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摂食症(摂食障害)

浜松成育医療学講座通信

目次

はじめに

摂食症とは主に食事のとり方に異常をきたす心の病気をまとめた名称です。これまでは摂食障害という用語が広く用いられてきましたが、最近になって摂食症に改められました 1)。しかし、現在でも習慣的に摂食障害と呼ばれることも多いです。食事のとり方の異常とは食べる量や食品の種類を極端に制限したり、一度に大量に食べたりすることを指します。また、食べたものを吐き出すといった行動を伴う場合もあります。摂食症になると、栄養状態が悪くなることからやせすぎたり、反対に太りすぎたりと、しばしば体型の異常をきたします。さらには、さまざまな体の病気を併発しやすいという特徴もあります。
本稿では児童思春期に特に注意を要する摂食症の一種である神経性やせ症を中心に摂食症の種類とその特徴、家庭や学校における支援のあり方について解説します。 

診断基準について

精神科で使用される心の病気の診断基準には、アメリカ精神医学会が作成した「DSM-5-TR」と、世界保健機関(WHO)が作成した「国際疾病分類(ICD)」の2種類があります。ICDのうち、現在、日本で使われているものはICD-10と呼ばれていますが、2022年に新たにICD-11が発表され、今後、日本でも導入される見込みです。ICD-11では病気の考え方や日本語訳が大きく見直され、DSM-5-TRと似通った内容になっています。今回は主にDSM-5-TRの分類に従って説明します。

1.神経性やせ症

神経性やせ症はかつて神経性無食欲症、神経性食欲不振症などと食欲と関連した名称で呼ばれていました。しかし、神経性やせ症の患者さんは食欲を失っているわけではありません。食欲はあるのに、体重が増えることを恐れるあまり、食べられない状態にあるのです。そのため、「食欲がないことが原因である」という誤解を防ぐために神経性やせ症という新しい名称が用いられることになりました。

神経性やせ症では自身の体重・体型に関する認識がゆがみ、やせているのに「やせていない」「太っている」と誤った認知をします。その結果、患者さんは食事量を極端に制限し、標準体重よりも著しく低い体重になります。

著しく低い体重とは、成人ではBMI 18.5 kg/m2未満を指します。BMIとはbody mass indexの略語で体格指数ともいいます。BMIは肥満度を示す国際的な基準で、体重(kg)を身長(m)で2回割ることで計算されます。

例えば、身長160cm、体重55kgの人の場合、そのBMIは21.5kg/m2になります。成人では18.5kg/m2以上 25kg/m2未満を普通体重と判定します。未成年者のBMIは成人よりも低い傾向にあり、年齢や性別によっても標準値が異なります。そのため、お子さんのBMIが同じ世代の中でどの程度にあたるのかを判断するのに日本小児内分泌学会が公表しているBMIパーセンタイル曲線が参考になります 図2)

BMIパーセンタイルとは、お子さんの体格を評価する指標の一つで、同じ年齢・性別の子を100人集め、BMIの低い順に並べたときに、下から数えて何番目にあたるかを示したものです。50パーセンタイルならちょうど真ん中にあたります。

BMIってどうやって計算するの?

図2.BMI パーセンタイル曲線(女子)((c)日本小児内分泌学会)

BMIパーセンタイル曲線(女子)

BMI パーセンタイル曲線(女子)(c)日本小児内分泌学会上に筆者作図

横軸は年齢、縦軸はBMIが示されている。7本の標準曲線が描かれている。標準曲線は下から3、10、25、50、75、90、97パーセンタイル(%tile)に相当する。通常、標準曲線に沿って成長することが多い。
2つの架空ケースで評価の方法を解説する。ケース1(〇)はやせ型ではあるが、10パーセンタイル曲線に沿っているため、病的なやせではないと推定される。ケース2(●)は14歳時点で13歳まではおおよそ50、70パーセンタイル曲線に沿っているものの、14歳時点では25パーセンタイルに低下している。13歳から14歳までの間に急激な体重減少または/および身長の増加があったと考えられる。

神経性やせ症の患者さんは通常、体重が増えることや太ることへの強い恐怖を持っており、これを肥満恐怖と呼びます。「やせたいわけではない」と肥満恐怖を否定する患者さんもいますが、頻繁に食事量を減らしたり、激しい運動を繰り返したりといった体重増加を妨げるような行動が日常的に観察されれば、神経性やせ症と診断されることがあります。

