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ゲーム症(ゲーム障害)

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1.はじめに

現代ではゲームは大変身近な存在であり、ゲームを通じてコミュニケーションがなされることも多いようです。その反面、ゲームに関する悩みを持つ方は少なくありません。

実際に小児科の日常診療では、
「宿題をする前にゲームをしてしまい、決めた時間内でやめられず、宿題や入浴の時間が遅くなってしまいます。」
「家ではほとんど1日中ゲームをしています。他のことはあまりしません。」
「夜中の2時をすぎてもゲームをしていて、朝起きられません。」
「ゲームをやめさせようとすると、物を投げたりしてあばれてしまいます。」
「ゲームを長時間してしまい、成績が下がっているようで、高校受験が心配です。」
「親が知らない間に、すごい額の課金をしていました。」
など、ゲームに関する悩みが訴えられます。

やらなければいけないことがあるけれど、ゲームを続けたいという衝動を抑えられないという状況がしばしばあるようです。

2.ゲーム症とは

  • ゲームに関するコントロールができない (例えば、ゲームをする時間や頻度などをコントロールできない)。
  • 他の関心ごとや日常活動よりゲームをすることを選ぶほどゲームを著しく優先する。
  • 様々な問題(対人関係の問題、仕事または学業上の問題、健康問題)が起きているが、それにもかかわらずにゲームを続けたり、さらにゲームにのめりこむ。
  • 家族、社会、教育、職業などにおいて機能障害(重大な支障)を引き起こしている。

このような状態が12か月以上続く場合に 「ゲーム症 (ゲーム障害)」と診断されます。

3.ゲーム症でみられること

ゲーム症は、ゲームをする時間を減らそうと思っても減らせないなど、ゲームに依存したコントロール障害で、様々な悪影響や症状がみられます。

学業・仕事・金銭面では、遅刻、欠席、不登校、留年、学業成績低下、失職などがあり、浪費(課金など)や詐欺にあうこともあります。

精神面では、うつ、不安、イライラ、ひきこもり、暴言、暴力。

身体面では肥満、やせ、運動不足、昼夜逆転がおこることがあります。

人間関係では、家族との不和、孤立傾向などがあり、子育てをしている世代では、養育困難、育児放棄などがみられることがあります。

4.依存症の脳の状態は?

ゲーム症をゲーム依存ということもあります。依存症にはギャンブル依存症や薬物依存症なども含まれます。依存症は、高揚するようなギャンブルなどの行動を繰り返し行った結果、さらに刺激を求める欲求が高まり、コントロールできなくなった状態ととらえることができます。
依存している行動や物を渇望する、コントロールができない、耐性、禁断症状、最優先する、支障があっても続けるなどの依存症に共通する症状があります。

依存症は病気のひとつですので、「意志が弱い」といった問題ではありません。脳に刺激を与える行動を繰り返すことによって、脳の働きが変化してしまうのです。ギャンブルなどを繰り返すことにより、脳の「報酬系」神経回路が活発になり、ドパミンが分泌され快感がえられます。一方、ドパミンは、依存性を抑制し、理性をつかさどる前頭前野の機能を低下させてしまいますので、依存をやめることが困難になります。

5.ゲーム症になる要因は?

ゲーム症の発症には、いくつかの複合的な要因がかかわっています。

ゲームを繰り返し行い、快感を得ることで、脳の「報酬系」神経回路を刺激し続けることがゲーム症発症のメカニズムでありますので、低年齢からの高頻度にゲームをすることは、ゲーム症を発症する 1 つの要因になります。

対人関係の問題、学業や社会性、家族からのサポートの不足、抑うつ、不安なども発症リスクの一因です。衝動性などの発達障害の特性が関連する場合もあります。

ゲームをすればレベルが上がったり、オンラインで即時の反応が得られたり、ゲームをしている環境が居心地のよい居場所になったりと、ユーザーが離れないようにプログラムされているゲームの特徴も要因になっています。

6. ゲーム症の予防はできる?

