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災害時の助け合い ~遠くの親類より近くの他人~
毎年1月17日が近づくと思い出されるのは、阪神淡路大震災です。今年で30年を迎えます。そのため、当時の記憶を持たない世代も増えつつありますが、大災害はその後も日本各地で繰り返し発生しています。そのたびに全国からボランティアが駆けつけ、救援や復旧において欠かせない役割を果たしています。
阪神淡路大震災の際には、1年間で被災地を訪れたボランティアの数は138万人に達したそうです。しかし、昨年1月1日に発生した能登半島地震では、1年間で訪れたボランティアの数は約17万人でした。地震直後、能登半島では道路網が寸断され、交通渋滞が発生。人命救助や物資搬送の緊急車両を優先する必要があったため、石川県の馳浩知事がSNSで「現在、個人のボランティアは受け付けておりません」と発信しました。この発信が「ボランティアを拒否している」と受け止められ、その後のボランティア活動が滞る一因となったようです。
能登半島のような地形では、災害時に孤立するリスクが指摘されています。同様の懸念は伊豆半島にも当てはまるでしょう。さらに、もし南海トラフ巨大地震が発生し、広範囲に被害が及んだ場合、外部からの救援や支援が迅速に届かない可能性が高いです。また、行政職員自身が被災する可能性もあるため、必ずしも公助に依存できるとは限りません。
では、これまでの災害時、人々はどのような行動を取ったのでしょうか。
阪神淡路大震災では、建物の崩壊や火災が発生し、住宅密集地の道路が塞がれて消防車や救急車が立ち入れない状況も多く見られました。その中で、下敷きになった人々を救い出したのは近隣住民でした。普段から地域の人々の居住状況を把握していたため、お年寄りや障がいを持つ人、乳幼児がいる家庭などをすぐに確認し助けることができたのです。
また、東日本大震災では、長期間にわたり物資が届かず、スーパーが開店しても長蛇の列で数時間待たなければならない状況が続きました。その際、近隣住民同士が助け合い、乳幼児がいる家庭や介護が必要な家庭に考慮して買い物をついでに引き受けたり、各家庭が持ち寄った食料を分け合ったりしたという事例もありました。このように、日常的な近所づきあいが災害時に役立ったという声が多く聞かれています。
浜松市は、浜松まつりの影響もあってか、自治会の加入率が90%以上という珍しい地域です。日頃から少し災害時のことを意識し、適度な距離感を保ちながらも近所同士で助け合う関係を築いておくことが、いざというときの助けになるのではないでしょうか。
文/浜松市防災学習センター 副センター長 原田