子連れでおでかけ
子育てのヒント
特集記事
子育てのヒントを検索
災害時、子育て世代はなぜ避難所に行けないのか~「行かない」のではなく「行けない」現実~
近年、毎年のように災害が発生しています。そのたびに「避難所へ行くのが安全」と考えられがちですが、乳幼児を抱える家庭にとっては簡単なことではありません。子どもの泣き声に対して周囲から非難を受けたり、授乳やおむつ替えに気を遣ったり、感染症への不安を抱えたりと、「避難所に行かない」のではなく「行けない」家庭が多く存在します。その結果、車中泊や自宅での避難を選ぶ親たちが少なくないのです。
しかし、車中泊には見えないリスクが潜んでいます。長時間同じ姿勢で過ごすことで血栓ができる「エコノミークラス症候群」、エンジンをかけたまま就寝することによる一酸化炭素中毒、夏の熱中症や冬の寒さ、衛生環境の悪化など、命に関わる危険が多くあります。さらに、避難所と異なり、支援物資や情報が届きにくく、孤立してしまうケースも少なくありません。

それでも多くの親が車中泊を選ぶのは、避難所が子ども連れに優しい環境になっていないからです。「夜泣きで周囲に迷惑をかけた」「授乳スペースがない」「静かに過ごせる場所がない」といった声が多く聞かれます。避難所は“安全”であっても、“安心”できる場所ではないのです。
今、求められているのは、「避難所に行けない人」を責めるのではなく、どうすれば行けるようにできるかを社会全体で考えることです。乳幼児専用スペースの設置や、授乳・おむつ替えができる環境を備えた「親子避難所」の整備、車中泊避難者への支援など、行政と地域が協力して取り組む仕組みづくりが必要です。
子育て家庭にとって、避難の形は家庭ごとに違って構いません。大切なのは、「子どもを守るためにどんな選択をするか」を事前に家族で話し合っておくこと。どんな状況でも“命を守る行動”ができるよう、日頃から備えていきたいものです。
文/浜松市防災学習センター 副センター長 原田



