子育てのヒント

グリム童話「あかずきん」

2020年8月11日

「あかずきん」の決定版と言ってもいい絵本がようやく出ました!これまで多くの人が子どもたちに読んであげたいと思っても良い絵本がなくて困っていました。私が唯一おすすめできて、かつておはなし会でよく使っていた絵本は、1987年に福音館書店から出たペーパーバック絵本の「あかずきん」でしたが、長い間品切れ絶版になっていました。それがうれしいことにこの5月にハードカバーになって再販されました!しかも少し大型になって一層迫力を増して。

大塚勇三の簡潔な訳文は、読み手も聞き手も出だしからおはなしの世界へ引き込みます。けれどもなんといってもこの絵本の素晴らしさは堀内誠一の絵です。表紙のあかずきんは、白い肌にぱっちりした目の美少女です。この表紙だけで、あかずきんが「だれでも好きにならずにはいられないちいさなかわいい女の子」であることがよくわかります。そして頭にはおやくそくの赤い帽子つまり「あかずきん」がちゃんとのっています。堀内誠一は、背景や余分なものは極力排して、必要なことを思い切ってデフォルメしています。ですから「絵」がとてもよくストーリーを語っていてわかりやすいのです。

ストーリーは、知らない人はいないと言っていいくらい有名ですね。ある日、あかずきんはおかあさんに頼まれておばあさんのお見舞いに出かけます。途中、おおかみに出会ったあかずきんは、おおかみの口車に乗せられてわき道にそれ、お花摘みに夢中になります。その隙におおかみは先回りしておばあさんの家に行き、おばあさんを食べてしまうと、おばあさんの着物を着ておばあさんのずきんをかぶってベッドにもぐりこみ、あかずきんがやってくるのを待ちます。

次の展開が、お話のなかでも最も有名で子どもたちが最も緊張する場面、おばあさんに化けたおおかみとあかずきんのやりとりです。
「まあ、おばあさんのみみ、なんておおきいの!」
「おまえのいうことが、よくきこえるようにさ」
「「まあ、おばあさんのめ、なんておおきいの!」
「おまえが、よくみえるようにさ」

文章のとおりの、おおかみの大きな耳、大きな目、爪のとがった大きな手、そして赤い舌と白い牙をのぞかせている大きな口が迫力満点です。

「おまえをうまくくえるようにさ」とおおかみがあかずきんにとびかかる場面では、ピクッとからだを震わせる子もいます。それでもこどもたちはこのお話が大好きです。だって昔話の主人公は必ず幸福な結末を迎えることを知っているからです。

絵は遠目が効きますから、大勢への読み聞かせにぴったりです。「おおかみと七ひきのこやぎ」(ホフマン絵・瀬田貞二訳/福音館書店)の次に出会わせてあげたいグリム童話の絵本です。

ちなみに、なぜ「おおかみと七ひきのこやぎ」が先かと言えば、こちらは家にいておおかみに襲われ、助けてくれるのはお母さんやぎです。あかずきんは一人でお使いに行っておおかみに襲われ、助けてくれるのは猟師のおじさんです。つまりあかずきんの方が行動範囲も人間関係も広いため、主人公に共感できて楽しめるのは少し上の年齢なのです。

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