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成長曲線を活用しよう

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小児の特性は、成長・成熟です。この評価のために、2014年、文部科学省から初等中等教育機関に対して、児童・生徒の健康管理について成長曲線を積極的に活用するように通知が出されました(学校保健安全法施行規則の一部改正等について(通知)、26文科ス第96号2014/4/30)。これに基づいて2016年からは毎年実施される学校健診(身体計測)の結果を成長曲線に転記し、それを評価することが求められています。しかしながら、各学校にはその成長データを評価する医師がいないために、十分に活用されているとは言い難いのが実情です。

ここでは、どのようなときに、小児内分泌専門医が所属する機関(市内では浜松医科大学、浜松医療センター、遠州病院が該当します)に受診していただくかの目安について概説します。なお、ここでは、教育機関に配布されたパーセンタイル成長曲線だけではなく、新旧の医療用評価に用いるSD成長曲線を使用することをご容赦ください。また、主に身長について記載し、体重については割愛しますが、考え方は身長と同様です。

成長(身長)はどのように評価されますか?

身長は、一般集団との比較、両親身長との比較、成長速度の推移の3点から評価されます。ここで、両親との比較は、身長の高い両親からは身長の高いお子さんが、身長の低い両親からは身長の低いお子さんが生まれやすいという相関に基づきます。そして、こどもの成人目標(TH)とその95%信頼区間(TR)は、父の身長(PH)と母の身長(MH)を用いて、以下の式から求められます(ただし、両親との比較は、両親の少なくとも一方が成長異常を有する場合には使用できないことに留意する必要があります。例えば、どちらかの親が身長に影響する遺伝性疾患を有してれば、こどもの身長は、その遺伝子異常が伝わっているかどうかに最も大きく影響されます)。

男児:TH={PH+(MH+13)}÷2 (cm). TR=TH±9 (cm)
女児:TH={(PH–13)+MH}÷2 (cm). TR=TH±8 (cm)

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例えば、左図の児の身長は、一般集団との比較では境界型低身長と評価され、両親身長との比較では、両親の身長が高いときにはTH/TRがTH-1に示す範囲となるため低身長、両親の身長が低いときにはTH/TRがTH-2に示す範囲となるため適切な身長と評価されます。そして、身長は、成長曲線に沿って推移していると評価されます。ただ、学校で両親の身長を把握していることはまれだと思います。

病院に紹介していただきたい成長パターン

基本的には、一般集団と比較して小さいあるいは大きい時にはご紹介いただければと思います。特に、ご紹介いただきたい成長パターンをいくつかご紹介します。

病院に紹介していただきたい成長パターン:その1

病院に紹介していただきたい成長パターンその1

第1は、正常範囲を大きく逸脱した低身長(黒丸)・高身長(赤丸)です。例えば、図に示すようなパターンです。特に、成長速度が小さくあるいは大きく推移するためにだんだんと重度になる低・高身長は確実に病的であり、これが早期から観察されるときには先天性疾患である可能性が極めて高いということになります。ここでは、数年の推移を示していますが、このような低・高身長は、最初の年齢で紹介していただく必要があります。この図に示す低身長のお子さんは成長ホルモン分泌不全症で成長ホルモン治療が開始されましたし、高身長の患者さんは過成長を伴う先天異常症候群を有しているお子さんでした。

病院に紹介していただきたい成長パターン:その2

病院に紹介していただきたい成長パターンその2

第2は、図に示すように成長速度が成長の途中段階で小さく(黒丸)あるいは大きく(赤丸)なったときです。身長が成長曲線を横切ったときには、現在の身長が正常範囲内であってもご紹介いただきたいと思います。これは小学高学年から高校入学ころまでは、正常思春期に入るテンポの個人差にすぎないことも多いのですが、後天性の治療可能な疾患の存在を示唆します。例えば、この図に示すような身長の伸びが鈍化する成長パターンは、脳腫瘍、甲状腺機能低下症、クッシング症候群など身体的疾患で、また、身長の伸びが促進する成長パターンは思春期早発症などで見られます。成長速度が変化したときには、数年待つことなく、その可能性を認識した段階でご紹介いただきたいと思います。

こころの病気の反映としても生じる

そして、重要な点として、このような成長パターンはこころの病気の反映としても生じることが挙げられます。右図のお子さんは、育児放棄を受けたために愛情遮断症候群というこころの病気にかかり、身長が伸びなくなったお子さんです。体重も減少しています。同様に、図に示すように、思春期やせ症(神経性食欲不振症)のお子さん(多くは女児)も体重と共に身長の伸びの鈍化を呈します。

多くの疾患の特徴的成長パターン

多くの疾患の特徴的成長パターン

図に示すように、成長パターンを観察することで、多くの身体的・精神的疾患を発見することが可能です。そして、成長曲線をうまく活用するには、長期経過を評価することが重要です。そうはいっても養護の先生方は忙しく、また、学校医の先生方は、多くの場合成長・成熟を専門とする医師ではないと思われます。浜松成育医療学講座では、その事業の一環として、日本小児内分泌学会や関連する研究グループと連携して、成長・成熟に関する啓発活動を行う予定です。そのときには連絡いたしますので、宜しくお願いします。

浜松医療センター・浜松医科大学 緒方勤

出典:浜松成育医療学講座通信 2021.創刊号

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