極端な食事制限が続くと、患者さんは空腹に耐えられなくなり、意思に反して食べ物を食べてしまうことがあります。さらに、このような患者さんの中には、大量に食べ物を食べた(過食)後にわざと吐いたり、体重を減らすために下剤や利尿薬の不適切な使用をしたりする場合があり、これらの嘔吐や薬剤の乱用を代償行動と呼びます。

過去3ヵ月間に過食や代償行動がある場合を「むちゃ食い・排出型」、これらを伴わない場合を「摂食制限型」と分類します。体重が低い状態が長く続くと、体の病気を合併する割合や死亡率の上昇につながると指摘されています。重症度は原則としてBMI値によって判断され、低値であるほど重症と判定されます。成人では15kg/m2を下回ると最重度と判定されます。

神経性やせ症は中学生から高校生にかけての期間に発症することが多く、患者さんの90%以上が女性です。若い女性の約0.4%が発症するとされています。患者さんの半数は回復すると言われます。しかし、年間の死亡率はおよそ0.5%と心の病気の中で最も高い水準にあることから決して楽観できるものではありません。死因のおよそ半数を低栄養による身体合併症が占めます。低栄養状態が長期化すると、徐脈、低血圧、低体温、無月経などの身体合併症が生じます。

特に嘔吐や下剤の乱用などを伴う場合、体内のカリウムなどのミネラルバランスの異常により、ときに致命的な不整脈の原因となり得ます。9~25%が自殺未遂を経験していると示されています。およそ7~9割に無月経が見られます 3)。これは体重減少が原因であるため、ホルモン剤による治療は勧められません 4)。標準体重の90%程度まで体重を増やすことで、月経の回復を図ることが推奨されています 5)

神経性やせ症の患者さんは、真面目で完璧主義、柔軟性の乏しさ、自己批判的といった特性を持つことが多いとされています。また、自閉スペクトラム症との併存が注目されており、自閉スペクトラム症の特性であるこだわりの強さや対人関係の難しさが神経性やせ症の治療をより困難にしている可能性が指摘されています 6)

発症のきっかけとしてはダイエットとの関連が考えられます。友人との他愛もない日常会話からダイエットを始めることや、自分と他者を比較して勉強やスポーツ、文化的な活動などで思うような結果が出ない場合に体重を減らすことで自己肯定感を維持しようとする場合もあります。また、運動競技の結果を伸ばすために減量を図る場合もあります。

食事

単にダイエットをするだけでは神経性やせ症を発症したとは言えません。しかし、ダイエットを始めて目標体重に達しても満足できず、さらに体重を減らそうとするような場合は神経性やせ症を発症しているおそれがあります。こうなると、どれだけ体重を減らしても満足できず、より重症になっていきます。

患者さんは極度の低体重状態にあってもその深刻さを理解することができず、周囲の人に勧められても医療機関の受診を拒む傾向があります。一部には体調の変化を自覚し、生活を改めようとすることもありますが、低体重の状態が定着してしまうと、病的な食習慣を改善することは容易ではありません。
さらに、抑うつ、不安、イライラ、衝動的な自傷行為や窃盗など、やせる前の患者さんでは考えられないような精神や行動の変調がみられることがあります。この状態を飢餓症候群と呼びます。「人が変わってしまった」と心配される保護者も多いです。

神経性やせ症の治療では身体状態の改善、つまり栄養状態ひいては体重の回復が優先されます。これは神経性やせ症の最も中核的な症状であるやせ願望や肥満恐怖と真っ向から対立する方針です。患者さんとしては受け入れがたい場合が多いことから治療意欲を高めるための心理教育も欠かせません。

時に強い反発を受けることがあります。このような患者さんの心理状態を理解するのに助けとなる考え方として外在化という概念があります。外在化とは患者さん自身と病気による症状を切り離して考えるというものです。神経性やせ症の場合で言えば、「患者さん自身は『太りたくない』と訴えているとしても、それは病気の症状である」ととらえることです。
また、本人を説得しようとするのではなく、病気のために認知がゆがんでしまった本人を救うために「神経性やせ症」という敵に立ち向かう意識が大切です。先に述べたように飢餓症候群にある患者さんは思考力や集中力が低下しています。栄養状態が回復し、体重が増加することで飢餓症候群を脱し、治療に対するモチベーションが向上することが期待されるため、支援者には根気強く栄養状態の改善を促す態度が望まれます。

発症後3年以内の18歳以下のケースでは、「家族をベースとする治療(family based treatment)」が欧米諸国の治療ガイドラインで推奨されています。これは適切な食事摂取を促せるようになることを目標とした家族を対象とした治療法です。認知行動療法やその他の治療法も有効性が示されてきています 7)

