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東日本大震災から9年 何が変わったのか ~女性・子どもの視点による災害対応と備え~

東日本大震災では、女性の視点、子育てや介護の視点が災害時の対応と備えになかったため、被害が拡大してしまいました。避難生活のプライバシーや衛生の問題、乳幼児・障がい者・認知症の人など集団生活が難しい人と家族の困難、育児・介護用品や女性用品の不足、災害時の性暴力。その根本には、地域の共助・支援活動・復興協議の場などの責任者や委員の大半が男性で、女性・若者・障がい者などの意思が反映されにくいという問題がありました。東日本大震災以降も、日本各地で地震や水害が続いています。これらの問題は改善したのでしょうか。

男女共同参画の視点による災害対応や備えで何をすればよいのか。防災の計画や指針類に明記する自治体は徐々に増えています。東日本大震災前の2008年と後の2017年に、全国の市町村を対象に行われた2つの調査を比較すると進歩がよくわかります。避難所が開設されたら授乳室や更衣室を設けると定めている市町村は約5%から約50%へ、避難所運営に女性の参画を推進すると定めている市町村は約3%から34%へと増えました。生理用品、乳幼児用オムツ、サイズを考慮した高齢者用オムツを常時備蓄している市町村も、17-18%から約50%へと増えました。しかし、裏を返せば、まだ多くの市町村でこれらの備えがありません。一般的に大都市で対策が進み、小規模で過疎化が進んだ自治体では遅れる傾向にあります。実際の災害の現場でも、避難所の生活環境の整備や物資の配布が女性や子育て家庭の視点で行われるようになってきました。特に、災害時の性暴力への対策は、東日本大震災以前は皆無に等しかったものが、災害時の対応に組み込まれるようになりつつあるという意味で、大きく前進しました。

2017 年度女性・地域住民から見た防災・災害リスク削減策に関する調査報告

大沢真理編、2019、「2017 年度女性・地域住民から見た防災・災害リスク削減策に関する調査報告」、『防災・減災と男女共同参画』東京大学社会科学研究所研究シリーズNo.66(https://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/publishments/issrs/issrs/index.html)から作成。

従来から、行政の危機管理部署でも、災害地域の共助を担う自主防災組織でも、役職に女性は少なく女性の視点が反映されやすい体制にはなってはいません。重要な決定を行う役職は、自営業や退職した世代の男性が多くを占めています。この点は、あまり改善がありません。一方、ここ数年、防災活動をしたいと思う女性、実際に活動を開始する女性が確実に増えました。各地の女性防災リーダー養成研修には多くの女性が集まります。行政と共同し、町内会にも声をかけて女性の視点で避難所開設訓練を実施した女性グループ。あまり例がない女性自主防災会のメンバーが女性防災倉庫を設置した地区。避難所の宿泊訓練にママ友を誘って子連れで参加した女性は、防災学習グループを立ち上げました。このような事例は、静岡県だけではなく多くの都道府県から聞かれています。活動を始めた女性たちが地域の自主防災活動の中でリーダーシップを発揮できるよう支援する仕組みが必要でしょう。災害対応や防災に男女共同参画・多様性配慮の視点が必要だという認識は高まっています。それが地域の隅々まで行きわたるには時間が必要ですが、「必要ない」とは言えない状況は生まれてきています。

今後は、避難生活の環境や物資、安全だけではなく、より長期的で幅広い災害対応、例えば生活再建、住居、地域復興、子育て・介護などの施策にも男女共同参画の視点を入れていく必要があります。また、女性の中の多様性、つまり障がいを持つ女性、外国人の女性など、性別以外の要素と性別が交わることによる被災時の困難については、まだまだです。セクシャルマイノリティの視点についても同様です。これらへの取り組みが、これから必要となるでしょう。

池田 恵子(静岡大学・教員)

私は忘れない311

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