ゲーム症の発症を防ぐために、何かできることはあるでしょうか。

早くからの長時間のゲームの利用が、ゲーム症発症のリスクであることがわかっていますので、ゲームを与える時期を遅くすることが勧められます。

ゲームの使用時間は短く設定し、ゲームをしない時間をつくることも有効とされています。身体を動かす時間をつくることも大切です。

ゲームをする上でのルールをあらかじめ親子で共有しておくことは大切です。

ゲームをしてよい時間、場所、課金などについてあらかじめルール作りをしましょう。「もっとやりたい気持ちになる」というゲームの特性を理解して、こどもの脳を守るルール作りが大切です。

心理的な要因をきっかけにゲームにのめりこむ場合がありますので、心理的なサポートも重要です。

7.ゲーム症の治療は?

認知行動療法をはじめ、様々な治療が行われています。

詳しくは次稿 山村先生の「ゲーム症(Gaming Disorder)と天竜病院における入院治療」をご一読ください。

浜松医科大学 浜松成育医療学
福田冬季子

ゲーム症(Gaming Disorder)と天竜病院における入院治療

1.ゲーム症(Gaming Disorder)とは

今やゲームとインターネットは、子ども達の日常生活の一部となっていますが、過剰なゲームやネット利用は、精神的身体的問題を引き起こすことが分かるようになってきました。
2019年5月25日に世界保健機構(WHO)は、ゲーム症を嗜癖行動症として,ICD-11(国際疾病分類第11回改訂版)に載せることを承認しました。同日より主要メディアは、いわゆるゲーム依存症が国際的に病気と認定されたと大きく報道することになりました。

ゲーム症はゲームのコントロール困難、他の活動よりゲームを優先させること、否定的な結果が生じていてもゲームを継続あるいはエスカレートさせることによって特徴付けられる行動パターンを有する疾患です。
現在、多くの家族が子どものゲーム行動について助けを求めています。しかし、どのような治療がゲーム症へ効果があるか、ほとんど分かっていません。

ただ、原因か結果なのかはっきりしませんが、不登校でゲーム・ネット依存となり、昼夜逆転してさらに登校しづらくなるという悪循環におちいっている子ども達が多いことをふまえると、現状では不登校への治療方法をゲーム症に応用すべきであろうと筆者や多くの児童精神科医が考えているところです。

2.天竜病院子どものこころのケアセンターについて

そこで長年にわたって不登校臨床にたずさわってきた、当院の説明からさせていただきます。2022年4月から、天竜病院児童精神科は子どものこころのケアセンターとなり、さらに発達とトラウマに特化した治療を全国に先駆けて展開していくことになりました。

天竜病院子どものこころのケアセンターは浜松市の北部に位置し、豊かな自然環境を背景に子どものこころ・精神科専門の入院治療を行っています。入院環境としては,静岡県西部で唯一の国内でもまれな児童精神科専門病棟を持ち、医師・看護師・認定心理士・精神保健福祉士・作業療法士ら多職種のスタッフが共に連携して日々の診療にあたっています。隣接する静岡県立天竜特別支援学校(病弱特別支援学校)とも、緊密な連携関係を保ち、ども達の入院中の学習保障を行ってもらっています。
また、浜松市友愛のさと診療所・子どものこころの診療所、その他の児童精神科クリニック・診療所・病院,学校・教育関係機関、児童相談所・福祉行政機関などの医療・教育・福祉および保健などの各機関と連携を取って、子ども達の治療を担っています。治療にあたっては、恵まれた自然環境を活かした森林療法やドッグセラピーなども取り入れて、実施しています。

(1)外来治療

まずは外来治療について説明致します。当科では入院治療に特化しており、現在、外来治療の初診を受け付けていません。したがって、浜松市友愛のさと診療所・子どものこころの診療所、その他の児童精神科クリニック・診療所・病院等を受診して外来治療を開始していただき、外来治療で軽快しなかった場合、入院治療目的にて紹介をしていただき、当科での初診を経て入院が必要と判断された場合、入院治療を行うことになります。そのため、外来通院医療機関があり、その機関からの紹介状が必要で、退院後は紹介元の医療機関へ逆紹介のうえ、外来治療は同医療機関で再開・継続していただくことになります。なお、入院の対象となるのは小学生から中学生までとなります。