認知行動療法とは不適切な行動につながる患者さんの偏った考え方(認知)を修正し、行動の適正化を図る治療法です。うつ病やパニック症など、他の心の病気の治療にも用いられることがあります。神経性やせ症に対する治療法では共通して身体的安全性が確保されている必要があります。言いかえると、やせたままでは十分な治療効果が期待できないということです。なお、現時点で肥満恐怖をやわらげる効果が認められている薬剤は存在しません。

2.回避・制限性食物摂取症

回避・制限性食物摂取症も神経性やせ症と同様に食事摂取量が減ることで低体重に至る病気です。神経性やせ症と異なる点は患者さんに体重や体型への過度なこだわりや自分の体格の認識にゆがみがないことです。回避・制限性食物摂取症で食事量が減る理由にはさまざまなものがあります。

代表例としては食べること自体に興味がないこと、におい・味・温度など食品がもつ感覚的な特徴を嫌うこと、食品をのどに詰まらせたり嘔吐したりといった不快な経験への恐怖などが挙げられます。これら以外の理由や複数の理由が混在していることもあります。主に乳幼児や小児に多い病気と考えられてきましたが、成人に発症することはあります。他の摂食症と比べて男性の患者さんが多いというのも回避・制限性食物摂取症の特徴です。患者さんにはやせたいという願望がないため、栄養補助食品などを使って標準体重を維持できる場合もあります。しかし、栄養障害がひどい場合は、前述の飢餓症候群を呈することがあり、神経性やせ症との区別が難しくなることもあります。

回避・制限性食物摂取症の患者さんの7割以上に不安症が合併し、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、強迫症といった心の病気が合併することも多いです。特に自閉スペクトラム症児の場合、口内の感覚の過敏さなどの特徴が回避・制限性食物摂取症の症状として現れることが多いため、自閉スペクトラム症の特性を考慮した対応が必要です。治療は不安の軽減と食事摂取リハビリテーションに焦点を当てた個別的なアプローチが必要ですが、家族をベースとする治療の応用が試みられています。

回避・制限性食物摂取症

3. 神経性過食症

神経性過食症では抑えのきかない食欲に駆られ、短時間で大量の食事を食べることを繰り返します。一方、神経性やせ症と同じように、自身に対する価値基準が体重や体型に極度に依存しています。そのため、患者さんは体重が増えるのを防ぐために、過食の後に嘔吐や下剤の乱用などの代償行動を行います。

過食(むちゃ食い)と、体重増加を防ぐための代償行動が、週に平均1回以上、3ヵ月以上続く場合に診断されます。代償行動の回数が多いほど、重症度が高いと判定されます。神経性過食症はむちゃ食い・排出型の神経性やせ症と症状がよく似ていますが、神経性過食症では体重が正常範囲内か軽度肥満程度にとどまります。つまりこれらの病気は患者さんがやせているかどうかで区別されます。神経性やせ症の患者さんの体重が増えて診断が神経性過食症に変わること、あるいはその逆のパターンもしばしば認められます。

ミネラルバランスの乱れ、月経不順、動悸、倦怠感、腹痛、便秘など、多くの体の合併症を引き起こします。男性よりも女性に多く、発症の平均年齢は18歳頃です。過食や代償行動には大きな苦痛を伴い、抑うつや自尊心の低下を招きやすいです。患者さんは恥ずかしさから人目を避けて過食や代償行動を行うことが多いです。外見からは体型の異常も目立ちにくいことから周囲の人からも異常に気付かれず、受診に至らないケースも多いと推定されています。治療法としては認知行動療法の有効性が認められています。薬物療法に関して日本で使用できる薬剤はありません。

4.むちゃ食い症

繰り返される過食(むちゃ食い)を特徴としますが、神経性やせ症や神経性過食症ほど体重や体型へのとらわれが強くありません。そのため、嘔吐など不適切な代償行動を伴いません。代償行動がないため、むちゃ食い症の患者さんでは高度の肥満になることがあります。男性よりも女性に多く見られ、発症年齢は平均23歳頃です。神経性過食症と似ている点が多く、精神疾患に加えて2型糖尿病を併発していることも多いです。神経性過食症と同様に認知行動療法などの精神療法が推奨されています。

むちゃ食い症

家庭や学校にできること

子どもたちは家庭や学校で食事を摂取する機会が多く、特に学校では定期的に身体測定が行われます。さらには家族や友人との関係、学業成績、運動、課外活動への取り組み方など社会的な状況に関しても重要な情報が得られやすい環境にあります。そのため、摂食症の早期発見のためのゲートキーパー(門番)になりうる存在と言えます。「学校と医療のより良い連携のための対応指針」では学校において早期発見から受診までの対応が示されています 8)
また、摂食障害ポータルサイトでは、一般の方と専門職の方に向けて摂食症に関する情報が公開されており、前述の対応指針もこのウェブサイトから閲覧・ダウンロードが可能になっています 9)

