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わたしの
大きい椅子と中くらいの椅子と小さい椅子が画面いっぱいに描かれます。そして、「おおきいいす ちゅうくらいのいす ちいさいいす わたしのどれかな」と問いかけます。ページをめくると、「ちいさいいす わたしの」と、2歳くらいの男の子がちょこんと小さい椅子にすわっています。もうここから、聞き手の子どもたちは絵本の中の男の子と一緒になります。
「おちゃわん」「はぶらし」「くつ」と、小さい子の身近なものが次々に、大中小のサイズであらわれ、「わたしの どれかな」と問いかけてきます。文章には書かれていませんが、聞いている子どもたちはおそらく、大きいのはおとうさん、中くらいのはおかあさん、そして、小さいのが自分のものと選び取って、絵本の男の子とおんなじ、うれしそうな顔をします。
でも、最後の展開はちょっと違います。
「おおきいバナナ ちゅうくらいのみかん ちいさいいちご わたしのどれかな」さあ、こまりました。子どもたちのとまどう顔が愉快です。だって、どれも大好きだし、どれも「わたしの」って言いたいのに。さらにがっかりさせるのが次の場面です。「ちいさいいちご わたしの・・・」小さい手のひらにそれはそれは小さいいちごがひとつだけ!
でも、大丈夫、さいごの場面では「ぜーんぶ わたしの」と、バナナとみかんといちごをかかえてにこにこ顔の男の子。聞いているこどもたちの顔もにっこり、大満足です。
読んであげれば2分もかからない、たったこれだけのお話ですが、最後の「ぜーんぶ わたしの」に行き着いたときの満足げな表情に、読む側も幸せな気分になります。
三浦太郎のこの絵本は、「くっついた」同様、余分なものはいっさい省いて、ストーリーの展開に必要なものだけをきっちりと描いています。文章も、繰り返しのリズムが心地よく、幼い子の心をとらえる要素をしっかり満たしています。