子育てのヒント

専門家の子育て1 加藤弘通さん

2009年2月28日

はじめまして。
静岡大学で心理学の教員をしている加藤弘通です。
心理学の立場から子育てについて、思うこと、考えたことを少し書かせてもらいたいと思います。
その前に少しだけ自己紹介させてください。
私の専門は、発達心理学というもので、発達上の諸問題についての研究と相談業務をやらせていただいています。
静岡大学に来るまでは、フリースクールや情緒障害児学級、幼児教育などに携わっていました。具体的にいうと、教室から飛び出してしまう、落ち着いて授業や活動に取り組めない、いわゆる気になる子どもの問題、不登校・ひきこもり、非行といった思春期の問題などを研究し、現場の方と一緒に対応を考えていくというような仕事をしてきました。今も似たような仕事をしています。

親子さて、そんな私が、昨年5月、念願の子どもを授かり、父親になりました。よく周囲の人からいわれるのは、「心理学者だと子どものことをよく分かっているからいいね」というようなことです。確かに以前は、保育者を養成する大学で教えていたので、多少、人より知っていることもあります。
じゃぁ、それで子育てもバッチリかというと、とんでもありません。
たとえば、6か月健診のときのこと、妻が子どもを連れて戻ってきて、「どうだった?」と私が聞くと、「特に問題はないけど、でも『おすわりはまだだね』だって」と。
頭では分かっているのです。6ヶ月でおすわりができるようになると言っても、その子によって1~2ヶ月ぐらいズレることがあるのは。
実は妻も心理職なので、彼女も分かっています。
だから「まぁそうは言っても・・・・、1~2ヶ月はざらにズレるからねぇ」、「そ、そうよね」と互いに励まし合うのですが、それでも保健師さんのいった「まだ」が気になります。
自宅に戻ると、妻はそそくさと専門書で、私はネットでこっそり「おすわり 6か月」なんてキーワードで検索をかけて、子どもの画像を見ては「おぉ、まだすわっとらん子もおるな!」、「うわっ、すわっとる!?」と一喜一憂している有様です。
そして、お互いにやっていることを話して、何気なく言われた「まだ」という言葉に自分たちがこんなにもとらわれてしまうなんて・・・・、専門家失格だね、と苦笑してしまいました。

私たちを含め、よく「マニュアルにとらわれすぎる」とか「育児書に振り回される」と、何かと批判されることが多い最近の親たちですが、みなさん安心して下さい!専門家もこんなものです(笑)。
頭で分かっていても、感情レベルではなかなか抑えられない、それこそが子どもを育てるということです。
これは育児を通しての個人的な見解ですが、「マニュアルにとらわれない」という新たなマニュアルにとらわれないためにも、「育児書に振り回されるな!」という言葉に振り回されないためにも、ときに大いに揺さぶられることも必要なのではないでしょうか。
大切なのは、そんなふうに揺れてしまう自分たちを許し、一緒に笑って、励ましてくれる環境です。
子育てに必要なのは、「揺さぶられるな」、「振り回されるな」という注意・警告だけではなく、「揺さぶられちゃうよね」、「振り回されちゃうよね」といった共感なんだよなぁとしみじみ思う今日この頃です。

加藤弘通さん

 

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