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昔話に学ぶ子育ての知恵(8)~「こざるのおんがえし」から学ぶ子育てへのメッセージ~
日本の昔話「こざるのおんがえし」
日本の昔話に、猿が恩返しに来たという可愛らしい話があります。
こんな話です。簡単なあらすじを紹介しましょう。
昔、あるところに母親と息子がいました。母親は縫い物などして、息子は山で狩りをして暮らしていました。ある日、息子は猿を見つけて撃とうとしましたが、猿が手を合わせて命乞いする姿を見て思いとどまり、自宅に連れて帰ります。息子は猿を家の柱に繋ぎ、「逃がさないでくれ」と母親に言い残して山に戻ります。母親はその猿のお腹に赤ちゃんがいると気づき、逃がしてやりました。
ある日、あの猿が2匹の子猿たちを連れてやって来ます。そして木の葉に包んだいちごを差し出しました。あの時の猿だなとわかった母親は、いちごを受け取り、小さな袋に入り豆をいれて子猿に渡しました。猿の親子は、何度も何度もおじぎをして、山へ帰っていきました。秋になると、あの猿の親子が、以前渡した袋に栗を入れて再びやって来ました。母親が「ありがとう」と受け取ると、猿の親子は嬉しそうにお辞儀をして山へ帰っていきました。
昔話が描く「恩返し」
日本の昔話には、助けてやった動物たちが恩返しに来るという話がたくさんあります。「つるの恩返し」「ぶんぶくちゃがま」「きつねの恩返し」など人間が動物にしてやった親切な行いに動物が感謝し、お礼に現れるという温かな交流が描かれています。昔話では、正直な行いや親切な行いが大切に描かれます。
「こざるのおんがえし」も母親の親切で優しい行いに対して、猿の親子が感謝の気持ちを込めて山の幸を持って訪れるという、心温まる昔話です。そしてこのお話が、「恩返し」のお話にとどまらず、自然の中で生きてる動物への温かい眼差しを向けていることに魅力を感じます。
昔話は子どもの心に届く贈り物
このお話はとても短いお話ですが、温かい昔話です。昔話の中には、主人公が数々の困難に打ち勝ち、課題を克服して幸福を勝ち取るというような波乱万丈の物語もありますが、このお話のように、自然の中の様子を捉えて語るものも多くあります。四季の移り変わりや、その季節の様子や山の中、森の中の暮らしや風景を捉えて語るが多いのは、日本の昔話の特徴と言えるかもしれません。
このお話には動物への共感と動物へのやさしい眼差しが感じられます。
昔話は、残酷で恐ろしいお話であるとか子どもだましの話だといわれることもあります。また昔話は教訓的な話であるということも言われます。しかし昔話は、私たちのおじいさんおばあさんが、何世代にもわたって語り継いできた、知恵や想い、暮らしの中で密着していた自然の移ろいや動物たちへの温かい眼差しが詰まった大切な文化です。
この「こざるのおんがえし」もただの教訓話ではありません。もっと大きな自然への愛情や、命に対する共感というようなものを温かく語っています。ですから教訓のようなものを飛び越えて、もっと深くこどもの心に入っていくのではないでしょうか。
子育てに昔話を
このようなお話を、おじいさんやおばあさん、あるいはお父さんお母さんに聞かせてもらうことで、子どものこころには、思いやりや優しさが自然と育まれていくのではないでしょうか。
このような話は大事にしたいと思います。どうかご家庭でも「こざるのおんがえし」や多くの昔話を聞かせてあげてください。昔話を通して、親子で心を通わせる時間は、きっとかけがえのない宝物になるはずです。