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チムとゆうかんなせんちょうさん

前回の「こんにちは」(渡辺茂男文 大友康夫絵 福音館書店)の紹介で、子どもが一人で外へ出ていこうとするとき、その意欲と安心を支えてくれるのは、実は親の愛情が決めてなんですよとお話ししました。この絵本も同じです。

チムとゆうかんなせんちょうさん―チムシリーズ〈1〉 (世界傑作絵本シリーズ―イギリスの絵本)
エドワード アーディゾーニ
福音館書店
売り上げランキング: 86,454


船乗りにあこがれる主人公のチムは、くまくんよりずっと大きな子です。でも親にとっては、まだまだ抱きしめてやりたい年代です。船乗りになりたいチムに、おとうさんとおかあさんは、おまえはまだまだ小さいから無理と言います。でもチムの船乗りへのあこがれは募るばかりです。
ある日、チムは、外国船に密航し、無銭乗船の代わりに船内で相応の労働をし、あげくの果てに船が難破して、船長と一緒にあわや海の藻屑となりそうになります。でも、最後は大丈夫、この上なく幸福でしかも誇らしい結末が待っています。

子どもは、いつか大きくなって親から離れて世の中へ出ていかなければなりません。まずは、幼稚園へ、そして小学校へ行かなければなりません。子どもにとって、たとえ半日でも親から離れて一人で世の中へ出るのは大冒険なのです。その冒険を支えてくれるのは、これまでたっぷり注いでもらった愛情です。何かあったらいつでも帰れるところ、受け止めて抱きしめてくれるところ、絶対安全なところがある、だから安心して冒険の旅に出ることができるのです。
親は心配? でも大丈夫、チムを見てください。彼はちゃんと自分のやるべきことをやります。そして周囲の大人たちと、とても良い関係を築くのです。この絵本の魅力はチムと関わる大人たちです。チムの船乗りへのあこがれを増幅させてくれたおじさん、船の乗組員、そして船長。どの大人も、チムをちゃんと一人前に扱い、チムに相応の課題を課し、チムが課題をこなせばちゃんと認めてほめてくれます。なんて素敵な人たちでしょう!なかでも、船長は、チムのあこがれを裏切らない立派な船乗り(大人)を体現しています。

この絵本は、少し絵本を読み慣れた5、6歳児に大人気です。もちろん、現実には、この年齢の子どもが一人で大冒険の旅に出ることはありません。でも、子どもはいつか成長して世の中へ出ていかなければならないのです。この絵本は、そんな子どもの心の奥深くに、世の中へ出行く勇気を少しずつ育ててくれるのです。
「もう親の出番はないの?」などと悲観しないでください。チムが冒険の旅へ出かけ、大人たちとこのような関係を築けたのは、両親からたっぷりと受け取った愛情があるからなのです。それがチムの心の奥深くに、大人への信頼感、人への信頼感をきちんと育てていたから、チムは冒険を乗り切ることができたのです。さあ、今の時間を大切に、たっぷりとお子さんに愛を注いであげましょう!

文/子どもと絵本ネットワークルピナス代表 松本なお子さん

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