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3.11から7年 いま、私たちが被災したら?(2)
<2>アレルギーの子どもへの対応
みなさんや周囲の人の中にアレルギーを持っている人はいませんか。アレルギーには、食物、金属、薬物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などがあるのはご存知でしょうか。それぞれアレルゲンによって発症のしかたや症状が異なるので、身近にそのような人がいないと誤解を生むことがあります。
東日本大震災が起きた時、アレルギーを持つ人をめぐってこんなことがありました。あなたがアレルギー患者ならどうしますか?
- 避難所に支援物資が届いたのですが、その食物の中にアレルギーを引き起こすアレルゲンが含まれているため、届いた食料が食べられませんでした。誰もが充分な食べ物がなくてつらい思いをしている時に「食べないのはわがまま」と決めつけられてしまいました。
- ライフラインが絶たれ、入浴ができなかったことやストレスでアトピーがひどくなってしまいました。自衛隊の救援で入浴できるようになったのに、「皮膚病ではないのか?そうなら伝染するので一緒に入浴させないでくれ」と拒まれてしまいました。
- 避難所にペットを連れてきた人がいます。「この子(犬)は家族同然なので一緒に居させてほしい」と、自分と同じように避難所内で過ごさせようとしていました。
1. 食物アレルギー
食物アレルギーは、千差万別で様々な食物に反応する人がおり、人によって少量でも症状が出てきます。アレルゲンの摂取量によっては、アナフィラキシーショックを起こして死んでしまうことさえあります。東日本大震災時にアレルギー対応の支援物資が来なくて苦労した人たちがたくさんいたので、それ以降、各自治体の意識も変わり、アレルギー対応についての話題が一般の人たちから口にされるようになりました。
では、アレルギー対応の備蓄について、東日本大震災以降、自治体では進んだのでしょうか。災害支援NPOの関係者は「自治体によっては、アレルギー対応食品の備蓄をしているところもあるようですが、どこの自治体なのか不明」と言います。
公助より“自分の身は自分で守る”自助の機運が高まりました。大災害時にライフラインが途絶え、支援物資がすぐには届かなかった経験からも、アレルギーや疾患を持つ人は自分にあった食料や薬を自分で確保しておかなければ困ることになります。個々にアレルギー食を作るしかありません。
ひとつの方法として、一人分の食材を高密度ポリエチレン袋に入れて加熱するパッククッキングは、大人数分を調理する中でもアレルギー対応食を個別に扱うことができます。ぴっぴでは、この調理法を学ぶワークショップ「災害時に強い!パッククッキング」を、防災講座の一つに取り入れて行うようになりました。
熊本地震を振り返って、災害支援NPOの支援者は「離乳食やアレルギー食を作りたくても調理室が開放されない避難所が多いので、困っている人はまだまだいると思います。なぜ利用できないかというと、火事、食中毒、包丁などの殺傷事件などが起こった場合に誰が責任を取るのかというところでいつも揉めるからです」と話します。起きてもいないことを心配して行わないとは、なんと厳しい現実かとは思いますが、災害で多くの人が不安にかられている状況ではそうした判断も致し方ないのかもしれません。アレルギーを持つ子どものために、アレルギー食に加え、カセットコンロと予備のボンベ等を備えておくことが欠かせないでしょう。
2.アトピー性皮膚炎、喘息
東日本大震災時、テレビの映像は津波で押し流される家や車の姿。その後は瓦礫の山でした。油や様々なものが流れ出て、魚や生き物の死骸が放置された現地は悪臭が漂っていたと聞きます。また、大規模避難所では、外部から持ち込まれる埃を避けられず、毛布や布団を敷いたままの生活を続けていくと埃に反応して喘息を発症してしまう人も出てきました。乾燥や入浴できないこと、それにも増して異常な状況ですからストレスも大きかったことでしょう。アトピー性皮膚炎や喘息が起きたのは想像できます。このような経験をもとに、アレルギー支援を行っている方から「マスクをすることは重要。特に女性は顔が小さいので、子ども用マスクでいい」とアドバイスを受けました。
熊本地震では、家の倒壊が多かったため、やはり同じことが繰り返されました。ぴっぴは、かつて浜松医科大学に在籍されていたアレルギー専門医から、乳幼児のアレルギー対応に役立つものを監修していただいていたので、熊本地震の際にはそれらの物資を「つながる支援パック」としてまとめて送りました。「入浴ができず、アレルギーでなくても赤ちゃんのお尻が荒れてしまったのでワセリンはたいへん役立った」と避難生活を送られているママから感想をもらいました。
3.動物アレルギー
今や猫、犬など空前のペットブーム。家族の一員として家の中で飼われているのは当たり前のようです。災害時に残して出るのは忍びないと、今災害が起きてしまったら一緒に避難所に連れていく人も多いのではないでしょうか。しかし、避難所に来る人の中には動物アレルギーを持つ人が必ずいます。動物アレルギーとひと言で言っても、アレルゲンは動物の体毛、皮膚(垢)、唾液や寄宿しているノミ、ダニ等の死骸等、人によって様々です。東日本大震災の時は、避難所でペットが動き回っていたなどというトラブルもあったようで、中には逃がして野生化した動物もいたようです。
こうした経験から、熊本地震では、屋外や決まったところで人と離して飼おうという傾向にありましたが、やはりトラブルも絶えず避難所から出ていくことになった人もいました。2018年2月、環境省により「人とペットの災害対策ガイドライン」が作成されました。
実際の被災地は支援にばらつきがある
実際に災害が起きた時に支援にいくNPO、NGOの方々の話を聞くと「報道されたところには支援物資が豊富に行くが、それ以外は見過ごされる場合が多い」とのことです。東日本大震災以降、7年。それなりに経験を経てはきているものの「まさか自分が被災者になるとは思ってもいなかった」と備えていなかった人もいました。
最後に、また支援者の言葉で締めくくります。「アレルギーに関しては、ネガティブに考えておいた方が良いように思います」――つまり、楽観的に考えて備えが不十分になるよりは、より悪い事態を想定して十分な備えをしておくということです。
できるだけ、必要なものは備えておくことにしましょう。つらい思いをしないために!
<参考資料>
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」
- つながる支援パックアレルギー用
アレルギーのある乳幼児家庭の非常用持ち出し品(例)のうち10品目を熊本へ送りました。
<取材協力団体(順不同)>
震災がつなぐ全国ネットワーク、NPO法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク、日本財団、認定NPO法人レスキューストックヤード
※ぴっぴは子育て支援団体なので、女性、乳幼児家庭を中心とした内容について掲載しています。
3.11から7年 いま、私たちが被災したら? 全3回
- <1>避難所での授乳・トイレ等 女性スペースの確保
- <2>アレルギーの子どもへの対応
- <3>女性・子育て家庭のための支援物資