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ぞうのせなか
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背中、という言葉には、親だったり、先輩だったり、師匠だったり、先生だったり、とにかく、人生の前を歩き、その道を示す、というイメージがある。背中の前には、もっと先を歩く背中があり、その前にも背中がある。
「ぞうのせなか」には、そんなことが書かれている。
お父さん象が、最初、何も言わずに、ただ息子ポッポの好奇心だけを刺激し、水のありか、食べ物のありか、危険なところ、一人ぼっちで立ち向かう勇気を教えていく。
そして、満月の次の日、群から離れ、お父さんは一頭だけで死に場所に向かっていった。
「いつもそばにいるよ」という父の言葉を抱いて、独り立ちしていく息子のポッポもまた、お父さんと同じように、父親になっていく。
著者は、ヒットメーカーの秋元康さん。
秋元さんは、あとがきに書いている。
「象は、自分の死期を悟ると、群から離れ、一頭だけで死に場所に向かう」潔い話だが、それが、秋元さんにはできないという。一人の父親として、話しておきたいことがたくさんある、というのだ。でも、本の内容から、秋元さんはきっと潔い人だと思った。
動物は、いろいろなことを経験で学ぶ。
誰も教えてくれなくても知っていることもあれば、
親の背中を見て覚えることもある。
一人で生きていく日のために。
守るものができた日のために。
この本を読んでいたら、背中を見せるのは、あなたのことが大好きだからだよ、という、これまで私に背中を見せてきてくれた人たちからのメッセージが伝わってきた。
読んでいる大人も、聞いている子どもも、優しい気持ちになれる一冊です。
文/池川恵子さん