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『アンダーグラウンド』

災害にはいろいろな種類があります。地震・津波、火災、風水害、土砂災害、火山噴火などの自然災害の他にも、事件・事故、テロなどの人為的災害もあります。
この本は、小説家である村上春樹氏が、1995年(平成7年)3月20日に東京の地下鉄サリン事件に巻き込まれた62人から聞き取った証言がまとめられているものです。

1995年1月17日に、阪神淡路大震災が起こりました。その約2か月後に地下鉄サリン事件が起こったのです。著者はこれを書くにあたり、まず証言をしてくれる人を探し、インタビューをします。中には「もう辛くて忘れたいから、これ以上話したくない」という人も多数いた一方、「これを風化させてはいけない」ということで、証言してくれる人もいたようです。その証言を著者は、できるだけその人のことばのままの形でまとめたといっています。これらの証言から、災害発生時に当事者がどのように受け止め、どのように考え行動したかということが、とてもよくわかります。その時に死がすぐ隣にある緊迫感、自分自身も具合が悪いような気がしているにもかかわらず、もっと苦しそうにしている人を助けようと必死になっている様子など、その場にいた人が証言しなければ、また、それをインタビュイーの言葉のままに伝えなければわからない事実です。

災害時に人は、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまうという特性で「正常性バイアス」というものがあります。災害発生時、自分自身が被災者となっているのにもかかわらず、「たいしたことないのではないか」とか、「まさか、そんなに大変なことにはならないだろう」という意識が働き、避難行動をとるのが遅くなってしまうことがあるそうです。この中の証言にも出て来ますが、自分も周囲も混乱していて何が起こっているかがわからず、自分はただの体調不良だと思っていたり、鼻水が異常に出るということがなぜかもわからない状態だったりしたようです。「普段と違っておかしいな」と気づいたら、危険がないかを冷静に判断したいものです。

さらにこの本には、この事件に巻き込まれた人たちのその後の生活も書かれています。サリンによる後遺症でこれまでと同じように仕事や生活ができなくなったり、ひとりで外出することや地下鉄に乗ることの恐怖などを感じるPTSDなどを抱えたりして過ごす様子にも触れられています。
災害に遭うということは、すぐに元の生活に戻ることが困難になる場合もあるのです。災害の当事者の証言から、今後に備えることができるなら、行動を起こしていこうと、このような本を読むと思うのです。

(わかば)

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