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コッコさんのともだち
絵本に教えてもらった「成長する子ども」
「コッコさんのともだち」
片山健 作
福音館書店
こどもって、「いつのまに成長したの!」って思うときがありませんか。「育てた」というより、まさに親の知らない間に「成長したんだ!」って、思わずうるうるしてしまうときが。我が子に重ねあわせて、それをいとおしいくらい感じさせてくれるのが「コッコさんシリーズ」です。
よく、「こどもを“育てる”なんていうのはおこがましい。こどもは“自分で育つ”んだ」という人がいますが、私はとてもそんな気分にはなれませんでした。少なくとも6歳くらいまでは、一生懸命“育て”ました。それでもたまに“こどもって自分で育つんだ”と実感させられることがありました。この「コッコさん」シリーズは、「こどもって、親の知らないところでこどもなりに悩んで努力して健気に成長しているのね」と思わずじーんとさせられますげじげじまゆげとおちょぼ口が何とも愛らしいコッコさんに、私がはじめて出会ったのは、「コッコさんのおみせ」でした。
コッコさんはおみせやさんを開業しますが、お客さんはだれもきません。おとうさんもおかあさんもおにいちゃんも、無理をしてコッコさんに合わせることはしません。そこでコッコさんは“営業努力”をします。そう、出前までするんですよ。お客さまの声も反映させます。こどもっておとな社会をちゃんとみているんだなと、ちょっとどっきりさせられます。コッコさんのおとうさんがまた素敵です。こどもとの絶妙な距離の取り方に、私はいっぺんでファンになりました。そして「コッコさんシリーズ」にはまりました「おやすみなさいコッコさん」も「だーれもいないだーれもいない」も好きな作品ですが、私はやっぱり「コッコさんのともだち」が一番好きです。
おとなって、「おともだちとなかよくするのよ!」とか「ともだちできた?」とか、気軽に言います。でも、内気でナイーブなこどもにとって、ともだち作りは本当に大変なことなんですね。
コッコさんは保育園でなかなかともだちができません。いつもひとりぼっち。でも、ある日、偶然同じ色の服を着ていたことから、アミちゃんとなかよしになりました。つまらない絵本はここまでに頁数をさいて、めでたしめでたしで終ります。この作品の素晴らしいところはここからです。
毎日一緒に遊べば、当然うまくいかない時がきます。コッコさんにもきました。コッコさんははじめてアミちゃんとけんかします。そしてしかたなくほかの子と遊びます。それをきっかけにアミちゃんとも仲直りして、それからというのも、コッコさんとアミちゃんは、みんなといっしょに遊べるようになるのです。
作者はコッコさんの心の変化を、服の色で表します。コッコさんとアミちゃんがなかよくなったときは同じ色の服。気持ちがすれちがった時はちがう色の服。そして、アミちゃんとなかよしになり、みんなとなかよしになったときには、もう、ちがう色の服を着ていても大丈夫。つまり自分は自分でいながら、アミちゃんともみんなとも一緒にやっていけるようになったのです。
親が囲い込むようにしてこどもを守って育ててやっても、どうしても親の力が届かないところがあります。でも大丈夫、こどもは幼いなりに自分の力で解決していくんだ、その力をこどもは持っているんだと、親子にエールを送ってくれる絵本です。
文責:浜松市立中央図書館 辰巳なお子氏