子育て耳より情報

知っておきたい!帰国子女のための学習準備

2017年3月1日

バルセロナ日本人学校

グローバルな企業が多い浜松市は、海外赴任をする家庭も多く、市内の小学校にも帰国子女(学校教育の場では「帰国児童」と表現)が多く在籍しています。日本ではできない経験が家族と共にできるのは本当に貴重な機会ですが、気になるのは帰国後の子どもの生活です。特に日本の小学校の学習にスムーズに入るための情報はまだ十分でないのが現状でしょう。そこで、海外赴任経験者にリサーチし、経験者ならではの体験談やアドバイスをご紹介します。

帰国子女を持つ家庭に聞きました! 学習面で感じたあれこれ

浜松市内の小学校における帰国児童在籍数は平成28年4月末現在で393名(海外生活1年以上の児童の数)です。昨年度帰国した児童数は73名で、静岡市の34名と比べて倍以上の人数となっています。大手自動車メーカーや楽器メーカーの事業所が多いアメリカに加えて、生産拠点があるアジア圏への赴任が多いのも浜松市の特徴と言えるでしょう。子どもたちにとっても、環境の変化が大きい家族での海外赴任。帰国後に子どもの親たちはどのようなことを感じているのでしょうか。

赴任先でどんなことが吸収できましたか?

まずは、海外での生活が子どもの成長や学習によかったと思うことを聞いてみました。

英語を身につけたことで、子どもの強みとなった。日本でも外国語の授業が楽しく受けられている。世界観が広がった。(帰国時/小6・4・1、ほか数名)

幼い頃から様々な人種の人たちと接し、自分と違う文化や考え方も受け入れることができるようになった。(帰国時/小4・2)

言葉が通じない場所や、全く未知の世界でも適応していこうとする自立心やコミュニケーション能力が鍛えられた。(帰国時/小2・年中・1歳)

停電・床上浸水・大気汚染・渋滞などが多くあり、少しのことでは驚かなくなった。(帰国時/中2・小3)

帰国後の学習で戸惑ったことはありますか?

市内全体の人数が多いとはいえ、地元の小学校に転入すれば、そこではやはり帰国子女は少数派になります。日本の小学校に転入し、子どもたちそして保護者はどんなことに戸惑ったのでしょうか。

日本にある四季がなかったり、植物を育てる環境が違ったりと、日本に転入後の理科の授業に戸惑っていた。(帰国時/小1)

日本語補習校での学習は主に国語と算数のみのため、社会は月に数時間だけ、理科に関しては全く勉強する機会がなかった。(帰国時/小6・4・1)

両親が日本人なので日本語の心配はしていなかったが、漢字や語彙力が不足しているなと感じた。(帰国時/小4・2)

体育・音楽の授業内容が大きく違った。特に体育のなわとびと鉄棒ができなかった。(帰国時/小2・年中・1歳)

毎日の宿題に慣れておらず、転入当初宿題をするのにすごく時間がかかった。(帰国時/小4・1)

日本は、学校から帰ってくるのが遅く、家庭で親子一緒に学習に取り組む時間が少ない。(帰国時/中2・1・小2)

子どもたちの戸惑いを身近で感じているのが「英会話スクールESL College」を運営する伊藤ひさ乃さんです。スクールには多くの帰国子女が通い、同じ経験を持つ子どもたちが集まります。自身も帰国子女である伊藤さんに、子どもたちの様子やその家族に伝えたいことを伺いました。

~友だちと話す時間が、学習の自信につながる~

伊藤ひさ乃さん

転入当初は環境の違いに不安げだった子どもたちも、教室で同じ境遇の仲間たちと思いを共有することにより、徐々に笑顔が増えていくのを感じています。小学生は友だちとのつながりを大切にする年代。同じように頑張っている友がいるということが心の支えになり、学習も自信を持ってのびのびと取り組めるようになっていきます。
日々の学習はもちろん、語学力や海外生活で身に付けた感覚を保持するためにも、保護者のみなさんは、子どもたちが健康で笑顔で過ごせるような幸せな生活環境を保つよう心がけてあげると良いですね。子どもたちが帰国後に抱えている思いを共有できるようなコミュニティを見つけてあげるのも、そのひとつではないでしょうか。

赴任先での学校によって変わる学習環境

体験談の中には「赴任先の学校で習わない科目があった」という声もありました。海外で子どもたちが通う学校のスタイルは、大きく2つに分けられそれぞれの学習内容に違いがあります。

「日本人学校」に通う場合

日本人が多く住む地域で現地の日本人会等が中心となって設立した学校で、日本の小学校と同様に平日に通学します。日本国内で使われている教科書を使用し、日本語で授業を受けることができます。現地の子どもたちと関わる機会は減りますが、日本の小学校と変わらない雰囲気の中、授業を受けることができます。