実際に食事量や体重が減るなど摂食症の疑われるお子さんが確認された場合、家庭や学校ではどのような対応が望まれるのでしょう。まずは対象のお子さん本人に認められた変化の理由について尋ねてみましょう。この時点では食事や体型に関する悩みが語られない、または本人は問題ととらえていない場合もあります。そのような場合でも、家族等の支援者は本人を心配していることを冷静に伝えることが重要です。
なお、十分な話し合いのないまま食事をとるよう強要したり、叱責したりすることはかえって本人の反発を招くおそれがあるため控えましょう。

神経性やせ症の診療は精神科、心療内科、小児科などで行われることが多いですが、患者さんの状態によっては受診可能な医療機関はかなり少なくなってしまいます。ときに急速に体重減少が進むこともあるため、早期の医療機関受診が望まれます。
特にやせの程度が強い場合は、初期から入院可能な医療機関への受診を勧められることもしばしばあります。
また、患者さん本人が受診を希望しない場合も考えられます。そのような場合でも、まずは小児科などで消化器や内分泌(ホルモン)系など体重減少につながる体の病気がないか診療を受けることをお勧めします。

なお、身体が危険な状態になるまで通常の血液検査や尿検査では異常は認められにくい傾向があります。そのため、これらの検査で異常がなかったとしても将来の安全が保証されるものではありません。引き続き、適切な栄養摂取、適正な体重への回復が望まれます。受診可能な医療機関が見つからない場合、静岡県内にお住まいの方であれば静岡県摂食障害支援拠点病院(浜松医科大学医学部附属病院精神科神経科)への相談をお勧めします。摂食障害支援拠点病院は厚生労働省の事業で運営されている組織であり、専門的な治療・相談・回復支援に加え、地域の連携体制整備や知識の普及啓発活動を行っています。

おわりに

摂食症、特に神経性やせ症では治療を勧めてもご本人の同意が得られず、支援者の方が対応に悩んでいるケースに多く遭遇します。一方で、発症早期の症状が軽いうちに受診できた場合、病気の説明をすると患者さん自身の意思で食事をとるようになることも珍しくありません。低栄養状態にある期間をできるだけ短くすることは患者さんの安全を確保することにつながり、これにより支援者の方も安心して治療に臨むことができます。摂食症が疑われるケースで対応に悩むような場合は、ぜひとも早期の医療機関への相談をお勧めします。

たのしい食事

引用文献

  1. 日本精神神経学会(監修)『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院,2023,pp.360–385.
  2. 日本小児内分泌学会:成長評価用チャート・体格指数計算ファイル ダウンロードサイト,
    https://jspe.umin.jp/medical/chart_dl.html(2025年12月15日閲覧)
  3. Hoffman ER et al: Reproductive issues in anorexia nervosa. Expert RevObstet Gynecol 6: 403–414, 2011
  4. 厚生労働省難治性疾患克服研究事業「中枢性摂食異常症に関する調査研究班」:『神経性食欲不振症のプライマリケアのためのガイドライン』,2007.
  5. 佐竹絵里奈ほか:「中枢性無月経の診断と排卵誘発方法」,『産婦人科の実際』第70巻: 1133-1136, 2021 
  6. 小坂浩隆ほか:自閉スペクトラム症を併存する摂食障害(摂食症)、精神医学 65巻:1271-1277、2023
  7. 摂食障害に対する標準的な治療方法、心理的アプローチと身体的アプローチとその研修の開発及び普及に資する研究(研究代表者:中里道子):『はじめてのFBT実践ガイド』,
    https://edcenter.ncnp.go.jp/edportal_pro/pdf/manual_fbt.pdf(2025年12月15日閲覧)
  8. 学校と医療のより良い連携のための対応指針
    https://edcenter.ncnp.go.jp/edportal_pro/material.html (2025年12月15 日閲覧) 
  9. 摂食障害情報ポータルサイト
    (一般の方)https://edcenter.ncnp.go.jp/edportal_general/ (2025年12月15日閲覧)
    (専門職の方)https://edcenter.ncnp.go.jp/edportal_pro/ (2025年12月15日閲覧)

エールこころのクリニック 栗田大輔 
出典:浜松成育医療学講座通信 第14号(2026.2)

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