(2)入院治療

次に、入院治療について説明致します。家庭や学校での問題行動があり、不登校となって入院治療が必要になる子ども達が多いというのが現状です。入院期間はおよそ3~4ヶ月:1学期間程度が目安で、その間に病棟での日課遂行による行動(生活)訓練、週末は外泊にて家での行動(生活)訓練を行います。
もちろんゲームも禁止するわけではなく、ルールに従って適切な使用できるように訓練を行います。病棟だけでなく、外泊時に家でも出来るようになることが目標になることは言うまでもありません。
また、入院期間中だけ、静岡県立天竜特別支援学校へ入院とほぼ同時に転校して、登校訓練を行います。学習の受け方としては学校へ通学して学習を行う場合と、教師が病棟まで来てくれて学習を行う訪問学習とがあります。それで、日常生活と登校状況が安定してきたら、病院が中心となり,学校カンファレンスを行います。
学校カンファレンスには、天竜病院の医師、看護師、心理士や作業療法士、元の学校の担任やコーディネーター、天竜特別支援学校の担任の先生など、場合によっては教育委員会や関係機関が参加します。その会議で決めた条件に沿って、1-2週間程度の外泊で、家から自分達の学校へ登校する、退院復帰前支援登校を行い、それが問題なく出来ることを確認して退院となります。退院後は自分の学校へ転校して自宅から登校し、外来も逆紹介で元の医療機関へ通院することになります。

このような入院において、当科の特色として以下のような治療が行われます。

  • 発達特性を持った、いじめやトラウマ体験によって更に重症化した子ども達の積極的治療
  • 極少量処方(多種多量でなく、ごくわずかなお薬の治療)と漢方薬による治療
  • 日課遂行による行動訓練、登校訓練、行動療法、社会技能訓練
  • 心理評価(知能検査や学習習熟度評価、トラウマの影響評価)と心理療法(トラウマ処理)
  • 作業療法(森林療法、スポーツ、創作活動:アイロンビーズや絵手紙作製など)
  • 学習保障(静岡県立天竜特別支援学校通学、訪問学習)
  • 親子併行治療(子どものために必要があれば入院中に限って保護者の治療も)、ペアレントトレーニング(子育てのコツや子どもの対応法などについての保護者へのグループ心理教育)
  • アニマル(ドッグ)セラピー

主に治療の対象となる子どものこころの問題としては以下の通りです。

  • 学校に行けない,教室に入れない。
  • 友達とうまく関われない。
  • 自分の気持ちや困りごとを上手く表現出来ない。
  • 落ち着きがなく不注意である。
  • イライラがひどく,すぐ怒ってしまい,手が出たり,物にあたったりする。
  • 不安や緊張がとても強い。
  • 元気がなく落ち込んでいる。
  • 嫌な出来事を思い出してつらい。

加えて、入院環境についてですが、病棟は医療法上精神病床に該当し、全50床。
また、パーク(全開放)とフォレスト(個別開放)の2つのエリアに分かれています。入院中のお子さんは小学生と中学生で、ご家族のつきそいは出来ません。

(3)ゲーム症・ネット依存の短期入院治療

当科では、上記の様な治療を行ってきたわけですが、昨年度の夏休みから、1週間程度のグループによるゲーム症・ネット依存の短期入院治療を開始しました。長期間の入院に踏み切れない子どもや保護者の方達が治療のきっかけになるような選択肢として用意させて頂いています。
1週間という短期間ではありますが、心理評価、ルールやスケジュールに沿ったゲーム使用訓練、ゲームやゲーム以外の余暇探しなどに関するグループ学習や心理教育を行い、必要があれば長期の入院につなげていくことも視野に入れて展開しています。

もし、興味がおありでしたら、当院の相談窓口へお問い合わせください。

国立病院機構天竜病院 子どものこころのケアセンター
山村淳一

 

 

出典:浜松成育医療学講座通信 第6号(2023.6)

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