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子どもの見る力を育てよう(3)~お子さんの「見て学ぶ力」を理解しよう~
今回は、認知処理過程のなかの「認知処理機能」を説明します。
子育て中のお母さんなら、お子さんが初めて見るものにじっと見入っている姿を何度も見たことがあるでしょう。赤ちゃんが手をじっと見つめたり、幼児が絵本の絵を指差して「これなぁに?」と聞いたり。実は、ここには脳の中で驚くほど複雑で精密な情報処理が行われています。
「見る」から「分かる」までの道のり
「見て、考えて、行動する」ためには、まず最初に、目に映った光の情報が電気信号に変わって脳に送られること、そのために必要な機能について、子どもの見る力を育てよう(2)でお話しいたしました。この信号は脳の後ろ側にある「後頭葉」という場所に届き、ここで基本的な情報整理が始まります。
そして、「動いている何かがある」「その色は青っぽい」「だんだん近づいてくる」といった、理解をしたり、情報を分析したりする機能について、今回はお話しさせていただきます。
脳の中の「二つのルート」
脳は効率よく情報を処理するために、二つの専門ルートに分けて作業を進めます。
- 「位置・動きチーム」(背側経路)
走ってくる子がどこにいて、どのくらいの速さで、どちらの方向に向かっているのかを瞬時に計算します。「このままだとぶつかりそう!」という判断をするのはこのチームの仕事です。
例えば、 右手と左手を正しく使い分けられる。 迷路で正しい道を見つけられる、など。
- 「形・意味チーム」(腹側経路)
走ってくる「それ」が何なのかを判別します。動物なのか、人なのか、そして「自分と同じくらいの子ども」だと認識するのもこのチームが担当しています。
お子さんが滑り台の前で一瞬立ち止まったのは、この二つのチームが「走ってくるのは同年代の子で、このまま滑ると危ないかも」という情報を統合した結果なのです。
例えば、ひらがなの「あ」と「お」の違いを見分ける。パズルのピースがどこにはまるか分かる、など。
最終的な「判断」はどこで?
そして、これらの情報は脳の司令塔である「前頭葉」に集められます。前頭葉は、お子さんの過去の経験や感情と照らし合わせて最終判断を下します。
以前に滑り台で他の子とぶつかりそうになって怖い思いをしたことがあれば、「今回は待とう」と判断するかもしれません。逆に、活発な性格で新しい友達と遊ぶのが大好きなお子さんなら、「一緒に遊べるかも!」と近づいていくかもしれません。
子育てに活かせるポイント
この認知処理の流れを理解すると、お子さんとの関わり方にも新しい視点が生まれます。
- 時間をかけて見せてあげる
お子さんが新しいものをじっと見ているときは、脳がフル回転で情報処理をしている証拠です。「早くしなさい」と急かさず、十分に観察する時間を与えてあげましょう。
- 言葉で説明を加える
「あ、赤い車が通ったね」「大きな犬がしっぽを振ってるね」と実況してあげることで、お子さんの「形・意味チーム」の働きを助けることができます。
- 危険な状況での声かけ
道路で車が来ているときなど、お子さんの「位置・動きチーム」がまだ未熟な場合は、大人が代わりに「車が近づいてきてるから止まろうね」と声をかけてサポートしてあげることが大切です。
- 多様な経験の積み重ね
お子さんの前頭葉での判断力を育てるには、さまざまな経験が必要です。安全な環境で多くのことを見て、触れて、感じる機会を作ってあげましょう。
「見る」という何気ない行為の裏で、お子さんの脳はこんなに一生懸命働いているのです。今日からお子さんの「見つめる表情」を見るとき、その小さな頭の中で起きている素晴らしい情報処理の世界を思い浮かべてみてください。きっと、いつもの子育てがもっと愛おしく感じられるはずです。