子連れでおでかけ
子育てのヒント
特集記事
子育てのヒントを検索
夜尿症

目次
- はじめに
- 夜尿症ってなに?
- どれくらいの人が夜尿症になるの?
- どうして夜尿症になるの?
- 夜尿症の子どもは受診させたほうがいいの?
- 夜尿症のある子どもは治療をしたほうがいいの?
- 夜尿症にはどんな治療をするの?
- よくある質問
- おわりに
はじめに
夜尿症(いわゆる「おねしょ」)は多くの子どもが経験する身近な悩みです。本人や保護者は「本人の頑張りが足りないのではないか」とか「しつけが悪かったのではないか」など不安になることも少なくありません。しかし、夜尿症は本人の努力や保護者の教育の問題ではありません。一般的な夜尿症は成長とともに改善することが知られていますが、適切な治療を行うことで改善が期待できます。
この記事では、夜尿症診療ガイドライン2021を参考に1)、家庭でできることや医療機関を受診する目安、治療の方法などを解説します。
夜尿症ってなに?
夜尿症とは、夜寝ている間に無意識に尿が出てしまう状態のことです。「5歳以上の子どもが寝ている間に尿を漏らす」ことが「1カ月に1回以上の頻度で3カ月以上続く」こととされています。夜尿症には以下のような分類があります。
一次性夜尿症
いままで一度も夜尿がなくなった時期がないもの
二次性夜尿症
いままでに6カ月以上夜尿がなくなってから、再び夜尿症が出現したもの
単一症候性夜尿症
昼間の尿トラブルがみられないもの
非単一症候性夜尿症
昼間の尿トラブルがみられるもの
(昼間に尿が漏れる、トイレに駆け込んでいる、トイレに行きたくて我慢ができない、お腹に力を入れないと尿が出せない、尿の回数が多い(1日8回以上)もしくは少ない(1日3回以下)など)
このうち、二次性夜尿症と非単一症候性夜尿症の場合は、病気が隠れている可能性があります。当てはまる場合は、医療機関で相談することを勧めます。
どれくらいの人が夜尿症になるの?
夜尿症は幼稚園児から小学生では珍しいものではありません。5歳の時点で6人に1人、7歳の時点で10人に1人くらいに夜尿症が見られます2)。夜尿症は成長とともに自然に改善していくことが知られており、夜尿症を持つ子どもの1~2割は毎年無治療でも治っていくことが知られています。中学生になるころまで続いていることは少ないですが、その場合でも治療をすることで改善が期待できます。
どうして夜尿症になるの?
夜尿症は主に3つの要因が組み合わさって起きます。これらの要因は子どもの成長により改善していきます。
(1)睡眠から覚醒する力
夜尿症のある子どもは眠りが深く、音などの刺激によって目が覚めにくいと言われています。そのため、夜間に尿が溜まって膀胱からの刺激が出ても目覚めないことが多くなります。
(2)夜間の尿をためる力
生まれたばかりの赤ちゃんでは、膀胱に溜まると反射的に筋肉が縮んで尿を出します。夜尿症のある子どもはこの反射が残っており、夜間の尿を堪えることが難しくなります。
(3)夜間の尿量を少なくする力
眠っている間は脳から尿を少なくするホルモンが出ています。夜尿症のある子どもはこのホルモンが少なく、夜間の尿量が多くなります。
また、夜尿症は遺伝的要因も知られています。両親のどちらかが夜尿症を持っていた場合は5~7倍、両方の親が持っていた場合は11倍夜尿症になりやすいとされています。その際は両親と同じようなペースで夜尿症が治ることが多いです。

