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辰巳なお子さん(浜松市立中央図書館 館長)
私が子どもの本に興味を持ったのは偶然でした。1年目も終わるころ、児童室担当の職員が産休に入ったため、半日だけ代理で児童室を任せられたことがきっかけでした。小さい時から本が大好きで、小学校、中学と学校の図書室にある本は片っ端から読んだつもりでした。当時は、本なんてなかなか買ってもらえませんから、本があれば、親戚でも、ご近所のうちでも上がり込んで読ませてもらいました。今思えば、あつかましい子どもだとさぞ迷惑がられていたことでしょう。
ところが、市立図書館の児童室に来てみたら、私の知らない本が沢山あったのです。毎日借りて帰っては読むということがしばらく続きました。ポターやエッツ、バートンらの絵本、ルイス、トールキン、ペイトン、サトクリフらの壮大な物語など、面白くて面白くて夢中で読み続けるうちに、無性に腹がたってきたのです。「大人になった今読んでもこんなに面白いのだから、子ども時代にこれらを読んだらどんなに面白かっただろう。でも、世の中にこんなに面白い本がたくさんあることを子どものときにだれも教えてくれなかった」本当に悔しくてなりませんでした。その時、はっと気がついたのです。もしかしたら、今も、知らずに子ども時代を通り過ぎてしまっている子どもがたくさんいるかもしれないと。今の子どもたちは、毎日沢山の情報やものに囲まれているけれど、子どもたちに本当に必要なものは、ちゃんと届いているのだろうか?私のような悔しい思いをさせたくないと心底思い、これが私の子どもの本に携わる原点になりました。
子どもの本の世界に足を踏み込んだことで、思いがけずいろいろな出会いがありました。東京、大阪をはじめ全国の魅力的な図書館員と知り合うことができ、意見や情報を交換できました。、図書館員だけでなく、作家や出版関係者、研究者などいろいろな分野の素敵な方々と知り合うこともできました。なかでも「家庭文庫」といって、自宅の玄関先などに子どもの本を置いて近所の子どもたちに貸し出している方と知り合ったことで、この世界の面白さと奥深さを知り、ますます抜け出せなくなりました。
今は、子どもたちと直に接することができるのは、たまにやらせてもらうおはなし会や、ボランティアで昔話を語りに行くときくらいですが、気持ちはずっと同じです。「子どもたちに、はらはら、どきどき、わくわくする本をいっぱい届けてあげたい!」
2005年3月21日
※2006年4月より浜松市立中央図書館の館長に就任されました。(ぴっぴ)