クローズアップ「ひと」

富田知可子さん 浜松医療福祉専門学校教員

2014年6月20日

子どもたちにたくさんの愛情を注げる、魅力的な保育者を育てていきたい

富田知可子さん

幼稚園教諭・ヒーローショーのおねえさん・子育て支援教室の先生など、いろいろな立場で親子と接してきた富田さん。
現在は、その経験を活かし、保育士・幼稚園教諭を目指す学生たちの指導を行っています。富田さんの授業は、まさに実践さながら。学生たちにも好評で、卒業後も「もう一度教えてほしい」とやってくるほどだといいます。

そんな富田さんに子育て中の親や学生に伝えていることをお伺いすると、子どものことを第一に考えた、愛情いっぱいの言葉が返ってきました。

何のためのサークルなのだろう?と思ったことがきっかけでした

子育てが楽しくなる教室

富田さんが子育て支援教室での親支援を始めたのは、自身の子育て中に参加した育児サークルでの経験がきっかけでした。
あるサークルでは、子どもたちはそれぞれ遊んでいて、お母さんは井戸端会議に夢中。育児サークルとは名ばかりで、親子の触れ合いが全くないことに富田さんは衝撃を受けました。

「一体これは何のためのサークルなんだろう?って思いましたね。」

他にもいくつかのサークルに参加していく中で気付いたのは、「お母さんたちはまだ親として育っていない」ということでした。現在、核家族が多く地域離れが問題になっていますが、その環境で生活していると子どもと接する機会がほとんどありません。子どもが生まれて親となっても、子どもの発達過程を知らず、どの時期にどんな遊び方をすればいいのか、どう関わればいいのか、わからず子育てが苦痛になります。

幼稚園に8年間勤め、3人のお子さんのお母さんである富田さんは、これをなんとかしなくてはいけないと立ち上がります。そして、平成13年に『子育てが楽しくなる教室』を主宰、今でいうところの「親支援」を始めました。

子育て支援教室

子育て支援教室

その後、子育て支援教室は浜松大学(現常葉大学浜松キャンパス)に場所を移し、学生たちも輪に加わるようになりました。そこでは富田さんは学生たちに“ふれあい遊び”を教えているのですが、子どもたちが生きた教材になってくれたと言います。

教室は1年単位で行われるため、0歳の赤ちゃんが教室を卒業する頃には1歳すぎ。
「学生は参加することで、どの月齢の子がどんな動きをするか、子どもの成長を観察し理解することができるんです。お母さんたちには『学生を育ててください』とお願いしました。子育て初心者のお母さんたちは教えてもらうことばかりで、自分が教えてあげられる事がある、ということに喜びを感じてくれたみたいです。学生たちをとても可愛がってくれて、今でも『あのときの学生はいい先生になってるかしら?』なんて話をするんですよ。」

また、学生たちにとって、お母さんと接することも勉強になります。保育者になると、保護者に相談されることや助言しなければいけないことも多々あります が、お母さんが子どもとの接点がなかったように、学生は若いお母さんたちと接する機会がありません。1年かけて子どもの成長を共有しながら、信頼関係を築いていく。その経験も、大学という環境で教室を行うからこそできたものでした。

自分の失敗から伝えたいこと

おかあたんへ

子育て支援教室を始めた年、参加していたお母さんに、「先生は子育てで失敗なんてないでしょうね。」と言われた富田さんは、それ以降、教室に参加したお母さんや学生たちに自身の失敗談を話しています。

「ある日、4歳の長女がプレゼントしてくれた絵に『おかあんへ』って書いてあったんです。3番目の子どもが誕生したばかりで子育てに少し疲れていたこともあり、手紙に赤ちゃん言葉が書いてあることを指摘してすごく怒ってしまったんですね。」
大切な時期にひどいことをしてしまった、とまるで昨日のことのように涙を浮かべて語ります。
「子どもは大きくなろうとする時、ちょっとだけ赤ちゃん返りをします。その時、しっかりと受け止めてあげることができたなら、その子はぐんと大きくなることができます。私はそれを止めてしまいました。自分の失敗を話すことでお母さんや学生たちに子育ての大切さを伝えたいと思っています。」

富田さんは今でも、その絵を自分への戒めのために大切にしまっています。

保育者に求められていること

保育者育成

現在女性の社会進出が進み、保育士の需要も増えています。学生たちにとっては就職先に困らないということでは喜ばしい状況かもしれませんが、富田さんは警鐘を鳴らします。
「お母さんから愛情をいっぱいもらわなければいけない時期に、子どもたちは1日の大半を保育園で過ごすことになります。保育士がお母さん代わりになることは難しいけれど、たくさんの愛情を注いで!と学生には伝えています。」

また、気付きを大切にしています。
「例えば、お散歩しているときにちょうちょが飛んでいたら、それは絶対に見逃さない。子どもたちにちょうちょの存在を伝え、『これからどこに行くのかな?』なんて話をする。『ちょうちょを目で追いながら子ども達と一緒にちょうちょの歌が歌えるといいね!』なんて授業をしています。」

心豊かな先生に育てられた子どもは心豊かに育ちます。

貴方のような先生を100人育ててください

保育者育成

富田さんが学生たちを指導するようになって、今年で10年目になります。なぜ保育現場ではなく、保育士・幼稚園教諭の育成という道を歩んでいるのでしょうか?

「私、学校や先生が大好きなんです。学生時代に先生に愛情をもって接してもらったと、とても感じていて。だから教える立場になることは、自然の流れでした。また保育の現場では、その場所でしか自分の想いを伝えられないけれど、学校では教え子たちがそれぞれの現場でその想いを伝えてくれる。」
1度は保育現場に戻った富田さんでしたが、「貴方のような先生を100人育ててください。」と言うミズモト学園理事長の言葉に保育者育成の道に進む決心をしました。

子どもがたくさんの愛情を受ける環境づくりのために、後継者を育てている富田さん。指導の場所が変わっても、富田さんの温かい愛情は変わりません。

◆富田知可子(とみた ちかこ)さん 略歴◆

  • 浜松医療福祉専門学校こども学科 教員
  • 常葉大学浜松キャンパスこども健康学科 非常勤講師

10年間幼稚園教諭として勤務、平成13年に親子のための子育て支援教室を開始。
平成17年から学生への指導を始め、多くの卒業生を送り出している。

※浜松医療福祉専門学校こども学科は、平成27年4月から「東海こども専門学校」になるため現在、認可申請中。調理実習や歯の発達など、子どもの成長に欠かせない分野を網羅できることが特色。

(2014年5月27日にインタビュー 談:富田知可子さん 取材・文:ぴっぴ 荒田梨賀)