることで、つながりが続くことが楽しみで。届けた味噌を喜んでくれる子どもたちを見ていると、こちらもパワーをもらえます。食べ物のことに興味を持ち、醤油や味噌をもっと好きになってくれたらと思っています」
工房見学や講座の実施は、普段の仕事ぶりや製品の良さが地域の人々に知られていたからこそ求められたのでしょう。その希望を受け、伝統的な醤油や味噌づくりの仕組みを惜しみなく伝えてくれる姿勢は、子どもたちの心にまっすぐ届いているようです。伝統食に長く携わりながらも、新しい取り組みにも目を向けている加藤醤油。浜松の子どもたちが、安全・安心、そしてなによりおいしいものを食べて育つよう、さまざまな形で食の大切さを伝えてくれています。

会社概要

有限会社 加藤醤油(ヤマコウ)

創業67年。手作りの製法にこだわり、醤油や味噌・花糀などを製造・販売。
安心・安全かつ、おいしさも定評がある調味料は、販売店や飲食店からも声がかかる人気商品。工房見学や出張講座を実施し、積極的に伝統食の大切さを広く伝えている。

有限会社 加藤醤油(ヤマコウ)
所在地:浜松市中区寺島町1125
TEL:053-452-5609
URL:https://www.katou-shouyu.co.jp/

取材を終えて

私自身も楽しみにしていた工房見学では、加藤醤油の調味料が昔ながらの自然の力を利用した製法で、そして本当にシンプルな素材で出来上がっていることを知りました。普段口にしている味噌が手作りでできるということにも子どもたちには驚きがあったようです。醤油の香りが漂う中、実際に材料や製造中の醤油を見て触って味わう体験は、子どもたちの関心を強く惹きつけていました。
できるだけ作り手の顔が見える原材料を使い、また自身も作り手としても多くの人と関わっていきたいという虎岩さんの思いは、日々の丁寧な製品づくりそのものを伝えることから始まっています。子どもたちの目線で醤油づくりを伝える虎岩さんと接し、工房に並んだ熟成中の製品を間近に見れば、子育て世代にファンが多いのも納得です。地元の老舗店が、積極的に日本食の良さや地元素材のおいしさを直接伝えてくれることは、まさに顔が見える人からの信頼できる情報です。親である私たちはもちろん、子どもたちも地元の味として親しみを持ち、浜松の魅力として広まっていくだろうと感じました。

取材・執筆/makiko

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