子連れでおでかけ

子育てのヒント

特集記事

お気に入り

こどものけいれん

banner (780 × 195 px).png

はじめに

乳幼児期〜学童期の子どもは“けいれん(ひきつけ)”を起こす頻度が多い時期です。そのため家庭のみならず園・学校でも“けいれん(ひきつけ)”に遭遇する機会は比較的多いと思われます。そして初めて“けいれん(ひきつけ)”に遭遇すると多くの方は驚き、戸惑い、慌てることになります。
今回は、こどものけいれんについて、その原因から対処方法まで簡単にお伝えしたいと思います。

1 けいれんとは?

まず“けいれん”の定義ですが、“発作性かつ不随意に起こる持続性あるいは断続性に筋収縮が生じる現象”と定義されます。簡単に表現すると“突然発生する、本人の意思と関係なく連続あるいは繰り返す筋肉のこわばり(運動症状)”ということです。
その多くは何らかの原因で頭(脳)の電気的活動が乱れることによって起こります。
その原因について、次の項で触れたいと思います。

2 けいれんの原因と対応 1)

けいれんを引き起こす原因は図1に示すように様々で、年齢によって変わってくるものもあります。表1と図2に年代別(乳児期・幼児期・学童期)のけいれんの原因を記載します。
聞いたことがある原因もあれば、初めて聞く原因もあるかとは思います。この通信の読者は、園・学校年代の保護者や園・学校関係者の方が多いので、ここでは幼児期から学童期にかけて比較的頻度の高いものについて簡単に解説します。

図1

図1けいれんを引き起こす原因

表1
  比較的多い 比較的少ない
乳児期・幼児期

熱性けいれん

てんかん
中枢神経感染症 先天代謝異常症
胃腸炎に伴う良性乳児けいれん 先天性脳奇形
低血糖、電解質異常 脳腫瘍・脳変性疾患
学童期 てんかん 脳腫瘍・脳変性疾患
中枢神経感染症 薬物中毒
頭部外傷 先天代謝異常症

図2

図2 年代別けいれんの原因

 

【1】熱性けいれん 2),3)

乳児期から幼児期(生後6か月〜生後60か月)の年代に多く、通常は38℃以上の発熱に伴いけいれんを起こします。髄膜炎や脳炎・脳症などの中枢神経感染症ではないこと、てんかんの既往がないことが定義となります。
日本人の3〜9%(10〜20人に1人)が熱性けいれんの既往があるとされています。そのうち約6割は生涯に1回のみのけいれんとされています。
けいれんの多くは全身の強直性けいれん(手足に力が入るけいれん)で5分以内に収まります。しかし一部(25〜30%)の方は

  1. 部分発作(身体の一部分だけのけいれん)
  2. 15分以上持続するけいれん
  3. 24時間以内に反復するけいれん

のいずれかに該当し、複雑型熱性けいれんと呼ばれます。
複雑型熱性けいれんは後のてんかん発症関連因子の一つに挙げられていて、1〜3の全てが当てはまる場合は、てんかんを発症する確率は50%とされています。
また一般的に熱性けいれんがあった子どもでてんかんを発症する確率は1%とされていますが、(1)発達・神経学的異常、(2)てんかんの家族歴、(3)複雑型熱性けいれん、のうち1つが当てはまる場合2%、2つ以上当てはまる場合10%と高くなります。(4)短時間の発熱・発作間隔(発熱してからけいれん発作が出現するまで 1 時間以内)、(5)3 歳以上での熱性けいれん発症、ではてんかんを発症する確率は 2〜3 倍上昇(つまり 2〜3%)するとされています。
しかし熱性けいれんを繰り返す場合でもほとんどの方は5歳あるいは6歳頃までにけいれん発作は起こさなくなり、90%以上の方はてんかん発作には移行しません。
けいれん発作時の対応は、他の原因でも同様で、下記のようになります。

