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「果物で口の中がかゆい時どうしたらいいの?」 口腔アレルギー症候群について

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口腔アレルギー症候群のポイント

  • 小学校中学年以上に増えてくる。
  • 花粉症が原因で生の果物野菜を食べた時だけ症状がでるが、アナフィラキシーに基本的にならない。
  • 食べた直後に症状が出現。ただ、30-60分で症状は自然に消える。治療は不要。
  • 加熱してあれば制限不要。生であれば本人が症状で辛ければ除去するが、そうでなければある程度食べて問題なく、給食提供も可。
  • 豆乳や搾りたての生ジュースの大量・一気飲みだけは制限が必要。

はじめに

2,000年前後から食物アレルギーの患者さんが増えており、保育所・学校でも給食や日常生活の対応が必要になっています。本稿では、食物アレルギーの中でも「口腔アレルギー症候群 (Oral allergy syndrome:OAS)」について解説をしたいと思います。

口腔アレルギー症候群の原因・原因食品

花粉症(スギ・ヒノキ以外)が原因となり、花粉に似たアレルギーの原因タンパク質が果物・野菜にも入っているために果物野菜を食べた時にもアレルギー症状がでるようになります。

口腔アレルギー症候群の原因

花粉症は小学生、中学生と徐々に症状が強くなってくるため、口腔アレルギー症候群も小学校中・高学年になってくると増えてきます。

原因の食品(図 次ページ)は、ハンノキやシラカンバ花粉症が原因の場合は、バラ科果物や豆乳で症状が出ます。ビワが給食で提供された際に、複数人が口腔アレルギー症候群を初発して救急搬送されたなどとニュースになるのは、実はこれが原因です。後に説明しますが、実際は 30-60 分で自然と症状が消えるため救急搬送は必要ありません。イネ科(カモガヤ等)・キク科(ブタクサ等)花粉症の場合は、メロン・キウイ・スイカ・トマトなどで症状が出ます。

花粉と原因果物
ハンノキ花粉症 バラ科果物
モモ・リンゴ・サクランボ・イチゴ・プルーン・ナシ・梅
大豆
豆乳※豆乳の一気飲み禁止、料理に使うのは可
(症状強い場合は豆腐やもやしも症状でることあるが、口腔内違和感のみなので摂取可)
イネ科(カモガヤ等)花粉症
キク科(ブタクサ等)花粉症
メロン・スイカ・キウイ・トマト等

口腔アレルギー症候群とは

口腔アレルギー症候群(OAS)は、簡単に言ってしまうと「生の果物・野菜でのみ、口の中がイガイガとかゆくなったり、口回りや目の周りにじんま疹が出る」アレルギーで、アナフィラキシーになることは例外を除いてありませんし、加熱した果物・野菜は無症状で食べることができます。そのため、学校・家庭で口腔アレルギー症候群の症状が出た時は焦ることなく冷静に対応ができるように心がけましょう。そのためには、まずは口腔アレルギー症候群ではなく、食物アレルギー全体のメカニズムを知る必要があります。

食物アレルギーの症状メカニズム 口腔周囲症状と全身症状の違い

食物アレルギーの症状はアレルギーの原因食品が吸収される場所によって,大きく2つに分けられます。1つ目は,口で吸収されることで出現する症状(口腔周囲症状)、2つ目は腸で吸収されて全身に広がって出現する症状です(全身症状)。口腔アレルギー症候群はこの2つの症状の内、基本的には口腔周囲症状しか出ないため、「口腔アレルギー症候群」と呼ばれています。そのメカニズムを説明します。

口で吸収されて出現する症状(口腔周囲症状)は,食べて15分以内に出てきます。口のなかのイガイガした痒みや辛い,痛いなどと訴えます。また、唇が腫れたり、口・目・首など顔の発赤やじんま疹、咳払い、のどが絞まるような感覚などが出ます。これらは、症状が出始めて15分後がピークとなり、30-60 分で自然に消えてしまいます。そのため、特に治療は必要ありません。

一方、腸で吸収されて出る症状(全身症状)は,食べて15分以上経ってから出現します。体や手足にじんま疹がでたり、咳やゼェゼェなどがでます。大量に食べて、腸で吸収される原因食品の量が多くなると、体の中のアレルギー物質が増えるため症状が強くなり、最終的にはアナフィラキシーやアナフィラキシーショックとなる可能性があります。