夜尿症の子どもは受診させたほうがいいの?
子どもの成長段階の影響(先述した主な3つの要因)で夜尿症が起きているのであれば、必ずしも医療機関を受診することはありません。しかし、何らかの病気の影響で夜尿症が起きているのであれば治療が必要になります。以下に当てはまる場合は腎臓疾患、神経疾患、内分泌疾患、睡眠時無呼吸、神経発達症などの病気が隠れている可能性があるため、医療機関を受診することを勧めます。
- 二次性夜尿症(いままでに6カ月以上夜尿がなくなってから、再び夜尿症が出現したもの)
- 非単一症候性夜尿症(昼間の尿トラブルがみられるもの)
- 便秘(便が硬い、便に血が付くなど)、パンツに便がつく
- たくさん水分をとる、すぐにのどが渇く、体重が減る
- 急に転びやすくなる、だんだん走るのが遅くなってくる
- 夜寝るときにいびきをかく、呼吸が止まっている時間がある
- 熱中すると周りが見えなくなる、落ち着きがない
これらに当てはまらなくても、本人・家族に不安がある場合や治療の希望がある場合には医療機関を受診することを勧めます。
医療機関では問診、身体診察、尿検査、必要に応じて血液検査や画像検査(超音波検査やレントゲンなど)を行って、病気が隠れていないかを調べていきます。夜尿の頻度や量を確認するために日誌をつけていただく場合もあります。
夜尿症のある子どもは治療をしたほうがいいの?
何らかの病気が影響して夜尿症になっている場合と、病気ではなく成長段階の影響で夜尿症になっている場合で異なります。
病気が影響して夜尿症になっている場合は病気の種類によっては体に悪影響を及ぼすことがあるため、積極的な治療を勧めます。その病気を治療することで夜尿症が改善することもあります。
成長段階の影響で夜尿症になっている場合は体に悪影響はないこと、先述した通り自然に治ることも多いことから必ずしも治療が必要ではありません。しかし、夜尿症のある子どもや保護者は自尊心やQOL(生活の質)が低いことが報告されています。夜尿症の解消により自尊心やQOLが改善することも知られており、本人や保護者が困っている場合には治療が勧められます。しかし、後述する治療は長期間続けることが重要であり、本人の治療への熱意がないと続けられないことが多いです。そのため、私は本人の希望が強い場合に治療を勧めています。
夜尿症にはどんな治療をするの?
夜尿症では主に生活指導、アラーム療法、ホルモン薬内服療法が行われます。
(1)生活指導
生活指導は夜尿症についての適切な情報と助言を提供することであり、すべての夜尿症のある子どもと保護者に行うことが勧められています。生活指導は夜尿症治療の基本であり、生活指導を行ったうえで、アラーム療法やホルモン内服療法を行っていきます。
まず、本人や保護者が「“本人の頑張り”や“保護者のしつけ”のせいで夜尿症になっている」と誤解をしている場合には、「夜尿症は本人の成長段階の影響、つまり個性であり、本人や保護者の責任ではない」ことを伝えます。また、夜尿が起きたことに対して本人を叱ることは夜尿を悪化させる恐れがあるため、叱ってはいけません。夜尿がなかった日は褒めてあげることで、夜尿症の改善につながることがあります。
次に水分や食事について説明します。夜間の水分摂取が過剰になると夜間の尿量が増えると考えられており、就寝2時間前からは過剰な水分摂取をしないように指導します。塩分が多い食事ではのどが渇きやすくなり水分摂取が増えることから、塩分を控えた食事を心がけるように勧めます。また、乳製品や糖分の多いものは夜間の尿量が増えることが知られており、夕食以降の摂取を控えるようにします。
さらに、生活リズムを整えることも推奨します。就寝や起床の時間をいつも同じにすることで睡眠の質を高め、睡眠から覚醒する力を助ける可能性があります。また、就寝前と起床後に必ずトイレに行かせることも夜尿を減らす可能性があります。
(2)アラーム療法
アラーム療法とは尿を感知してアラームが鳴る装置を付けたおむつをつけて、夜尿が起きたタイミングで覚醒を促すことで睡眠から覚醒する力をつけます。アラーム療法は50~70%で夜尿症の改善がみられます。また、夜尿が治った後にアラーム療法を中止しても夜尿が元に戻ることが少なく、根治が望める治療法です。
しかし、アラーム療法は、2~3カ月程度継続してから効果が出てくることが多く、夜間に本人や家族が起きなければいけない治療法であるため睡眠不足や昼間の眠気が問題になることがあります。そのため、本人や家族が夜尿症治療への熱意が強くないと継続が困難です。アラーム装置は個人で購入することもできますが、契約をしている医療機関を通すことでレンタルすることもできます。アラーム療法を行うことができるかは医療機関でご確認ください。
(3)ホルモン内服療法
尿量を少なくするホルモンであるバゾプレシンを補充する治療で、約30%で夜尿が治ります。治療法は錠剤の就寝前内服になりますが、ラムネのように口の中で溶け、苦みはありませんので5歳の子どもでも問題なく飲めることが多いです。ホルモン内服療法のメリットは治療効果が早く、1~2週間で確認できます。効果が不十分な場合は、薬の増量ができますが、増量しても効果がない場合には他の治療を追加、変更を検討します。
デメリットとして、内服中に夜間の水分制限が守れなかった場合には、体に水分が溜まり中毒になる可能性があります。そのため、水分制限が守れない場合には行うことができません。また、内服をすぐ中止すると夜尿が元に戻ることが多いため、長期に内服しながら本人の成長を待ちます。
よくある質問