  1. 人を呼ぶ(誰かそばにいるとき)
  2. 安楽な姿勢にする(一般的には平らなところに寝かせて体を左右どちらかの横向きにする)
  3. 記録する(可能ならスマートフォン等で動画撮影できるとけいれん発作の様子、時間、顔色などが医療者と共有できます)
  4. 5分以上のけいれん・意識障害が持続する場合・顔色が悪い場合は救急車を呼ぶ

熱性けいれんがあったお子さんは、発熱したらけいれん止めの座薬(ダイアップ)を入れましょうと指導される場合があります。ふらつきや眠ってしまうなどの副作用があり、必ずしも全ての方に必要な処置ではありませんが、けいれん発作の頻度を下げる報告もあり、使用にあたっては主治医の先生の指導に従ってください。

【2】憤怒けいれん(泣き入りひきつけ)4)

生後6か月〜3歳くらいまでの子どもの4〜5%くらいに認めるとされ、大泣きした後に呼気(息をはいた)状態のまま呼吸停止し、顔色不良、意識喪失、全身の脱力(ぐったりする)、けいれんなどを起こす状態です。
強く泣くことで無呼吸となり、一過性に脳が酸素不足となり、けいれんなどを引き起こしますが、通常はすぐに呼吸が再開するので後遺症は残しません。慌てないで呼吸が再開するのを待ちましょう。
予後も良好で通常4〜5歳頃には憤怒けいれん(泣き入りひきつけ)は起こさなくなります。
治療は通常不要ですが、鉄欠乏性貧血が悪化要因とされており、鉄剤を内服する場合もあります。

【3】てんかん 5), 6), 7)

てんかんとは、脳の神経細胞が過剰な放電(興奮)を起こして“てんかん発作”を引き起こす状態とされています。ここでいう“てんかん発作”とは、必ずしも“けいれん(運動症状)”という形を取らない場合があり、一瞬意識を失うだけだけのものや吐き気やめまい、頭痛だけの場合もあります。

さらに2014年に国際抗てんかん連盟は、

  1. 24時間以上の間隔で2回以上の非誘発性(または反射性)発作がある場合
  2. 1回の非誘発性(または反射性)発作であってもその後10年間にわたる2回目の発作再発率が一般的な再発リスク(60%以上)と同程度である場合
  3. 「てんかん症候群」の特徴を備えている場合

をてんかんと定義しました。

言葉が難しいので簡単にすると

  1. 2 回以上の発作がある場合
  2. 1回目の発作であっても今後10年間で2回目が起こる確率が高い場合
  3. 特定のてんかん症候群(ウエスト症候群など)

に当てはまる場合、をてんかんと定義しています。

てんかんは、日本人の100人に1人(1%)が罹患するとされ、乳幼児期から学童期に発症が多く、また高齢者でも脳卒中後などで発症が増加してい
ます。

先に説明しましたが“てんかん発作=けいれん発作(運動症状)”ではなく“てんかん発作”は運動症状を伴わない場合もあります。
てんかん発作は“全般発作(全身けいれん)”と“部分発作(焦点発作=身体の一部分だけのけいれん)”の大きく 2 つに分類されます。さらに部分発作(焦点発作)は意識障害のない焦点発作(焦点意識保持発作・単純部分発作)・意識障害のある焦点発作(焦点意識減損発作・複雑部分発作)に分類されます(図3)。
その中でもすぐに対応が必要なものは“全般発作”になります。また“部分発作”でも全身に広がっていった場合(二次性全般化)や意識を失ったままの場合(複雑部分発作)は対応が必要となります。

図3

図3てんかん発作の分類

発作時の対応は、他の原因と同様です。

  1. 人を呼ぶ(誰かそばにいるとき)
  2. 安楽な姿勢にする(一般的には平らなところに寝かせて体を左右どちらかの横向きにする)
  3. 記録する(可能ならスマホ等で動画撮影できるとけいれん発作の様子、時間、顔色などもわかりやすくなります)
  4. 5分以上のけいれんや意識障害が持続する場合や顔色が悪い場合は救急を呼ぶ

