子育て耳より情報

コロナ禍における出産事情~安心して出産を迎えるために~

2021年6月18日

 妊娠出産

新型コロナの影響を受けてから1年余り。感染拡大が収まらず、移動の規制で里帰り出産ができなかったり、家族の立ち合いができなかったりと、妊娠中の母親とその家族にとって不安を感じる状況が続きました。浜松の分娩を扱う医療施設では今、どのような対応がされているのでしょうか。この1年出産にあたってきた産婦人科専門医や助産師に、現在の様子や出産前後の対応について取材しました。

新型コロナが妊娠・出産に与えた影響

昨年2月以降、新型コロナ感染拡大防止のために、多くの出産施設が以下のような制約を設けました。

  • 立ち合い出産の中止
  • 産前・産後教室の中止
  • 健診時の付き添いの制限
  • 面会の制限(基本的にナースステーション等での荷物の受け渡しまで)
  • 里帰り出産を含め、妊婦・そして同居の家族が県外・海外から帰国後した経歴がある場合、受診まで2週間空ける

浜松市内の子育て支援ひろば等で、この1年間に出産したママに話を聞いてみると、「両親学級に参加できなかった」「大きな荷物を抱えて1人で入院するのはとても孤独だった」「出産前、実家の親に手伝いに来てもらう際、自分の受診も2週間空けなければならず、予定を組むのが大変だった」「入院中、ほかのママと話す機会が全くなかった」「面会ができなかったので、上の子に1週間近く会えず辛かった」など、予想していなかった大変さを感じたという声があがりました。

 妊娠届出数の推移

厚生労働省資料「令和2年度の妊娠届出数の状況について」を基に作成

今年5月には、令和2年に全国の自治体に提出された「妊娠届」が前年比4.8%減・過去最少の87万2,227件だったことから、新型コロナの影響による「出産控え」が話題となりました。2月に公開されたネットアンケート「2月4日『妊娠の日』妊婦の意識調査」でも、妊娠・出産や子育てへの不安に新型コロナの影響を感じている妊婦が9割以上という結果が出ています。

母子と家族のために変化する病院対応

浜松市内で出産数の多い産婦人科専門病院「かば記念病院」に伺い、顧問で医師の金山尚裕先生と助産師長の橋本扶美江さんに現況をお聞きしました。

出産前後の対応はどのように変わったのか

 金山先生

付き添いや面会制限については、「立ち合い出産は中止していますが(5月末現在)、超音波の動画や分娩後のママと赤ちゃんの動画を、家族のために提供しています。また、出産後の面会は家族にも2週間の健康観察をしてもらい、20分間に限り可能となりました」と金山先生。また「産前産後の母親には、相談相手の存在や友だちづくりが必要ですが、その機会が減ったことがいちばんの不安材料。精神的に不安定になっても、専門家を含め誰にも相談できないことは、時に大きな悲劇につながります。妊婦にとって、人と会う機会が制限されることは、新型コロナ感染のリスクと同じくらい深刻なことです」と言われます。そこで、中止していた産後ママの集まりを、人数制限しつつ6月から再開(予約制)したそうです。出産後も、心身共に母子が健康でいられるように、病院の対応もこの1年の間に少しずつ変化しています。「今の状況も、悪いことばかりではないんですよ。マスクを常用することで、例年大流行するインフルエンザなどもかなり予防できていますしね」と話していました。

もし感染してしまったらどうしたらいい?

健診で相談

妊婦のいちばんの不安要素であろう「妊婦自身の感染」についてはどう考えたらよいのでしょうか。「もし妊娠中に新型コロナに感染しても、妊娠の経過に影響したり、胎児に先天異常が引き起こされたりする可能性は低いとされています。ただ、感染が確認された場合、33週を迎えていれば、長時間の自然分娩での妊婦の負担や周囲への感染リスクを考え、帝王切開で出産する可能性が高くなります。感染の可能性がある場合、動線を完全に分け、他の利用者への影響がないよう最大限に配慮しています」と金山先生。自分に発熱などの症状がある場合はもちろん、同居家族が感染したり、濃厚接触者となったりした場合は、出産予定の施設に相談しその後の行動を話し合うことになります。

コロナ禍を経験し親も強くなる

 助産師長と

日々、産前産後の母親やその家族とやり取りしている橋本助産師長は、金山先生と同様、ママたちの精神的な負担を解消する場の不足が気がかりだと話します。新型コロナの影響から孤独な育児になることを危惧し、「退院後の母子は、保健師の訪問や、産後ママの集まりを利用してほしい」とアドバイスがありました。ただ、自身と子どもを守りながら出産を迎えたママたちは、「みんな強くなっている」とも感じているそうです。専門家からみても、自分から情報収集をし、出産への準備を進めている母親の姿は頼もしいものなのでしょう。

安心・安全な出産に向けて今も対策が進む

2021年6月現在、1年前のコロナ禍での出産状況とは変わりつつあります。市内の出産施設では、時間制限を設けて立ち合い出産や産後の面会を実施したり、産後教室を少人数で再開したり、部分的に緩和されてきています。また、多胎児クラスなど必要と判断された講座については、産前の教室の実施をしている病院もあります。

出産を乗り越え

しかし、再開したものが再び中止になるなど、その対応は感染状況により都度変わってきます。妊婦の居住地や妊娠の経過を見て、細かな対応を検討する形が続いています。4月に浜松で出産したママからは「付き添いの制限がされている分、病院スタッフのサポートは手厚く心強かった。産後の面会もなかったけれど、その分のんびり過ごし体を休められたと思う」という声もありました。家族の代わりに写真撮影したり、トークアプリで産後のママと家族を繋いだりするお手伝いも一般的になってきています。出産を迎える親にとって、かかりつけ医や出産予定の施設としっかり繋がること以上の対策はないのかもしれません。

出産を迎えるために家庭でできること

 妊婦支援

気になる体調の変化や精神的に辛いときは、専門家を頼るのが大切ですが、新型コロナの影響を見越して各家庭で準備や対策できることもあります。浜松市内で受けられる講座や検査、またサポートを出産前に確認しておくことが、産後の生活に役立ちます。

取材を終えて

このコロナ禍で妊娠・出産することは、妊婦にとって「どうなってしまうのか」と不安の種となっていることでしょう。ですが、手探りだった1年前から比べると個々ができる対策も見え、出産施設の対応も進化していることがわかりました。産前産後に細やかな配慮をし、オンラインの活用や相談できる場づくりなどを進める病院スタッフからは、母子共に安心して過ごしてほしいという願いが感じられました。妊娠中は、新型コロナに関わらず心配ごとが尽きないかもしれませんが、改めて家族で産前産後の生活について話し合い、頼れる場所・人を見つけ、出産を迎えてくれたらと思います。

文/makiko
取材協力/かば記念病院