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昔話に学ぶ子育ての知恵(3)~「三年寝太郎」から学ぶ子育てへのメッセージ~

昔話に学ぶ子育ての知恵

「三年寝太郎」のお話

「三年寝太郎」のお話はご存知でしょうか?
こんなお話です。

ある村に一人の若者がいた。ちっとも働かないで寝てばかりいるものだから、みんなからばかにされて、あいつは役立たずだ、寝太郎だと言ってあだ名でよばれ、何年も過ぎた。
ある日のこと、むっくり起き上がって、街へ出かけて行った。そして、鳩と提灯を買って帰ってきた。夜になるとその鳩と提灯を持って、隣の長者の家の松の木によじ登り、大声で叫んだ。「長者よ、よく聞け。我こそは鎮守の森の神様だ。今夜は、お前のうちの家運を予言しに来た」 長者は夜中に大きな声が聞こえたので、何事かと思って、縁側に出てみたら、真っ暗闇で声だけ聞こえた。「お前の一人娘に、隣の寝太郎を婿に取らなければ、お前の家の家運はたちまち傾くであろう。よいか、わかったか。では、余は鎮守の森に帰るぞ」と言って、寝太郎は提灯に火をつけ、鳩の脚に結び付けて、パッと放した。「では帰るぞ」と言ったとたんに、火がシューっと鎮守の森の方に飛んで行ったので、長者はすっかり信じてしまった。
翌朝起きると一番に寝太郎のところへ行き、寝ていた寝太郎を、たたき起こした。「鎮守の神様のご命令だ、ぜひうちの一人娘の婿になってくれ」ということで、寝太郎が長者の婿になった。

若者は一生寝ているわけではない。若者は途中で起きる、起きたらちゃんとやる。

この寝太郎は、真面目に考えると人をだました悪い男です。
けれども話の筋だけを抜き出してみると、「寝太郎は若い時には寝てばかりいたけれど、ある時期が来たら起きて知恵を出して幸せを獲得した。」となります。
私も若いころにはそうだったと思います。学校は行くものだから何となく行ったけれど、授業中は居眠りばかりしていました。当時の親友が私の姿を見て「大丈夫?ノートちゃんと取れてる?」と声をかけてくれたことを思い出します。ところがそんな私も卒業して社会に出るとちゃんと起きて、自分でいろいろ考え、知恵を出して、自分なりに幸せを獲得しようと今まで一生懸命生きてきたわけです。

子どもの「寝ている時期」を信じる

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今、私は大学で多くの学生達を見ています。寝太郎だけでなく眠り姫もいます。でも社会に出て2年3年して訪ねてくれる時には立派に成長しています。その姿を見ると本当にうれしくなります。若い時には寝ていて何もしていないようだけれど、実は心の中で「これからどのように生きていこうか」「自分の将来はどうなるのだろうか」といろいろなことを一生懸命考え、感じているのだと思います。
この「内なる成長」を信じて、焦らず見守ることが大切です。無理に起こそうとせず、目覚めるときを待つ姿勢が、親に求められるものではないでしょうか?

親の期待がプレッシャーにならないように…

このブログを読んでくださっている方は、もうすでに目覚めた人ですね。人間というのは面白いもので、自分が起きてしまうと、自分がかつて寝ていたことを忘れてしまうものです。親が期待をかけすぎると、それがプレッシャーになることがあります。子どもはその期待に応えようと頑張りますが、疲れてしまい、また「寝てしまう」わけです。
私は、すました顔をして我が子には「寝てばかりいないで、しっかりやりなさい」などと平気で言っていました。親になったら忘れます、私はそれをしっかり自覚しています。皆さんはいかがでしょうか? 
我が子もかなりな寝太郎でしたが普通の社会人になりました。そこが一番大事な事なのではないかと思います。学校時代の成績や一時的な成果よりも、社会に出て、自立し、生きていく力が育つことが最も大切です。

知恵を育てるために必要なこと

昔話研究者の小澤俊夫氏は「昔話『三年寝太郎』には『強く生きろ』という大切なメッセージがある」と述べています。「悪知恵」の悪を()に入れると「知恵」となります。大切なことは「知恵」を持って強く生きるという事だと捉えます。
我が子が眠りから目覚めたとき、知恵を使って強く生きる力を育てられただろうかと自問しました。親心から、ついプレッシャーをかけたことも反省しています。でも今は、普通の社会人に育ってくれた事に感謝しています。
子どもは「寝ている」時期に見えないところで多くの事を感じ、考えています。焦らず温かく見守りましょう。子どもが目覚めるときを信じて待つことが親にできる大切なサポートかもしれません。

「三年寝太郎」の話が掲載されている本

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