クローズアップ「ひと」

大村竜助さん リューテニスアカデミー主宰

2013年3月25日

スポーツを通して成長し、自由になれる! 大人になることへの夢を伝えたい

大村竜助さん 

日焼けした肌と、白い歯が覗く爽やかな笑顔。テニスコーチのイメージそのもののような大村さん。
でも、その経歴や考え方、アイデアはとてもユニー クです。世界各地を巡ってテニスの指導をした経験をもとに、今、浜松で考える“子どもとスポーツ”のこと、 “感性を育てる”ということ。「私の一風変わった話でいいですか?」と前置きしつつも、夢いっぱいの話が広がります。

 

大きいことがしたくて、世界に飛び出した

クラブ・メッド

「少年時代の私にとって浜松という街は、おじいちゃんがデパートに連れていってくれる所(笑)。都会だと思っていました」ですが、成長し思春期になると、もっと都会に出たい、と思うようになり、大阪の外国語大学に進学します。

も ともと幼少時をメキシコで暮らした経験もあり、海外生活に抵抗がなかった大村さん。「何か大きなことがしたい」という想いを胸に語学力を磨き、卒業後は中 学時代から続けていたテニスの腕を活かせる仕事として、クラブ・メッド(国際的バカンス・サービス企業)の専属テニスインストラクターになりました。

「北海道からスタートして、バリ、バハマ、沖縄などで働き、本当にいろいろな経験をさせて貰えました。中でも印象深い場所は、全世界のクラブ・メッ ド中最もテニスが盛んで、ぜひ行ってみたかったバハマです。バハマでは意外な気づきがありました。日本のテニス指導法はけっこう緻密で、よくできていると いうことです。しかし、それでも世界的な日本人テニスプレイヤーがあまり育たないのはなぜか? 日本は人を育てる環境としてはどうなんだろうか?という疑問が湧きました」

既に大学生の頃から、指導者としてのキャリアをスタートしていた大村さん。「教える」ということの奥深さに、次第にひきつけられていきます。そのきっかけとなったのは、テニス指導者のためのある研修会で出会った考え方でした。

“信頼”がないと、表面的になってしまう

テニススクール

「その研修会では、指導するためのテクニック的なことではなく、指導者自身のありようについて教わりました。“教える”のであれば指導者自身がまず 自分を高めなければならない、ということです。生徒は、指導者の持つ雰囲気や話し方などに影響を受けて変わっていきます。当たり前のことかもしれません が、“このコーチは本当に自分のことをわかってくれている”という信頼感があれば、目には見えなくても何かが伝わります。親が子に与えるように、無形のも のを与えることができるんですね」

その後大村さんは、世界各地でテニスを教える生活に終止符を打って地元浜松に戻り、スポーツをもっと普及させたいとの想いから会社(株式会社スポーツフォーオール)を立ち上げ、テニススクールを開校しました。

「Sports(スポーツ)の語源は“気晴らし”ということです。 だから、たとえば囲碁もスポーツなんですよ。それが“競技スポーツ”となると、政治や 経済の要素が強くなりすぎ、勝てる人はスポーツが好きになるし、そうでないと嫌いになっていきますよね。それよりも、自分が楽しいと感じたり、将来的に健 康でいられたりということの素晴らしさを、もっと大切にしてほしい。そのためのスポーツ、気晴らしだという認識がもっと広まればいいなと思っています」

前向きに頑張るための、ことばの力

テニススクール

スポーツは体を使いますが、それを教えるために使うのは、ことばです。ことばについて、大村さんには忘れられない思い出があります。さかのぼって、小学4 年生の時のこと。その頃、大村さんは「吹奏楽部に入りたい」と思っていました。ピアノを習っていたため楽譜も読め、音楽は好成績。トロンボーンのパートに 1人募集が出たため、自信を持って立候補し、テストを受けました。
ですが、結果として大村さんは選ばれませんでした。 「後で、顧問の先生が僕に言ったんです。『大村くん、先生がなぜ、あなたを選ばなかったのかわかる? あなたはよく、疲れた、ってことばを口にするよね?だから(みんなで頑張る吹奏楽部には)選べなかったんだよ』と」

 

大人っていいな」と思ってもらいたい

テニススクール

このインタビュー収録の前に、パパになったばかりの大村さん。「まだ子どもと妻は実家にいるので、あまり会えていないんですけど、かわいいですねぇ」と、一層優しい笑顔に。
「親としては全く新米なのですが(笑)、私が思うのは、親が子どもに対して『ああでなきゃ、こうでなきゃ』と思ってしまうのはしかたがないにしても、それ が子どもに伝わってしまうのは良くないのでは、と。それよりは『だいじょうぶだよ』と言ってあげたいんです。だって、何かができなくても、そのことで困る のはその子自身。困って、自分で考えて、勉強する。そこを気づかせてあげたいし、尊重してあげたいと思います。これは、さっきのことばの話にもつながるん ですが、今の子どもや若い人たちは『大人になっても何もいいことがない』と思っている風潮がありますよね。でも、大人がたとえいっぱいいっぱいでも、余裕 のあるフリをして『大人っていいよ、仕事って楽しいよ』と言うと、『あ、早く大人になりたいな』って思ってくれるんじゃないでしょうか」

さらには、感性を育てて“どうすれば人がやさしい気持ちになれるのか”“どうすれば人が喜んでくれるのか”といったことを自分で考えられる子を育てていきたい、と大村さんは言います。

 

目に見えないものの力を信じて

大村竜助さん

話すほどに、あくまでポジティブな考え方が伝わってくる大村さん。その秘密はどこにあるのでしょうか?「祖父が僧侶であったためでしょうか、私自身はよ く、“魂”というものの存在を思ってみます。つまり、ひとは魂と肉体でできていて、この世界での体はいわば“借り物”なんですね。自分のものではないか ら、綺麗な形で返さなければならない、という考え方です。次の命へ生まれ変われるとすれば最後まで頑張るし、次へ次へと、どんどん魂がよくなると思えたほ うが素敵じゃないですか。自分の魂の成長はまだこの辺りだ、なんてね。この世界では、自分の肉体を使って精一杯表現をし、魂を成長させる自由が与えられて いるんです」

大村さんのような大人とふれあえば、子どもたちはきっと「大人っていいな」と思ってくれることでしょう。ひとりのパパとしてもスポーツ指導者としても、大村さんの今後の活躍から目が離せません。


◆大村 竜助さん 略歴◆

リューテニスアカデミー主宰。ジュニアスポーツプロデューサー。
クラブ・メッドの専属テニスインストラクターに就くなど、国内外で19年のテニス指導歴がある。『てのひらけっと』という安全・簡単に打球できる用具を開 発し、全国で普及活動を行うなど、幼児期から身体能力向上の観点でボールを打球する遊びに親しむことを提唱。全てのコミュニケーションを英語で行うテニス 教室を開くなど、子どもたちが国際感覚を身につけるための活動も行う。
【取得資格】JTIAテニスプロデューサーⅠ、スポーツ医学応急救護者国際ライセンス、チャイルドマインダー、TOEIC850、英検準1級など

(2013年3月25日にインタビュー 談:大村竜助さん  取材・文:ぴっぴ 寺内美登里)