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ペレのあたらしいふく
およそ100年前にスゥエーデンで作られた絵本ですが、今の子どのたちにこそ読んであげたい絵本を紹介します。
主人公のペレは小さな男の子です。自分の子羊を一匹持っていて、自分で世話しています。上着が小さくなってしまったペレは、ある日、子羊の毛を自分で刈り取り、それで上着を作ることにします。
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絵本は、ペレが、刈り取った毛をすき、糸に紡ぎ、糸を染め、布に織り上げ、そして上着に仕立て上がるまでを、淡々と語っていきます。今では、布どころか、仕立て上がった服しか見たことのない子どもたちは、興味深々で絵本に見入ります。でも、子どもたちが魅かれるのは、上着が仕立て上がるまでの過程ではありません。ペレの見事な「社会性」(?)なのです。ペレは、自分でできることは自分でやります。自分のできないことは、身近な大人の助力を求めます。毛をすくのはおばあちゃんに、糸を紡ぐのはもう一人のおばあちゃんに、糸を染めるのは近所のペンキ屋さんに、といった具合に、頼む相手を見事に選びます。大人たちも、ただペレに頼まれたことをしてあげるのではなく、交換条件に、ペレが少し頑張ればできる仕事を課します。ニンジン畑の草取りや、牛の世話や、舟をこいで雑貨屋へ買い物に行く、というふうに。
ペレが頼む仕事の難度が上がるにつれ、ペレが果たす仕事もだんだん大変になってきます。でも、ペレはちゃんとやり遂げます。そして大人たちもきちんと約束を果たします。
最後の場面では、「あたらしいふく」を着た誇らしげなペレが描かれ、その後ろで、支えてくれた大人たちが、ペレをやさしく見つめます。聞いている子どもたちも満足げな表情を見せます。きっとペレと一緒に、達成感を味わっているのでしょう。
この絵本には、ペレという小さな男の子の賢さ、たくましさはもちろんですが、ペレを取り巻く人間関係が描かれています。かつてはどんな子どもも、この絵本に描かれているような豊かな人間関係のなかで、見守られ、支えられて、育って行ったのですね!
今の子どもたちは、実体験が不足しているといわれますが、子どもに関わる大人の存在も圧倒的に不足しています。絵本を読んでもらっているとき、子どもはお話のなかに入り込み、主人公に同化して、出来事を主人公と一緒に「体験」します。実体験の少ない今の子どもにこそ読んであげてください。年長さんから小学校低学年におすすめです。