また主治医の先生の指示がある場合は、その指示に従ってください。

治療として(1)抗てんかん薬内服、(2)脳外科的治療、(3)その他(食事療法やステロイド療法など)があります。
治療することで70〜80%のお子さんは発作が抑制され、そのうち約7割の方は将来的に治療をやめることができ完全に治癒します。一方で2〜3割の方は一生涯治療を続けることになります。

てんかん発作の悪化要因には生活習慣や体調も大きく影響しています。睡眠不足や感冒・発熱などが誘因となることが多く、規則正しい生活や感冒時の療養も大切になってきます。

てんかん発作を何度か経験しているお子さんでは、前兆(頭痛や吐き気、動悸など)を感じる方もおられます。前兆を感じた時には安全な場所に座ったり、横たわったりなどして、倒れて頭をぶつけないように頭の位置を低くしてもらうようお伝えしています。
また普段からなるべく道路ぎわ、線路ぎわ、階段ぎわなどの“際(きわ)に立たないように”指導したり、起きている時に発作が出る方の場合は入浴する時もなるべく誰かに伝えてから入浴するように指導したりしています。

プールや運動の制限について

園や学校で比較的問題となる内容と思います。てんかん発作はてんかん症候群のタイプにより異なりますが、夜間(入眠中)だけ発作が出るタイプのほか、日中や運動時にも発作が出るタイプもあります。しっかり治療でコントロールされている場合や夜間しか発作が出ない場合は、基本的にはプールや運動の制限はしなくて良いとされています。
ただしプールに関しては一人での遊泳は危険ですので、必ず誰かが監視できる体制で行い、緊急時対応(浮き輪の用意や引き上げ方法、連絡方法など)をお子さん本人やご家族と決めておいてください。日中や運動時にも発作が出る可能性がある場合は、お子さん本人やご家族、そして主治医の先生と相談の上、生活指導表等を作成して運動の可否を決めていきましょう。
修学旅行では内服方法や入浴方法(シャワー浴のみにする等)、食事内容(薬の種類によってはグレープフルーツなどで血中濃度が上がるものもありま
す)について事前に相談しておきましょう。

おわりに

今回は書面の制限で記載できませんでしたが、園や学校で遭遇しやすいけいれんの原因として、他にも熱中症や脱水症などの循環性や代謝性の要因も挙げられます。また学童期後半から思春期になると心因性の場合も認めるようになり、鑑別が難しくなることがあります。
いずれにせよお子さん自身の SOS であることには違いありませんので、基本的な対処方法は同じです。

繰り返しになりますが、

  1. 人を呼ぶ(誰かそばにいるとき)
  2. 安楽な姿勢にする(一般的には平らなところに寝かせて体を左右どちらかの横向きにする)
  3. (可能ならスマートフォン等で動画撮影できるとけいれん発作の様子、時間、顔色などが医療者と共有できます)
  4. 5分以上のけいれん・意識障害が持続する場合・顔色が悪い場合は救急車を呼ぶ

です。
また主治医の先生の指示がある場合は、その指示に従ってください。

参考文献

  1. 菊池健二郎:子どものけいれん. レジデントノート, 23, 2541-2548, 2022
  2. 夏目淳:熱性けいれん. 小児内科, 54, 410-413, 2022
  3. 熱性けいれん診療ガイドライン策定委員会(編): 熱性けいれん診療ガイドライン2023, 診断と治療者, 2023
  4. 日本小児神経学会広報交流委員会 QA 部会 2022(編): 小児神経 Q&A,Q6, Q7,
    日本小児神経学会ホームページ(最終アクセス 2023年09月18日)
  5.  Fisher RS, et al.: ILAE official report: a practical clinical definition ofepilepsy. Epilepsia. 55:475-82, 2014.
  6.  角春賢:てんかんの持病がある児童への学校医の対応. 月刊地域医学, 36,37-41, 2022
  7. Anderson VE, Hauser WA, Rich SS: Adv Neurol 44, 59-75, 1986.

浜松市発達医療総合福祉センター 友愛のさと診療所
遠藤雄策
出典:浜松成育医療学講座通信 第7号(2023.10)

カテゴリー

このカテゴリの記事

子育てのヒント
を検索

このページの先頭へ