浜松の子育て支援レポート

「保育園選び」の新しい選択肢 地域型保育事業のことが知りたい!

2015年11月24日

佐鳴保育園4

「すべての子どもたちが、笑顔で成長していくために。すべての家庭が安心して子育てでき、育てる喜びを感じられるために」との政府の方針により、平成27年度からスタートした「子ども・子育て支援新制度」。その制度のうちの1つが“地域型保育事業”です。
でも、“地域型保育事業”と聞いただけでは耳慣れず、内容までは伝わってきません。どんな特徴や魅力があるかを知るために、すでに浜松で“地域型保育事業”を実施している2つの保育園を取材しました。

「地域型保育事業」ってなんだろう?

「地域型保育事業」は待機児童の約9割を占める0~2歳児の保育ニーズに応えるために設けられました。
浜松市では平成27年度から「小規模保育事業」と「事業所内保育事業」の2種類の地域型保育事業が始まっています。どちらも浜松市から認可を受けた保育施設です。
大きな特徴は次の三つです。

  • 保育の対象は0~2歳児
  • 3歳以降は連携園などに転園が必要
  • 認可保育施設であり、利用申し込みや保育料は認可を受けた保育園や認定こども園と同じ

小規模保育事業と事業所内保育事業 それぞれの特徴

小規模保育事業事業所内保育事業
小規模という名前通り、定員は6人以上19人以下。家庭に近い雰囲気で少人数の子どもを受け入れています。 病院などの事業所が営む保育施設ですが「地域枠」があり、従業員の子ども以外の一般の子どもを一緒に保育しています。

現在浜松市内では、小規模保育事業が7園、事業所内保育事業が4園実施されています。

「地域型保育事業」の保育園見学レポート

保護者としては、制度や規模のこと以上に、実際の保育園の様子のことが気になりますね。そこで、今年度より地域型保育事業としてスタートした「佐鳴保育園」と「十全双葉保育園」を訪問しました。

~小規模保育施設 佐鳴保育園~

地域の人と関わりながらのびのび過ごせる家庭的な雰囲気

佐鳴保育園1

浜松市西区にある佐鳴保育園は、入口に幼い子たちが遊びやすいお庭があり、一軒のおうちのように温かな雰囲気が感じられます。園児の数は16人。その内訳 は、0歳児4人、1歳児4人、2歳児8人です。それに対して先生は8人、常時5人の先生方が保育にあたる体制となっています。

「こんにちはー」とドアを開けると、子どもたちが目をキラキラと輝かせ、大きな声で「こんにちはー」と答えてくれました。家庭的な雰囲気の中、温かな眼差しの先生方に見守られ、日々、穏やかに過ごしている様子が子どもたちのあいさつからも伺えます。


佐鳴保育園2

年齢別に分かれたクラスではなく、「今日は少し肌寒いから0歳児さんはお部屋で遊ぼうね」「2歳児さんは、運動会の練習が少しあるから1歳児さんは0歳児さんと一緒に遊んでいましょうね」など、気候や季節の行事などに合わせて縦割りも臨機応変にしています。年上の子が下の子の面倒を見たり、下の子がお兄ちゃんお姉ちゃんの真似をしたり、その様子はまるで大家族のよう。園の中はとても和やかな空気に包まれています。


佐鳴保育園3

天気のよい日は園庭で遊んだり、近くの公園へ散歩に行ったり。散歩の途中で近所のお年寄りとあいさつをかわし、「みかんをとりにおいで」と声をかけてもらうといったやりとりもあるそうです。
「地域と関わり、周りの方に助けていただきながら保育しています。0~2歳児は、生きる力の基礎を育む大切な時期。人生で最初に出会う社会的な場が温かいところであることは、将来何かあったときにも、勇気を持って行動できる心の支えになるように思います」と、佐鳴保育園の井口園長は語ります。お母さんたちとも 子どもたちの育ちをわかちあいたいと、様々なお話をしてコミュニケーションをとっています。
家庭的で温かな保育と、地域の人との関わり。「小さな保育園だからこそできること」が、しっかりと実践されていました。

~事業所内保育施設 十全双葉保育園~

事業所・地域の枠を超えてみんな仲良し!

