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ゆき
ゆき
ユリ・シュルヴィッツ作・絵
さくまゆみこ 訳
あすなろ書房
どんより灰色の町へ、灰色の空からひとひらの雪が、そしてもうひとひらと舞い降りてきます。わくわくした気持ちでいっぱいの男の子の「ゆきがふってるよ」に大人たちは「それがどうした」というような冷めた反応をし、ラジオもテレビも「ゆきはふらないでしょう」といいます。
でも「ちらちらおどって、くるくるまわって、ふわふわあそんで、ひらひらとんで・・・」雪は積もり男の子が信じていたように町中、銀世界に。
大人たちのいなくなった雪化粧の町で男の子は本屋さんの壁からとび出したマザーグースのおばあさんやハンプティ・ダンプティやがちょうといっしょに遊ぶのです。体中で喜びを表現している男の子がとてもいとおしく思われます。
男の子の気持ちに共感しながら読んだ(読んでもらった)雪に縁遠い浜松のこどもたちも、白一色になった町の静けさや美しさをきっと共有してくれることでしょう。
「よあけ」で有名な作者は、こどもと大人の雪への思い(感性)の差異を、雪の降り始めから降り積もるまでのていねいな描写を通して、如実に語ってくれます。
とても地味な色あいの絵本なので、こどもたちが自分から手に取ることはめったにないと思います。
こんな絵本こそ、ぜひ、大人からそっと、手渡してください。
表紙の「ゆき」の文字も雪帽子をかぶって、楽しい世界への扉を叩いてくれるのを待っているようですよ。
文/村上節子さん