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みるなのくら
山で薪をとって暮らしをたてていた貧しい若者が、あるとき、うぐいすの声にさそわれて山の奥へ迷い込みます。日が暮れてようやくたどりついたお屋敷は美しいあねさまのひとり住いで、若者は思いがけずごちそうでもてなされます。次の日、あねさまは、「このうちには、くらが十二あります。一のくらから十一のくらまでは、のぞいてみてもかまいません。けれども、さいごの十二のくらだけはけっしてみないでくださいね」と言い置いて出かけます。
若者は一から十一のくらはもちろん、昔話のお約束通り、十二のくらもあけてしまいます。すると、中はがらんどうで、うぐいすが一羽、悲しげに「あなたはとうとう、みてしまったんですね」と言って飛び去り、そのとたん、家もくらもみんな消えた、というお話です。
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昔話はもともと、語り伝えられてきたので、絵本よりも、目で読むよりも、耳から聞くのが良いと言われ、私もおおむねそのとおりと思っていますが、いくつか例外があります。この「みるなのくら」もその例外の一つ、絵本でこそ子どもたちに伝えたいお話です。
若者がくらを順にあけていくと、一のくらはお正月、二のくらは節分の豆まき、三のくらは桃の節句と、それぞれの季節の日本の伝統行事の風景が美しく格調高く描き出されていきます。ああ、私たちの先祖はこんなにも豊かな四季折々の景色のなかで暮らしてきたのか!と感動すら覚えます。昔話の絵本化が成功した、というより、このお話は「絵」なくしてはこれほどの感動は得られないと言ってもいいでしょう。今、日本は生活スタイルの変化に加え、異常気象続きで、この絵本に描かれているような、四季に合わせ、四季を愛でて暮らすことはぐんと減ってしまいました。だからこそ、小さな子だけでなく中学生や大人にも読んでもらいたいと思います。
ところで、禁忌を犯し十二のくらをあけてしまった主人公に、あなたは共感しますか?高学年の聞き手たち、特に男の子たちは、「やっぱな、あけるよ!」「あー、(あけて)よかった!」と、主人公の行動にいたく共感するようなのです。やはり、好奇心は時代を超えて人を動かすのですね!