紙おむつは卒業させたほうがいいの?

必ずしも紙おむつを卒業させることはありません。紙おむつを使用していることと夜尿が治らないことには関連がないとされています。夜尿の頻度が減ってきた、本人に紙おむつをやめる希望がある場合に卒業することを検討してください。卒業させる際に不安であれば防水シーツやトレーニングパンツを使用するとよいでしょう。

夜中に起こしてトイレに連れて行ったほうがいいの?

夜間に起こしてトイレに連れていく必要はありません。夜尿症の要因の一つは夜間に尿が溜まって膀胱からの刺激が出ても目覚める力が少ないことがあります。尿が出たときに起こすアラーム療法と違い、尿と関係なく夜間に起こすことは夜尿症の治療にはなりません。起こしてトイレに行かせた日は夜尿がなくなる可能性があるため、行事の際に一時的に行うことは検討されますが、長期間続けると睡眠不足となる場合もあります。

就寝前の水分制限は必ず守らないといけないの?

水分制限を守ることが難しい場合には摂取しても問題ありません。病気ではなく成長段階の影響で夜尿症になっている場合では夜尿症の治療は必須ではありませんので、のどの渇きが強く本人が水分摂取を希望している場合は、本人と相談したうえで生活指導を一時中断しても問題はありません。特に夏場など夜でも暑い日や習い事などで夜にスポーツをしている場合など脱水の心配がある場合には、のどの渇きを我慢させることは危険ですので摂取しても問題ありません。しかし、ホルモン内服療法を行っている場合には、就寝前に水分を過剰に摂取すると危険です。就寝前に水分を摂取した場合には、その日の内服は中止してください。

何歳までに夜尿症を治したほうがいいの?

いつまでに夜尿症を治すべきという決まりはありません。あくまで本人の困り具合や治療への熱意で治療適応を決めています。修学旅行などの宿泊行事をきっかけに本人の治療希望が多いですが、本人が気にしていない場合は中学生や高校生でも治療せずに様子を見ている場合もあります。夜尿が残っていても普通に学校生活を送っている方はたくさんいます。
おわりに
夜尿症は子どもの成長過程の一つとしてみられる症状です。病気が関わっていなければ体に悪影響を与えるものではないため、治療をあせる必要はありません。叱ることなく、落ち着いて家族で夜尿を治したいかを相談してください。不安なことや相談したいこと、治療の希望がある場合は、是非小児科を受診してください。
参考文献
- 日本夜尿症学会 編集: 夜尿症診療ガイドライン2021、診断と治療社、2021
- Tu ND, Baskin LS, Arnhym AM: Nocturnal enuresis in children: Etiology and evaluation. uptodate.
https://www.uptodate.com/contents/nocturnal-enuresis-in-children-etiology-and-evaluation (2026年1月21日閲覧)
浜松医科大学小児科 内田博之
出典:浜松成育医療学講座通信 第15号(2026.5)



