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昔話に学ぶ子育ての知恵(5)~「北風と太陽」から学ぶ子育てへのメッセージ~
イソップ物語の「北風と太陽」は、厳密には昔話ではありません。古代ギリシャのアイソーポス(イソップ)という人物が人々に語ったとされる寓話です。この点はお許しいただいて、今回は「北風と太陽」が子育てに与えるヒントについてお話ししたいと思います。
この物語に触れるたび、私はあるお母様の言葉と、自分自身の子育てを振り返ったエピソードを思い出します。
保育士として働いていた頃、担任をしていたクラスのお母様がこんな話をしてくれました。
「『北風と太陽』の話を読んで反省しました。私は北風のお母さんだったんです。子どもにあれこれ口うるさく言ってばかりで・・・。でも、太陽のようなお母さんになりたいと思いました。」
その言葉に深く共感すると同時に、私もまた「北風の母親」だったと気づきました。
子どもを思うあまり、「こうしなさい」「ああしなさい」と指示ばかりしてしまう母親でした。息子が小学校6年生のとき、「今まで続けてきた活動をやめてスポーツ少年団に入りたい」と言ったときも、私は「もう少し頑張って続けたら?」と言ってしまいました。「自分が始めたことは最後までやり遂げてほしい」という思いがあったからです。しかし、当時の息子の気持ちにどれだけ寄り添えていたでしょうか。息子の心を聞き、理解しようとする姿勢が欠けていたと感じます。
振り返れば、子どもが幼い頃は「北風」のやり方でもうまくいっていたように思います。けれども、子どもの成長とともに、力ずくで行動を変えようとしても思い通りにならなくなりました。そのとき、ふと「北風と太陽」の話を思い出し、「太陽のように温かく包み込む大切さ」に気づかされました。見守り、子どもの意志を尊重する姿勢が、たとえ時間はかかっても、子ども自身が自分の道を切り開く力になるのだと実感しました。
それ以来、「北風の母」から卒業し、「太陽の母」を目指すように心がけています。簡単なことではありませんが、子どもに寄り添い、話を聞き、その気持ちを尊重することを大切にしています。その変化が、親子の関係をより良いものにしてくれたと感じています。
「北風と太陽」の物語が教えてくれるのは、相手の心を動かすのは力ではなく、温かさと信じる心だということではないでしょうか。この教訓を胸に、これからも子どもや若者たちと向き合いながら日々を過ごしていきたいと思います。