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はんぶんちょうだい
今年の夏は終わりが来るのかしら?と心配になってしまうほど暑い暑い夏でしたね。そこで、暑い夏を乗り切った動物たちのゆかいなお話です。少し長いお話ですが、暑い日に読んであげるのにぴったりの絵本です。
「あついね。」「ああ、あついね。」
「うみへいきたいね。」「ああ、うみへいきたいね。」
うさぎとさるはスイカをひとつ釣り竿にぶらさげて、山を三つ越えて、海へでかけました。海に着くと、うさぎとさるはさっそくスイカを半分に切って釣り竿に付け、海に投げ込んで、さかなが釣れるのを待ちます。
「スイカで釣るんだって。」子どもたちのくすくす声が聞こえる場面です。もう、ここで子どもたちの心をつかみます。
やがて、大きな大きなさかな(らしきもの)がかかります。うさぎとさるは助けを呼びます。
「だれか、てつだってよう! つれたらはんぶんあげるよう。」
すると、からすやねずみ、りす、はてはくまやおおかみまでやってきて、
「ほんとにはんぶんくれる?」「てつだうからはんぶんちょうだい」
と言いながら、みなで釣り竿を引っ張ります。
うさぎとさるが言います。
「あげる。あげる。はんぶんあげる。」
「えーっ!そんなこと約束して大丈夫?」「みんなに『半分』はあげられないよー。」
そう、小さい子でもそれくらいはわかりますよね。子どもたちが心配そうに顔を見合わせる場面です。
さて、どうぶつたちかけ声をあわせて引っ張ると、波がいっせいに立ち上がり、なにやら大きな大きなものがつれてどうぶつたちに覆い被さりました。動物たちは口々に、
「はんぶんちょうだい。やくそくだからね。」
と言います。やまねことおおかみにいたっては
「それならいいや。ぼくは、うさぎをはんぶんもらう。」
「それならいいや。ぼくはさるをはんぶんもらう。」
と迫ります。うさぎとさるの絶体絶命のピンチ。子どもたちに緊張が走ります。
ところが、何と釣れたのは、「うみ」でした。この展開もびっくり。そしてひと安心ですが、もう一つおまけの展開が待っています。なんと、動物たちは海をじゅうたんのようにぐるぐる巻きにして、山へ持ち帰るのです。
かくして、山の動物たちは、暑い日には「山の海」で存分に泳ぐことができるようになった、というお話。めでたし、めでたし。
人を食ったような奇想天外なストーリーですが、それを納得させてしまうのが長新太の絵です。赤、青、ピンク、緑といった何ともエネルギッシュで大胆な色使いが夏の暑さを際立たせます。ユーモラスであいらしいフォルムのどうぶつたちもお話とぴったり合って、長新太ファンには見逃せない1冊です。