十全双葉保育園1

十全双葉保育園は、浜北区にある十全記念病院の事業所内保育施設です。園舎は病院と少し離れたところに独立した建物があります。園児の数は33人。 うち、従業員以外が利用できる地域枠は10人です。その内訳は、0歳児3人(事業所枠9人)、1歳児3人(事業所枠14人)、2歳児4人(事業所枠4人)。それに対して先生は10人。常時9人の先生方が保育にあたる体制となっています。


十全双葉保育園2

園内には、教室が3つ。年齢別に、0歳児(ひよこぐみ)、1歳児(うさぎぐみ)、2歳児(ぞうぐみ)とクラスが分かれています。
0歳児クラスは、お昼寝を中心にその子に合わせた生活のペースで過ごします。1歳児クラスでは、保育者も手伝いながら生活リズムのスムーズな流れを作ります。そして2歳児クラスでは、1人でできることも増えるので、保育者は見守る姿勢を保つというように、自立を促す保育が行われています。


十全双葉保育園3

事務局の川合さんはこう語ります。
「働いている親御さんのお子さんをお預かりしているので、保護者がイベントなどで集まる機会は多くありません。その分、帰りの迎えの時に交流できる時間を作っています。お母さん方がお話されることはもちろん、子どもたちはどのお母さんにも『さようなら』 の時にタッチでバイバイするなど、保育園でも交流を促しています。「地域枠」は定員の約2割と少数ですが、病院に勤めている保護者とも分け隔てなくお付き合いされていますよ」。
迎えのわずかな時間ですが、他の子どもたちや保護者との交流の時間があることは、忙しい共働きの親には嬉しいですね。

この園ならではの特徴をたずねてみたところ、「病院が母体の園なので、けがや病気の時の対応がスムーズです。内科検診や歯科検診も母体の病院から来ますし、子どもの体調で気になることがある時は、職員が関連施設の専門家に都度相談することができます」とのこと。

現在、事業所内保育事業の4園はいずれも病院施設ですが、さまざまな業種の事業所内保育事業が増えていけば、それぞれの特色を生かした保育がされるかもしれませんね。

地域型保育事業を利用している保護者の声

地域型保育事業がスタートして8か月余り(平成27年11月現在)。実際通園している子どもの保護者はどのように感じているのでしょうか。

  • 入園前は小さい保育園のイメージがわからなかったが、一人ひとりをよく見てくれている。大きい園、小さい園、それぞれのよさがあると思った。
  • アットホームな雰囲気で、第二の家のような場所になっている。
  • 3歳児以降預けられないのが残念。

(佐鳴保育園の保護者)

 

  • 病院系列なので、何かあった時も安心できる。
  • 関連の老人保健施設で、おじいちゃんおばあちゃんとの交流があることも魅力。
  • 先生のきめ細やかな指導で、自分のことは自分でする習慣がつき、とても嬉しい。

(十全双葉保育園の保護者)


ひとくくりに地域型保育事業と言っても、小規模保育施設・事業所内保育施設それぞれに規模や雰囲気は違います。しかし取材したどちらの保育施設でも、地域型保育事業として制度化されたことで「保育士の数や設備を見直し整えるきっかけとなり、より手厚い保育ができる」と保育士たちは語り、保護者もそれを感じているようです。

3歳児以降は連携園へ

地域型保育事業にはそれぞれ連携園があり、3歳児以降は優先的に入園することができます。しかし、連携園は保育園とは限らず、幼稚園となっているところも多いため、保育園入園を決めるにあたり情報収集をする際は3歳児以降の保育時間や通園のことも視野に入れる必要があります。
今後、地域型保育事業施設が増えれば、それぞれの家庭環境に合った保育園を選ぶことができ、選択肢が増えることになるでしょう。

現在実施されている地域型保育事業施設と来年度の新設予定

平成27年度4月、地域型保育事業施設となったのは、取材した2園を含んだ11か所です。
また平成28年度は小規模保育事業は認証保育所からの移行4施設、新規設置が3施設の7か所、事業所内保育施設も3か所が開設される予定です。

取材を終えて

少子高齢化が急速に進む現代。社会で活躍する女性も増え、家庭での子育てスタイルも家族の数と同じだけあります。しかし、どの家庭でも、子どもたちが笑顔いっぱいに成長していく姿を見たいという親の願いは同じなのではないでしょうか?
3世代が同居し、大家族で子育てをする時代から、核家族で子育てをする時代を経て、今は地域など社会全体で保育をする時代になってきているのでは?と今回の取材を通じて改めて感じました。政府が今年度からスタートさせた”子ども・子育て支援新制度”も、社会全体で子育てをしようと、子育て世代の生活をバックアップする法律のひとつです。
ただ、その制度は当事者に浸透しておらず、保育施設と保護者の架け橋の役割をする行政は、利用者の立場に立ったわかりやすい情報提供をしていく必要があるのではと思います。
これから保育園選びをする保護者にぜひ知って頂きたい“地域型保育事業”。堅苦しく、耳慣れない感じもしますが、新しい制度をよく知り、条件さえ合えば、子育ての強い味方になってくれること間違いなし!どの園にも、温かい眼差しで見守ってくれる保育者がいることは、親にとっても、子どもにとっても、とても嬉しいことです。
笑顔あふれる社会へ。地域型保育事業が、そのはじめの一歩となってくれるといいなと思います。

取材・文責/NPO法人はままつ子育てネットワークぴっぴ/時田祐子