「現地校」と「日本語補習校」に通う場合

平日は現地の子たちとともに現地校に通いながら、土曜日や放課後などを利用して日本語補習校に通います。補習校では、日本の教科書を使って国語と算数を中心に授業が進むことが多いようです。他の教科を学ぶ時間が少なくなりがちですが、現地校に通うことで自然と海外の文化に触れることができます。

帰国前・帰国後、こんな準備が役立ちました              

スムーズに小学校の学習に入るために知っておきたいことは? 海外赴任経験者からのリサーチ結果を科目別にまとめました。

国語・算数 ~ドリル等を使って毎日の積み重ねを~

国語・数学

小学校入学と同時に始まる国語と算数。低学年からほぼ毎日のように授業があります。「小さなころから絵本の読み聞かせを欠かさなかった」「子どもの興味に合わせて、日本の言葉や計算ドリルを使った」という声があり、準備がしやすい科目でもあります。
浜松市内の多くの小学校では、国語の書き取りや教科書の音読、算数の計算カードやドリルなどが毎日の宿題で出されています。転入してからスムーズに毎日の宿題に取り組むことができるよう、ドリル等を使って習慣づけをしておくのがおすすめです。

理科・社会 ~日本の環境や文化を普段の会話で話題にしよう~

理科・社会

気候や環境、文化の違いなどから海外では日本と同じ内容を学ぶことが難しい理科と社会。日本の小学校では、小学3年生から理科と社会の授業が始まります。低学年のうちは、日本の気候や四季、文化のことを家族で話題にするなど、コミュニケーションの中で自然に取り入れてみましょう。また、「海外の配送にも対応してくれる日本の通信教育がとても役立った」という話も多く聞かれました。

体育・音楽 ~学年ごとの習得目標を知っていると安心~

体育・音楽

戸惑いました、との声が意外と多かったのが、体育・音楽です。海外と日本で授業のスタイルに違いがあることも多いようで、なわとびや鉄棒のほか「5年生の30分回泳に苦戦した」「楽器(鍵盤ハーモニカ、リコーダー)習得に戸惑った」など、学年ごとに目標が設定されているものに苦労したとの声もありました。先輩ママに聞いたり、文部科学省の学習指導要領を参考にしたりして学年ごとの目標を知り、遊びの中で自然に取り入れてみるなどして、徐々に準備をしてあげるといいですね。

その他「インターネットの動画サイトなどで日本のものを見るようにしている」という話もありました。インターネットの閲覧も内容を選び、家族で上手に付き合うと帰国後の強い味方になってくれるでしょう。

浜松市教育委員会の支援窓口

中区中央のオフィスビル、イーステージ内にある「教育相談支援センター※」は、小中学生の教育支援の窓口で、帰国児童生徒の転入や学習についても相談を受けています。指導主事にお話を伺いました。

帰国児童に対してどんなサポートをしているの?

海外帰国子女教育振興財団の資料

文化・習慣の違いなどから転入学に不安のある保護者や子どもに日本の学校のことを説明したり、抱いている心配事の相談を受けたりして、円滑な就学を支援しています。学校をよく知る相談員による就学ガイダンスは随時受け付けており、教育相談支援センターが個別に対応することで相談者はそれぞれに合った支援を受けることができます。
また、希望者には海外帰国子女教育振興財団が発行している資料の配布を行っています。転入後も小学校の先生に申し出ると資料を受け取ることができます。

帰国後学校に転入する際のアドバイスや心の準備は?

海外から日本の小学校に転入、となると学校の様子がわからず不安になることもあります。帰国が決まったら、転入先の小学校のことを事前に調べておくことがおすすめです。浜松市内の小学校にはホームページがあり、ブログなどで学校の様子を見ることができます。年間行事予定などを見て、校内の一年の行事を知っておくのもとてもよいと思います。
普段の子供の様子を一番よく知るのは保護者です。転入後、いつもと違うな?と感じることがあれば些細なことでも本読みカードや連絡帳などを活用し、担任の先生に相談してみてください。学校と家庭、地域で子供たちを見守り、育てていきましょう。

(談:教育相談支援センター指導主事 市川眞弓さん)
※平成29年4月からは「教育総合支援センター」となります。

取材を終えて                   

小さな体で環境の変化を受け入れ、帰国後日本の小学校に転入する子どもたち。親も日本での小学校生活ではどんなことがあるのかと心配になってしまいます。しかし、事前に日本の小学校での様子を知っておけば、親も子もとても安心です。取り組みやすい学習面でのサポートを家庭で行うことは、子どもたちが日本で楽しい小学校生活をスタートする上で大きな助けになることでしょう。
浜松市は、帰国子女ばかりでなく外国籍を持つ子どもも多く、多種多様な文化を持つ人々が共に暮らす多文化共生都市を目指しています。世界を知る子どもたち、日本で育った子どもたち、それぞれが互いに影響しあって大きく成長していく姿を周りの大人は温かく見守っていきたいものですね。

文/時田祐子