クローズアップ「ひと」

山本真樹さん シンプリィ・ショップ店主

2014年1月24日

「あそび」にかかわり続けてきてわかった、 子どもにとって本当に必要なこと

山本真樹さん

佐鳴台の大通り沿いにある、木のおもちゃの店「シンプリィ・ショップ」。店内はドイツなど世界の木製おもちゃや人形、シュタイナー教材などがあふれるように置かれ、暖かい雰囲気。週末などには、近所はもちろん、他の市町からも訪れるファミリーが絶えません。 店主の山本真樹さんは、16年前の開店以来“あそび”を通して数多くの親子と接してきた中で、遊具や園庭の設計など数々のプロジェクト、そして自然体験活 動やネイチャーゲーム(※)の指導にもかかわるようになりました。その行動範囲は広く、まちなかから中山間地域まで浜松中を飛び回る日々です。 (※)ネイチャーゲーム:米国のナチュラリスト、ジョセフ・コーネル氏により発表された自然体験プログラム。
 

早朝の釣りに、みかん狩り。原体験は豊富な自然遊び

シンプリィ・ショップ

浜松生まれ、浜松育ちの山本さん。幼いころから父親や友人と釣りやキャンプに行ったり、浜名湖を望む実家の段々畑でみかん狩りの手伝いをしたり…と、日々 の生活の中でたっぷり自然とふれ合う子ども時代を過ごしました。 社会人になり、広告やデザインの仕事をしていた頃、あるフランスのおもちゃメーカーの国内プロモーション担当になったことをきっかけに、木のおもちゃの店 を立ち上げました。 「自分でも“いいな、欲しいな”と感じたものだけを選んでいます」と山本さん。彼が考える良いおもちゃとは、どのようなものでしょうか? 「安全性など必ずクリアしてほしい事柄の他で言えば、“感覚を育ててくれるおもちゃ”だと思います。子どもたちが想像する余地がたっぷりあるように、デザ インや色はシンプルなものを。一通りでないさまざまな遊び方ができて、遊びが自由に発展するものや、言葉や表現の発達の助けになるものをおすすめしています」
 

保育環境・保育計画

室内で遊ぶおもちゃだけでなく、幼稚園や保育園の大型遊具の設置、園庭設計、家具開発と、仕事の領域は保育環境・保育計画へと広がっていきました。 「園庭って、子どもにとっては“世界”のようなものです。ひとりでも大勢でも遊べて、安全でゆったりできて、季節を感じられる隠れ家みたいな空間(でも、 先生たちからはちゃんと見える)もあって…と、望む要素はたくさんあります。そして、年少の子どもが『年中さんはすごいなあ、あんな高いところまで行け て』と憧れる、そういう場になることが大切だと思います」 山本さんが関わっている幼稚園・保育園の園庭は、自身の子どもの頃の豊富な体験が活かされ、変化に富み、勇気を持って試みる“自然の森”のような環境にな りました。 (写真:志都呂幼稚園の園庭にある“本物の吊り橋”と急斜面を利用した遊具)
 

遊具やおもちゃが無ければ、 自然の中で遊べない?

 自然体験やネイチャーゲームのワークショップ

幼稚園・保育園や小学校などから依頼を受け、子どもたちに自然体験やネイチャーゲームのワークショップを行う山本さん。そうしたワークショップを通して伝 えたいのは、“身近な自然に大事な発見がある”ということです。 遊具の無い公園や、ただ広いだけの野原では、「何をして遊べばいいかわからない」というパパやママも多いそう。ですが、五感を研ぎ澄まして自然を感じ、自 分をとり囲む草や花、土や木、虫や鳥などの生命に意識を向ければ、遊びは無限に見つかります。 「リトミックや楽器演奏の表現として“風が吹いているような感じで”“木がそよいでいるみたいに”などと言葉で伝えたとしても、絵本を読んでも、直接的な 実体験として風を感じたことが無ければ、子どもたちはわかったつもりになるだけでしょう」 子どもたちへのプログラムに立ち合う中で、保育士や幼稚園の先生たち自身からも「気づきが多くて、楽しかった」という声があがることが多いそう。 「子どもたちの感覚を育てるためには、保育者自身もそれら(直接的な自然体験)を用いていることに気づかなければならないと思います。でも、保育士や先生 を養成する教育機関では、そう気づく機会が意外に少ないのかもしれませんね」
 

「地域のおもちゃ屋が、子育てのためにできること」とは?

シンプリィ・ショップ

こうしたお話を聞くと、「シンプリィ・ショップ」が、ただおもちゃを売るだけの場ではなく、子どもの感覚を開く別な世界への入り口のように思えてきます。

実際、店を訪れる親子とやりとりをする中で、店主と客という以上の交流が生まれることも多いそう。 例えば、ママが“うちの子は落ち着きが無い”と悩んでいると感じ、じっくり取り組める単純なルールのゲームを紹介したら、子どもが落ち着いて過ごせるよう になった、ということがありました。 また、学校に行けなくなった子どもには、グループで身体表現に取り組むサークルなどを紹介させてもらうこともあります。

地域の子育てのキーパーソン的役割をされている山本さん。ですが本人は、「いえいえ、僕は何もしていません」と笑います。「むしろ、お客さんから教えても らうことの方が多いです。いろいろなジャンルの方とかかわる中で、いつも多くのことを教えていただいています。それをまた、別の機会にフィードバックしているだけです。地域の子育てのために、おもちゃ屋は何ができるのか?ということを、これからもっと考えていきたいと思っています」 かつて親に連れられて来ていた子どもが、成長した姿で店を訪ねてくることもあるそうです。 「愛情をたくさん受けて、こんなに素敵な人に育ったんだなあ、と思うと、本当に嬉しいですねえ」
 

◆山本真樹(やまもと まさき)さん 略歴◆

1963年 浜松生まれ、浜松育ち。
広告代理店・デザイン会社に勤務後、1991年10月 独立。
1998年4月 浜松・佐鳴台にて、世界の木おもちゃとシュタイナー教材を紹介する「シンプリィ・ショップ」を開業。
子どもの遊びと発達を見つめ、ドイツや北欧のおもちゃと 保育家具、園庭遊具を販売。
各地の幼稚園・保育園・小学校などで自然体験、手作り体験の指導も行う。

  • オランダ政府教育機構Cito・ ピラミッドメソッド日本センター認定おもちゃコーディネーター
  • ネイチャーゲーム・リーダー
  • 遠州ネイチャーゲームの会
  • 自然体験活動推進協議会(CONE)リーダー
  • 浜松市環境学習指導員
  • シンプリィ・ショップ

 

(2014年1月24日にインタビュー  談:山本 真樹 さん ネイチャーゲーム、志都呂幼稚園遊具写真:シンプリィ・ショップブログより転載  取材・文:ぴっぴ 寺内美登里)