弱いタンパク質が原因のため、全身症状なし。加熱果物・野菜でも症状なし

なぜ口腔アレルギー症候群(OAS)は口腔周囲症状しか出ないかというと、原因のアレルギー物質が弱いタンパク質のため、胃酸などで壊れてしまって腸で吸収されるときにはアレルギー反応を起こさなくなるためです。そのため、口腔周囲症状はでるのに、全身症状はでないことになります。さらに、原因のアレルギー物質は弱いタンパク質なので、胃酸だけでなく加熱でも簡単に壊れてしまいます。そのため、生のモモやリンゴでは口腔周囲症状がでるのに、缶詰のモモやリンゴジャムでは症状がでません。

診断・検査

果物・野菜アレルギーの診断の方法には、1.病歴,2.血液検査,3.皮膚プリック検査、食物経口負荷試験があります。

  1. 病歴
    病歴で重要な点は,加熱した果物野菜であれば症状が出ないかどうかです。加工品などで症状が出ないのであれば、口腔アレルギー症候群の可能性が高くなります。バラ科果物であればアップルパイやイチゴジャム、大豆であれば豆腐、トマトであればケチャップなど具体名を挙げて保護者に確認すると、無症状に食べられると返事が多く、簡単に口腔アレルギー症候群と診断できます。なお、メロンやキウイはもともとイガイガに似た味を感じるため、実際は症状を訴える人の半分もアレルギーの子はいません。一方、スイカでイガイガすると訴える場合は高確率で口腔アレルギー症候群の子が多いです。
  2. 血液検査(IgE 抗体検査)
    IgE 抗体検査は果物そのものの検査結果を見ても診断的な価値はあまりありません。
    それより、口腔アレルギー症候群の原因である、ハンノキ花粉やイネ科(カモガヤ等)・キク科(ブタクサ等)花粉への反応が高いのかどうかを確認することが大切です。
  3. 皮膚プリック検査・食物経口負荷試験
    皮膚プリック検査は,果物・野菜そのものを検査用の針の先につけて、皮膚を刺激する検査です。この時、生の果物と加熱した果物を用いて検査することで反応の差を診ることができます。もし加熱した果物・野菜では反応が見られない場合は口腔アレルギー症候群と診断できます。ただし、実施している医療機関は専門機関の中でも一部に限られます。食物経口負荷試験は病院で実際に食べてみる試験です。最も診断の信頼性は高いですが、時間と費用がかかります。口腔アレルギー症候群の場合、負荷試験する前に診断が確定できることが多いため、臨床的にはあまり行う必要がない場面が多いです。

上記述べた通り、多くは病歴と血液検査で概ね診断が可能です。診断に迷う際は専門機関に受診して頂き、皮膚プリック検査や負荷試験を検討して下さい。

生活指導

食事・生活指導

口腔アレルギー症候群であれば,加熱すれば症状なく食べることができます。以前は各ガイドラインに生の果物は除去するようにと記載されていましたが、近年はある程度の量であれば食べてよいと記載されています.口や顔の症状だけであればアレルギー症状用の薬は必要ありません。

ただし,豆乳によるアナフィラキシーの報告があります。これは口腔アレルギー症候群であっても、原因食品が液体状で大量だと一気に流れ込んできて、胃酸等で壊れる前に吸収される腸までたどり着いてしまうためと考えられています。そのため、豆乳や生果物の搾りたてジュースを一気に大量に飲むと全身症状がでることがあり、これは避ける必要があります。ただ、学校生活では実際にこのような摂取がほぼないため、家庭での注意事項として記憶する必要があります。

もし仮に果物(バラ科果物・柑橘類・ブドウ・イチジクなど)を食べて全身症状を認める場合は、特殊型の果物アレルギーになります。患者数が比較的すくないこともあり、専門施設で診断・指導を受けることをお勧めします。なお、口腔アレルギー症候群があると、ゴムアレルギーや蜂アレルギーを心配される方がいらっしゃいますが、全く関係ありませんので心配する必要はありません。

 

浜松医科大学小児科学講座 夏目統

 

出典:浜松成育医療学講座通信 第3号(2022.6)

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